レクサスLX570(4WD/8AT)
無敵のおもてなし 2015.11.27 試乗記 レクサスのフラッグシップSUV「LX」の国内販売がスタートした。本格オフローダーゆずりのシャシーや、大排気量エンジンがもたらす走りは? そして乗り心地は? 高速道路から河川敷のオフロードまで、さまざまな道で試乗した。高速では典雅、悪路ではパワフル
今“最も借りるのが困難な広報車”のひとつがこの「レクサスLX570」なのだそうだ。自動車メディアが新しいモデルに注目するのは当たり前だが、ライフスタイル雑誌からの引き合いも多いのだという。レクサスというプレミアムブランドのモデルでありながら、とてつもないオフロード性能を誇るガチのSUV。エッジの立ったキャラクターが、自動車でライフスタイルを主張したい人々を引きつけるのだろう。
エレガントでいかにも高級クロスオーバーという見た目の「RX」とは違い、LXはパッと見、ゴツくてデカい。スピンドルグリルは採用されているものの、取ってつけたようで不自然に見える。レクサスのデザインフィロソフィーであるL-finesseが感じられない。ベースとなっているのは砂漠でも岩場でもへっちゃらな「トヨタ・ランドクルーザー」で、堅牢(けんろう)性と走破力を最優先した形なのだ。
もちろん、レクサスなのだから内外装は豪華な仕上がりだ。ヘッドランプやリアコンビネーションランプはLED化され、“流れるウインカー”こと「LEDシーケンシャルターンシグナルランプ」が採用されている。シート表皮にはセミアニリン本革をおごり、きめ細やかなステッチが施された。インストゥルメントパネルは重厚な金属と艶めいた本木目で構成され、ゴージャス感が漂う。運転席に収まれば、機能的な外観のことは忘れてしまうのだ。
大きなアドバンテージとなるのはパワートレインである。ランドクルーザーの4.6リッターV8エンジンに対し、LXは同じV8でも5.7リッター。最高出力と最大トルクも、318ps/46.9kgmに377ps/54.5kgmと明確な差がある。さらに、トランスミッションはランドクルーザーが6段、LXは8段だ。LXは2.7トンを上回る超重量級だが、大排気量と多段ATのおかげで余裕のある走りができる。加速は力強いし、高速巡航では至って静かだ。
撮影のために、河原に乗り入れた。大きな石が転がっていて普通のクルマはとても入っていけない場所だが、LXはものともしない。副変速機でL4を選択し、車高をハイモードに設定する。クロールコントロールのスイッチを入れれば、アクセルやブレーキの操作をせずに極低速走行ができるのでステアリング操作に集中すればいい。死角の路面状況や車両下の様子はマルチテレインモニターを使って確認し、危ない場所を確認して簡単に避けられる。自動的にトラクションやブレーキを制御してパワフルに悪路を進んでいく姿は、街なかや高速道路での典雅な振る舞いとは別物だ。
並外れたオフロード性能を持つことは感じられたが、さらに厳しい状態の道に踏み込むのははばかられた。これは、レクサスなのだ。高い走破性を持っているのはわかっていても、デコボコ道に持ち込むのはなんとなく後ろめたい。LXで富士山麓のオフロードコースを走るなんて人は、さすがにあまりいないだろう。
LXの価格は1100万円だから、ランドクルーザーのほぼ2倍だ。レクサスで言えば、「GS F」とまったく同じ値段である。高いようではあるが、レクサスならではのおもてなし空間を満喫できて、しかも何かあった時には無敵の走破性を備える。もしかすると、お買い得なのかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=高橋信宏、webCG)
【スペック】
全長×全幅×全高=5065×1980×1910mm/ホイールベース=2850mm/車重=2720kg/駆動方式=4WD/エンジン=5.7リッターV8 DOHC 32バルブ(377ps/5600rpm、54.5kgm/3200rpm)/トランスミッション=8AT/燃費=6.5km/リッター(JC08モード)/価格=1100万円
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。