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第132回:箱根のターンパイクを封鎖せよ! アウディの最新電気自動車をワインディングでテストした

2011.11.22 エディターから一言 生方 聡
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第132回:箱根のターンパイクを封鎖せよ!アウディの最新電気自動車をワインディングでテストした

 

アウディジャパンは2011年11月16日、神奈川県小田原市の「TOYO TIRESターンパイク」を貸し切りにして、新しい電気自動車「A1 e-tron」「A3 e-tron」プロトタイプの試乗会を行った。

スポーツカーの聖地!?

独アウディ本社から日本に送り込まれたのは、「A1」と「A3」の「e-tron(イートロン)」モデル。e-tronとは、アウディが手がける電気自動車(EV)のことで、フルタイム4WDを「クワトロ」、ステーションワゴンを「アバント」と呼ぶように、電気自動車にもオリジナルの名前が与えられている。

e-tronには、バッテリーのエネルギーだけで走るピュアEVに加えて、プラグインハイブリッドやレンジエクステンダー付きEV、燃料電池車が含まれる。今回用意されたのは、ピュアEVの「A3 e-tron」とレンジエクステンダー付きEVの「A1 e-tron」。どちらも実証実験などに使われている車両で、ここで培われた技術が将来の量産e-tronに生かされるというわけだ。

写真を見るとわかるように、A1 e-tronもA3 e-tronも、アウディ本社があるドイツ・インゴルシュタットのナンバーが付いている。ということは、そのままでは日本の道が走れない。そういう場合、大抵は大きな駐車場やサーキットを試乗会場に選ぶのだが、なんとアウディは箱根の有料道路「TOYO TIRESターンパイク」を3日間貸し切りにしてしまったのだ。e-tronのスポーティーさを体感してほしかったから……というのが理由らしい。

聞くところによると、イギリスの人気自動車バラエティー番組「Top Gear」でターンパイクが紹介されたのがきっかけで、アウディ本社のスタッフのうち、「スポーツカーの聖地=ターンパイク」というイメージを抱いている人が少なからず存在するというのだ。つまり、“日本のニュルブルクリンク”で自慢のe-tronを試してほしいという計らいである。

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「A1 e-tron」はフロントグリルの「フォーリングス」エンブレムの奥に、充電プラグのソケットを備える。バッテリーの充電は230V電源で約3時間、380Vでは1時間以下までに短縮できるという。
「A1 e-tron」はフロントグリルの「フォーリングス」エンブレムの奥に、充電プラグのソケットを備える。バッテリーの充電は230V電源で約3時間、380Vでは1時間以下までに短縮できるという。 拡大
インテリアの基本デザインは「A1」と同じだが、セレクターレバーはA1用を改良したもの。ドアパネルやセンターコンソールには専用パネルが備わる。
インテリアの基本デザインは「A1」と同じだが、セレクターレバーはA1用を改良したもの。ドアパネルやセンターコンソールには専用パネルが備わる。 拡大
荷室下には、発電用ジェネレーターを作動するための254ccロータリーエンジンが搭載される。
荷室下には、発電用ジェネレーターを作動するための254ccロータリーエンジンが搭載される。 拡大

モーター+ロータリーエンジン

とはいっても、航続距離に限りがある電気自動車だから、1台あたりの試乗時間は15分ほど。それでも、e-tronの初ドライブはとてもエキサイティングだった。

最初にドライブしたのはA1 e-tron。ボンネット下に収まるモーターで走るという意味では電気自動車と変わらないが、バッテリー容量を少なくする代わりに、いざというときのために発電用エンジンを搭載するのがこのクルマの特徴だ。バッテリーで走れる距離はおよそ50kmだが、エンジンを回せば航続距離が200kmほど延びる。ちなみに、「航続距離(Range)」を「延ばす(Extend)」ことから、発電用エンジンと発電機は「レンジエクステンダー」と呼ばれている。

搭載されるエンジンが254ccのシングルローターのロータリーというのは、なんともアウディらしい。かつてアウディが吸収した「NSU」がロータリーエンジン車を販売していたことは皆さんもご存じだろう。コンパクトで、振動が少ないということでロータリーエンジンを選んだというが、ロータリーを復活させたいという思いがどこかにあったのかもしれない。

それはさておき、さっそく走りだすと、1.4リッターの直噴ターボエンジンよりも明らかに力強い加速を見せた。低回転でトルク豊かなモーターは、スピードを上げていってもさほど勢いは衰えず、登り勾配でも100km/hに達する実力だ。街中ならさらに活発に走ってくれるに違いない。

キャビンには、モーターの制御ユニットが発するキーンという音がかすかに漏れ出しているが、エンジンのようなノイズはなく、スピードの上昇とともに高まるのはロードノイズだけ。シフトレバーをDレンジよりもさらに手前に動かすと、ブーンという音とともにレンジエクステンダーが動き出す。荷室のフロア下に搭載されるため、ドライバーの位置ならレンジエクステンダーの音は気にならない。さすがに後席では振動が伝わってくるが、市販の際にはきっちりと遮音対策がなされてくるはずだから、心配は無用だろう。

A1オーナーである筆者が感心したのが、その走りの良さ。バッテリーやレンジエクステンダーの搭載に備えて、それなりにサスペンションが締め上げられているはずなのだが、無理やりバネを硬くした感じがなく、乗り心地は快適で、サスペンションの動きもしなやかだ。しかも、バッテリーがリアアクスル手前に置かれるおかげで、前後重量バランスが改善されたのか、ガソリンエンジンのA1よりも身のこなしはスポーティー。ウチのA1と交換してほしいくらいの出来である。

A1 e-tronではルーフやリアスポイラーなどにカーボンを使用することで軽量化が図られている。
A1 e-tronではルーフやリアスポイラーなどにカーボンを使用することで軽量化が図られている。 拡大
 
第132回:箱根のターンパイクを封鎖せよ! アウディの最新電気自動車をワインディングでテストしたの画像 拡大

ちなみにA1 e-tronは、東京モーターショーで見ることができるので、興味がある方はアウディブースのチェックをお忘れなく!

「A3 e-tron」はスポーティー

A1 e-tron以上によく仕上がっていたのがA3 e-tronだ。バッテリーの電気だけで走るA3 e-tronは、26.5kWh、300kgのリチウムイオンバッテリーをセンタートンネル、リアシート下、荷室下に積み、140kmの航続距離を達成する。「A1 e-tronよりもモッサリしているのかなぁ」と思いきや、ハイパワーなモーターと大容量のバッテリーを武器に、1.5トンのボディーをいとも簡単に加速させる。スピードが乗ってからの加速にも伸びがあり、ターンパイクの登りを物ともしない。

そのうえ、乗り心地、ハンドリングともに、格上の実力を見せつけた。A3スポーツバックのガソリン車より素直なハンドリングも魅力的だ。実験車にもかかわらず、市販モデルと変わらぬクオリティーにも驚かされた。

A1 e-tron、A3 e-tronとも、このままの形で市販されるわけではないというが、現時点での仕上がり具合を見ると、量産モデルの登場がいまから楽しみだ。アウディによれば、2012年に「R8 e-tron」を市場に投入したのち、2014年以降により身近なe-tronを販売するという。日本も重要な市場と位置づけてられており、遅かれ早かれ、日本上陸を果たすに違いない。

もちろん、日本には手ごわいライバルがたくさん存在するが、アウディらしいスポーティーさと、上質なつくりを目のあたりにしたら、きっとe-tronがほしくなるんだろうなぁ。個人的には、レンジエクステンダーとしてロータリーエンジンを積むA1 e-tronが、早い時期に実現することを期待している。

(文=生方聡/写真=菊池貴之)

 
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「A3 e-tron」の充電時間は230Vの家庭用電源の場合9時間で、400Vの三相電源の場合は約4時間でフル充電となり、約140kmの走行が可能という。充電ソケットは「A1-e-tron」とは異なり、市販車の給油口と同じ位置にある。
「A3 e-tron」の充電時間は230Vの家庭用電源の場合9時間で、400Vの三相電源の場合は約4時間でフル充電となり、約140kmの走行が可能という。充電ソケットは「A1-e-tron」とは異なり、市販車の給油口と同じ位置にある。 拡大
「A3 e-tron」に搭載される水冷式電気モーターの出力は走行モードによって異なり、68psから瞬間最高出力で136psまでに達する。
「A3 e-tron」に搭載される水冷式電気モーターの出力は走行モードによって異なり、68psから瞬間最高出力で136psまでに達する。 拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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