第333回:あの高音質を多くのクルマに ボーズが小型車向け新シリーズを提案
2016.01.21 エディターから一言 拡大 |
ボーズ・サウンドシステムといえば、車種ごとの専用設計によるファクトリー装着を貫いてきたことで知られる。そのボーズが2016年1月、米ラスベガスのエレクトロニクスショー「CES 2016」に合わせて、新シリーズのデモンストレーションを行った。会場からコラムニストの大矢アキオが報告する。
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人気ブランドの新しいストラテジー
取材にあたり、ボーズの日本広報担当者からきたメールには「創立者のボーズ博士は少年時代にバイオリンをたしなみ、それが生涯にわたる鋭敏な聴覚と音楽への造詣につながりました」という、粋なミニ知識まで書き添えられていた。音大でバイオリン専攻をしていたという筆者の経歴が伝わっていたのだろうか。
それはさておき、取材当日、特設会場までの送迎車として用意されていた「ポルシェ・パナメーラ」は、当然のことながらボーズ・サウンドシステム装着車であった。その音像定位の正確さたるや、オーケストラで主旋律以外を奏でる楽器をたやすく聴音して五線紙に書き取れるくらい、といってよい。
今回ボーズが提示したのは、製品系列を4つのシリーズに分類して自動車メーカーに提案する新ストラテジーである。
まず「プレミアムシリーズ」は、ボーズがカーオーディオ進出以来高評価を得てきた製品づくりを継承するものといえる。「パフォーマンスシリーズ」はラグジュアリーカーを主眼に据えたもので、今回は24個のスピーカーを備えたデモカーでの視聴となった。女性ボーカルのハスキーな歌い出しを限りなく透明感をもって再現するところに、高周波音の再生に対する真摯(しんし)な追求が感じられた。
3つ目の「アドバンスド・テクノロジーシリーズ」はハイエンド車種向けで、このたびキャデラックの新型「CT6」に初採用され、会場のデモカーも、もちろん同車であった。前述のパフォーマンスシリーズが伝統的ピュアハイファイ的音響空間なのに対し、こちらは顔の周りが音で満たされる印象を受ける。聞けば「アメリカ人の、音による包まれ感好き」に呼応したものという。
「欲しい」リストに、ボーズが増える?
そしてボーズが今回最もアピールしたのは、「スモール・ヴィークル」と称するシリーズで、A/Bセグメントに提案するものだ。ヘッドレスト内蔵スピーカーを装着したデモカーは、全6スピーカーでありながら上級モデルに迫るダイナミックなサウンドを聴かせてくれた。
ボーズは常に車両開発の初期段階から参画してきたという。「自動車メーカーとボーズの目指す音作りが一致すると良い結果に向かう」とスタッフは明かす。オーケストラなら、自動車メーカーは団員、ボーズはさながら客演指揮者といったところであろう。重量、スペース、内装材など自動車特有の問題をクリアしながら4年近くかけて仕上げてゆくシンフォニーだ。
「スモール・ヴィークルシリーズ」は間もなく登場する。ボーズ・サウンドが、より広い車種で楽しめるようになるのは朗報である。
比較に依存するのは文章力の欠如であることを承知で記せば、ボーズの最新製品体験後、イタリアの空港に戻って自分のクルマのオーディオを聴くと、その音は中学時代にはんだ付けで組み立てた鉱石ラジオ並みだった。購入当初からそれなりに満足していたにもかかわらず、である。
ナビゲーションシステムやクルーズコントロールなど、今やクルマ選びでマストにしたい装備は少なくないが、これからはボーズも筆者の「欲しい」リストに加わりそうである。
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、ボーズ・オートモーティブ)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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