アウディA6 2.0 TFSIクワトロ(4WD/7AT)
気づかせない 感じさせない 2015.08.22 試乗記 アウディが「A6」シリーズにマイナーチェンジを実施。252psの2リッター直噴ターボとフルタイム4WDを組み合わせた新グレード「2.0 TFSIクワトロ」に試乗し、その実力を試した。いい意味で「印象が薄い」
その前身である「アウディ100」シリーズを含めると47年の歴史を持つ、同ブランドの最長寿モデル――そう紹介をされるA6シリーズに大幅なリファインが施された。
見た目の上では、ライト類のグラフィックや前後バンパーの造形変更、新ボディーカラーの設定やインテリア・デコラティブパネルのラインナップ刷新などが主なニュース。が、実際により大きな注目点となるのは、エンジンバリエーションの変更にあるはずだ。
今回テストドライブしたのは、4WD仕様の新たなベースグレードとして設定された「2.0 TFSIクワトロ」。そこに搭載されるのは、「直噴に、低負荷時の燃料霧化で有利なポート噴射も加えたデュアルインジェクションシステムや、シリンダーヘッドと一体化した排気マニフォールドを採用。さらに、可変バルブタイミング&リフト・システムや電動ウエイストゲート付きターボの採用などで、従来型2.8リッターV6エンジン比で48ps/9.1kgm増しのパワーとトルクを獲得」と紹介される、最新の直列4気筒エンジンだ。
前述のごとく、見た目上のこまごまとしたフェイスリフトのメニューが報告されてはいるものの、そんな変化の具合は恐らく従来型のユーザーでもなければすぐには認識できないはず。そして、それほど格別な新しさは実感できない、という印象は、実際にテストドライブをしてみても同様だった。
別掲の新型「TT」試乗イベントと対のプログラムとして、北海道で開催されたのがこのモデルの試乗会。ただし、こちらはサーキットではなく、その周辺の長い直線や緩いコーナーがメインの一般道が舞台。それゆえ、強いGを試せるような条件には恵まれなかったことも、そうした「印象の薄さ」につながっていたであろうことは否めない。
もっとも、そんな感覚はA6のようなキャラクターの持ち主にとっては、必ずしもネガティブな評価とは当たらないのは当然。デュアルインジェクションが新採用されたとはいえ、エンジンフィール面でその“切り替え”が分かるようなことは一切なく、そんな「特別なメカニズム」を用いていることなどはみじんも意識させられないのだ。
大入力を拾うと、時にフロア振動が目立ちがちで、18インチのシューズが発するパターンノイズが意外に明確、といった少々気になるポイントもあったものの、こうした穏やかな走りのテイストは、上質なセダンが欲しいという人の期待にしっかり応えてくれるはず。
短時間の試乗ゆえチェックはかなわなかったが、これで額面通り「旧『2.8 FSIクワトロ』から15%以上の燃費向上」が果たされていれば文句なし! と、そんな感想を抱かせてくれるリファインが施されたA6だった。
(文=河村康彦/写真=アウディ ジャパン)
【スペック】
全長×全幅×全高=4945×1875×1465mm/ホイールベース=2910mm/車重=1780kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(252ps/5000-6000rpm、37.7kgm/1600-4500rpm)/トランスミッション=7AT/燃費=13.6km/リッター(JC08モード)/価格=680万円
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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