第312回:氷上性能にも燃費にもこだわる!?
ヨコハマの新作「アイスガード ファイブ プラス」を試す
2015.09.26
エディターから一言
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横浜ゴムが、同社の冬用タイヤ史上“最高の氷上性能”を実現したという、スタッドレスタイヤの新製品を発売した。とはいうものの、そのトレッドパターンは従来モデルとまったく同じ。では、性能向上のポイントはどこにあるのか? 北海道にあるテストコース「T*MARY(ティーマリー)」で試してみた。
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同じ名前で中身が違う
最近では“異常気象”なるフレーズがすっかり常態化してしまった感もある日本。それでもつい先日までは灼熱(しゃくねつ)の気候が続いていた、と思ったら、今度はアッという間に長袖が恋しい季節の到来だ。
そんな季節の変化がハッキリとした地域では、ヒトもクルマも準備が大変。というわけで、夏の余韻も冷めやらぬこのタイミングでお届けするのは、間もなくやって来る冬に備えてのスタッドレスタイヤのニュースだ。
ここに紹介するのは、横浜ゴムからローンチされたばかりの乗用車用最新モデル。
「あれ? でも、これまでのモデルとそっくりじゃない」と、トレッドパターンを一瞥(いちべつ)してそう見抜いた人は、この道ではかなりのつわもの(?)であるはず。そう、この最新スタッドレスタイヤのトレッドパターンは、従来品である「アイスガード ファイブ」のそれから変わってはいないのだ。
かくして、「パターンが不変なので、基本のネーミングは継承した」と開発陣が語るのが「アイスガード ファイブ プラス」なる、2015年8月に発売されたばかりの次期シーズン向け最新作。そこに採用された、新たなテクノロジーの肝は、「路面への密着性を高めるとともに、スリップの原因となる水膜吸水率を20%向上させた」とされる、その名も「スーパー吸水ゴム」を称する新たなトレッドコンパウンドだ。
「吸う能力」がポイント
走行時の摩擦熱で路面とタイヤとの間に発生する「ミクロの水膜」が、スリップの原因……とは、最近よく話題とされる「氷上が滑りやすいメカニズム」である。
このタイヤに新採用されたスーパー吸水ゴムは、その薄い水膜の吸水能力を高めた「新マイクロ吸水バルーン」と、吸水効果を補完する従来の吸水ホワイトゲルを30倍に大きくしたという「エボ吸水ホワイトゲル」の採用により、「吸水率を20%向上させた」というのが大きな特徴だ。
そんな高い吸水効果に加え、低温時でも柔軟さを保つ「ブラックポリマーII」と、そもそもゲル状で柔らかいエボ吸水ホワイトゲルとの相乗効果により、氷表面への接触面積を増す密着効果を高めている点もポイント。
さらに、前出の新マイクロ吸水バルーンは、その殻が氷表面をかむことによる、ミクロの凹凸面が氷上に食い込む“エッジ効果”も期待できるという。
実は、そうした数々の特徴を備えるスーパー吸水ゴムは、2013年に北海道地区限定で発売された「アイスガード エボリューションiG01」に先行採用されてきたアイテム。すなわち、2シーズンの実績を経たそんな横浜ゴム最高峰のスタッドレス用コンパウンドが適用されたのが、今回の新タイヤでもあるというわけだ。
妥協できない燃費性能
スタッドレスタイヤに対するユーザーからの要求は、これまで一貫して「ブレーキ性能の高さ」にあるという。中でも、今でも際立って大きいのが「氷上でのブレーキ能力」という声。それゆえ、スタッドレスタイヤの開発目標が、まずはこのポイントに集中するのは当然の事柄であろう。ユーザーは、スタッドレスタイヤの“止まる性能”に対して、まだまだ満足をしていないという証しである。
一方で、それと同時に最近目立って増えているのは、燃費に対する要求でもあるという。
アイスガード5プラスは最新のモデルらしく、そうした点にもフォーカスをしたモデル。新開発の「低発熱ベースゴム」と、当初はミニバン用低燃費タイヤのために開発されたという「たわみ制御プロファイル」の採用が、その具体的な特徴だ。
氷上性能を主につかさどるのは、表面のトレッドコンパウンド。一方で、その下層に配置されるベースゴムには、剛性を保ちつつもエネルギーロスを低減させるアイテムを用いることで、転がり抵抗を抑え、燃費を向上させようというのが、低発熱ベースゴムの発想だ。
加えて、無駄な変形(≒たわみ)を抑制することでそこで発生するエネルギーのロスを抑え、転がり抵抗を減らして燃費向上を図ると共に、スタッドレスタイヤで発生しがちなふらつき挙動も同時に抑制しようというのが、たわみ制御プロファイルの技術。
「スタッドレスだから燃費の低下は仕方がない」というのは、もう許されない時代になっているということだ。
スタッドレスらしからぬ“しっかり感”
スタッドレスタイヤの比較インプレッションが難しいのは、気象条件や同じ路面を走行する車両の影響で、“路面そのものも変化してしまう”こと。本格的なタイヤテストのためには、そんな路面状況を鑑みつつ、基準となるタイヤと随時履き替えを行いながらの比較が不可欠なのだ。
というわけで、今回もあくまで“味見”というレベルで行われたのが、アイスガード5プラスのテストコース内でのチェック走行。さすがに、燃費の向上代を確認するのは不可能だったがその印象は、圧雪から氷盤上のツルツル路面、さらには雪が踏み固められて出来上がった深いわだち路などに至るまで、「テスト車種を問わず、さしたる不安なく走破できる」というのが全般的な感覚だった。
スタッドレスタイヤというと、「フニャフニャと柔らかく、頼りない走り」が連想されるかもしれない。しかし、昨今では意外にノーマルタイヤに遜色ないしっかりしたフィーリングを味わわせてくれるアイテムも少なくない。
どうやらこのタイヤも、そんなフレーズで紹介できそうな一品。そこには、イン側を主に氷上、アウト側を主に雪上やドライ/ウエット路面と割り振り、サイプやグルーブ、そしてブロックなどをそれにふさわしい非対称デザインとした、従来のアイスガード5から踏襲されたトレッドのパターンが功を奏しているようだ。
(文=河村康彦/写真=横浜ゴム)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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