ポルシェ911ターボ(4WD/7AT)/911ターボS(4WD/7AT)/911カレラ4(4WD/7AT)/911カレラ4S(4WD/7AT)
最新はやはり最善 2016.02.16 試乗記 「ポルシェ911」シリーズの進化は止まらない。「911カレラ」に端を発したエンジンのターボ化は早速「911カレラ4」に及び、そして「911ターボ」もさらなるパワーと効率を手に入れた。最新の911は果たして最善なのか? 南アフリカで試乗した。超破格値のスーパーカー
フルモデルチェンジを受けてまだ3年もたっていないというのに、早くも新型911ターボが登場した。「タイプ991」に生まれ変わったときには、より長いホイールベースとエアサスペンションを得たことでハンドリングと乗り心地のバランスが格段に向上し、ターボエンジンの扱いやすさも見違えるように改善されたことに驚き、「これ以上、洗練できる余地など残されていないんじゃないの?」と思ったものだが、今回の「タイプ991 II」へのマイナーチェンジでもエンジンやシャシーにきめ細かく改良の手が加わるなど、単なるフェイスリフトとはいいきれないほど大きな進化を遂げている。
例えば最高出力は「911ターボ」が520psから540psへ、「911ターボS」は560psから580psへと、いずれも20psずつパワーアップ。この結果、911ターボの0-100km/h加速は3.0秒、911ターボSは2.9秒と、こちらも0.2秒ずつタイムの短縮が図られた。ちなみに0-100km/h加速で3秒の壁を破るのは至難の業で、最近デビューしたスーパースポーツカーのなかでいえば「ランボルギーニ・アヴェンタドールLP750-4 スーパーヴェローチェ」(2.8秒)、それに「マクラーレン675LT」(2.9秒)くらいしか見当たらない。しかも、価格はどちらも4000万円を大きく超える。それに比べれば、2599万円の911ターボSは「超破格のお買い得スーパーカー」と呼んで間違いないだろう(911ターボの価格は2236万円)。
ただし、見かけ上の安さだけでなく、価格に見合った、いや価格以上のバリューをしっかりと盛り込むところがポルシェの強みであり、魅力でもある。次の項では、新しい911ターボにどんな価値が加わったかを紹介したい。
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ハードウエアで差別化を図る
パワーが20ps上がったことはすでに述べたとおり。ただし、これもECUの設定を変えたり過給圧を上げたりという小手先の手法ではなく、燃料噴射圧を従来の140barから200barに高めるなど、つまりは燃焼そのものを見直して獲得した成果である。だから、パワーアップしただけなく、燃費も7%ほど向上している。
また、ダイナミックブースト機能と呼ばれる一種のアンチラグシステムを導入することで、スロットルペダルをオフした直後に踏み直した際のエンジンレスポンスを改善したことも見どころのひとつだ。
いっぽうで興味深いと思われたのがターボとターボSの差別化を図ったこと。現行型でも両者の間には40psのパワー差があったが、これはどちらかといえばソフトウエアによって生み出されたもので、エンジンまわりのハードウエアはターボもターボSも実質的に同一だった。これに対して一部ユーザーから不満の声が上がったことを受け、新型ではターボSのコンプレッサー径を58mmへと拡大。56mmに据え置かれたターボとスペック上の差をつけたのである。なお、最大過給圧はターボが0.9barから1.0barへ、そしてターボSでは1.0barから1.2barへといずれも引き上げられている。
装備面ではこれまでターボSのみ標準装備だったスポーツクロノがターボにも標準とされたほか、フロントリップの地上高を40mm拡大できるリフトシステムがオプション設定された。細かいところでは、ステアリングホイールを「918スパイダー」と似たデザインに改めるとともに、モード切り替えのロータリースイッチをここに配置したことが挙げられる。また、レーシングカーにおけるオーバーテイクボタンに似た機能のスポーツレスポンススイッチがこのロータリースイッチの中央に設けられた。このスイッチを押すと、エンジンレスポンスが向上するように20秒間だけギアボックスやターボチャージャーの設定が変化する仕組みだ。
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このスタビリティーがあればこそ
今回はこの911ターボSで新装なったキャラミ・サーキットを走るチャンスに恵まれた。1960年代から90年代にかけてF1開幕戦の舞台となっていた南アフリカ・キャラミは、2014年にポルシェ南アフリカの経営者によって買収され、現在は大改装の真っ最中。今回は正式なオープンに先立ってコースの全面改修が終わったことから、試乗ルートの一部に組み込まれることになった。
ドライバーの度胸が試される中高速コーナーが続くキャラミで、911ターボSはその最良の一面を見せた。ストレートでレスポンスのいい痛快な加速を示すのはもちろんのこと、高速コーナーへの進入では自信を持ってステアリングを切り込んでいけるし、低速コーナーへのアプローチで急減速する場合にも不安なくブレーキペダルを踏み込める。どちらも、リアがしっかりグリップしているという安心感があればこそできる話で、その意味ではドライバーを勇気づけてくれるハンドリングだといえる。
なお、今回の先導役は贅沢(ぜいたく)なことにポルシェLMP1ドライバーのマルク・リーブだったが、彼が駆る911ターボはブレーキングでときおり姿勢を乱そうとしていたにもかかわらず(本人は「5~6割のペース」と語ったらしい)、レーシングドライバーにははるかにスキルが及ばない私がどうにか追走していけたのも、このどっしりとしたリアのスタビリティーがあったからに他ならない。
いっぽうで、同行したジャーナリストからは「アンダーステアが気になった」との声も聞かれたが、私にとっては「なるほど、言われてみれば……」と感じる程度のものでしかなかった。いずれにしても、個人的にはささいなアンダーステアよりも中高速コーナーでも安心して攻めていけるリアのスタビリティーのほうがはるかにありがたいものだった。
賢明かつ有効な戦略
その後は南アフリカの公道に舞台を移し、911ターボS、911ターボ、それに新たにターボエンジンを得た「911カレラ4」と「911カレラ4S」の計4台を乗り換えながら試乗を続けた。
まっすぐ伸びた一本道が主体で、ハンドリングはほとんど確認できないルートが続いたが、それだけに、サーキットでは感じにくかったエンジンのキャラクターを子細に観察することができた。
まず、911ターボと911ターボSは従来型よりもさらにレスポンスが鋭くなっていて、パワーがわき出るのを待つ必要が格段に減ったことに感銘を受けた。前述のとおり、タイプ991になったときにも素早いパワーの立ち上がり(さらにいえば国際試乗会のときよりも国内試乗会で試したときのほうが、よりレスポンスは向上していた)に驚かされたものだが、その傾向はタイプ991 IIになってさらに強まり、いまや待たされていると意識されることはほとんどない。ダイナミックブースト機能をはじめとするターボラグ対策が功を奏している証拠と思われる。
けれども、続いてタイプ991 IIの911カレラ4に試乗して、心底度肝を抜かれた。こちらは事実上の“ターボラグゼロ”で、スロットルペダルを踏んだ直後のレスポンスから高速域での伸び感まで、まるで自然吸気エンジンそのまま。実は、カレラ/カレラ4はターボ/ターボSと違って可変ジオメトリータービンは用いられていないのだけれど、それでもターボ/ターボSよりもはるかに素直なレスポンスを示したのである。
そういえば、いくぶんくぐもったエキゾーストノイズのターボ/ターボSに比べると、カレラ4/カレラ4Sは抜けのいいサウンドで、いかにも自然吸気的。このエンジンであれば「ターボだからイヤ」という批判的な声はまず聞かれないだろう。
もっとも、だからターボ/ターボSがダメだという気には毛頭なれない。むしろ、ターボらしさをあえて残すことがポルシェの意図だったのではないか? その意味では、ターボ/ターボSは“ターボらしさ”を、そしてカレラ/カレラ4は“自然吸気らしさ”を前面に押し出したポルシェの戦略は実に賢明かつ有効なような気がする。いずれにせよ、ポルシェの長期的視野に立ったバージョンアップは、今回も大成功を収めたとしかいいようがない。
(文=大谷達也/写真=ポルシェ)
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テスト車のデータ
ポルシェ911ターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4507×1880×1297mm
ホイールベース:2450mm
車重:1595kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:540ps(397kW)/6400rpm
最大トルク:72.4kgm(710Nm)/2250-4000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:9.1リッター/100km(約11.0km/リッター、NEDC複合モード)
価格:2236万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911ターボS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4507×1880×1297mm
ホイールベース:2450mm
車重:1600kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:580ps(427kW)/6750rpm
最大トルク:76.5kgm(750Nm)/2250-4000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:9.1リッター/100km(約11.0km/リッター、NEDC複合モード)
価格:2599万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911カレラ4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4499×1852×1295mm
ホイールベース:2450mm
車重:1500kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:370ps(272kW)/6500rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1700-5000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR19/(後)295/35ZR19
燃費:7.7リッター/100km(約13.0km/リッター、NEDC複合モード)
価格:1437万1000円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911カレラ4S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4499×1852×1298mm
ホイールベース:2450mm
車重:1510kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:420ps(309kW)/6500rpm
最大トルク:51.0kgm(500Nm)/1700-5000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:7.9リッター/100km(約12.7km/リッター、NEDC複合モード)
価格:1712万1000円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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