アウディA4 2.0 TFSI(FF/7AT)
止まらぬ進化 2016.02.19 試乗記 8年ぶりにフルモデルチェンジを受けたアウディの主力モデル「A4」に試乗。外見上はキープコンセプトながらも、新機軸を満載した新型の実力やいかに? 前輪駆動のベーシックグレード「A4 2.0 TFSI」のステアリングを握った。エース登場
アウディの主力モデルが8年ぶりにフルモデルチェンジ! それだけに見どころ満載の新型A4なのだが、エクステリアを遠目に見るかぎりは冒険を避け、手堅くまとまっている印象だ。おかげで、すんなりと新型を受け入れられる反面、よほどアウディに詳しくないとフルモデルチェンジしたことに気づかないかもしれない。
でも、近寄ってよく見ると、先代よりも格段に精悍(せいかん)ですっきりとしたエクステリアに、アウディのエースとしての風格が感じ取れる。なかでも、新しいフロントマスクがいい。アウディの象徴であるシングルフレームグリルに切れ長のヘッドライトという組み合わせはいつもどおりだが、どちらもよりシャープなデザインになり、さらにシングルフレームグリルがワイドさを増したことで、落ち着いた佇(たたず)まいに仕上がっている。
全幅は15mm広がって1840mmになったが、ボンネットをサイドまで回り込む“クラムシェル”タイプとしたことで、サイズ以上にワイド感が強調された印象だ。“マトリクスLEDヘッドライト”が装着された試乗車では、ウインカーが流れるように点滅する“ダイナミックターンインジケーター”仕様になり、昼夜を問わず一発でアウディとわかるのも、オーナーとしては誇らしいところだろう。
それ以上にアウディらしさを意識するのがインテリア。先代とはまるで違う空間が待っていたのだ。
先進を感じる瞬間
ドアハンドルに手をかけると、いつもと勝手が違う。横に引っ張るのではなく、斜め上に引き上げることでドアが開くようになった。おかげでこれまでよりも軽くスムーズにドアを開けることができる。細かいところまで、いろいろ変わっているものだ。
さっそく運転席に座ってみると、センター側の足元がすっきりしていた。実は旧型ではそのあたりに出っ張りがあって少し窮屈だったのだが、新型ではそれが解消され、フットレストも自然に足が乗せられるようになった。これだけでも従来型のオーナーはうらやましく思うに違いない。足元とともに広く感じるのがキャビンの横方向だ。水平基調のデザインを採用するダッシュボードがそう思わせるのだろう。
新型A4の新しさを端的に示すのが“アウディバーチャルコックピット”。「アウディTT」に初搭載されたフルデジタルのメーターパネルだ。前述のマトリクスLEDヘッドライトとセットオプションとして提供されるこのメーター、速度計や回転計がアナログメーターっぽく表示されるだけでなく、中央に地図を表示することや、地図表示のエリアを広げることができるのが特徴だ。もちろん、オーディオや電話の操作、クルマの設定などもここで行えるので慣れてしまえばとても便利。TTと違ってダッシュボードにもモニターが備わるが、ドライバーに限ればメーターパネルだけで事足りてしまう。34万円のセットオプションだが、A4を買うならこれだけは選んでおきたい。
他にも、シフトセレクターのデザインが見直されていたり、エアコンのパネルが格段に操作しやすくなっていたりと、あらゆる部分が新しくなったA4だが、それでいて、違和感やおもちゃっぽさとは無縁で、上質な雰囲気に仕上がっているのはいかにもアウディらしいところだ。
そうなると、気になるのはやはり新しいパワートレインである。
新エンジンの出来栄えは?
今回試乗したA4 2.0 TFSIは、FFの標準仕様。A4のFFには“ミラーサイクル”を採用する新開発の2リッター直列4気筒ターボが搭載され、さらに、従来組み合わされていたマルチトロニック(CVT)に代えて、デュアルクラッチの7段Sトロニックが採用されたことで、この新しいコンビがどんな走りを見せてくれるのかが楽しみだった。
……と同時に、少し不安でもあった。ミラーサイクルというと「エコカーのエンジン」というイメージが強く、実際ハイブリッドシステムとともに使われることが多い。それを単独で使うとなると、非力だったり、扱いにくかったりしないかと。しかし、実際に走りだすと、発進から軽快な動きを見せ、2000rpm以下の常用域でも余裕がある。低回転がスカスカ……なんてことはなく、良い意味で予想を裏切られた。しかも、この2リッターターボ、2000rpmを超えたあたりからさらに力強さを増し、気持ちのいい加速を示すのだ。
別の機会に乗った「2.0 TFSIクワトロ」の2リッターターボに比べると力強さやレスポンスの鋭さはかなわないものの、このFF用でも十分満足のいく性能である。気になったのは、1500rpm前後でやや耳障りなエンジンノイズが聞こえてくることくらいだ。
組み合わされたSトロニックも素早いシフトとダイレクトなレスポンスが好印象。個人的にはマルチトロニックよりも、このSトロニックのほうがしっくりくる。
MLB evoでさらに軽快に
新型A4では、パワートレインだけでなく、プラットフォームが刷新されたことも見逃せないポイントである。従来の「MLB」に対し、新型ではその進化型の「MLB evo」が採用されているのだ。これにともない、サスペンションはリアが5リンクになり、フロントの5リンクも改良を受けたと聞く。
オプションの17インチタイヤを履いた試乗車は多少硬めの乗り心地を示していたが、挙動は落ち着いていてハーシュネスの遮断もまずまず。ハンドリングは実に軽快で、クワトロよりも120kg軽いFFでは軽快さが際立つ印象だ。
特筆すべきは高速走行時の安定感。高いスタビリティーが自慢のアウディだが、旧型のFFはクワトロと乗り比べると心なし少し頼りなく思えたのだが、新型はクワトロに迫るレベルに仕上がっていた。電動パワーステアリングのフィールがより自然になったのもうれしいところだ。
そして、このベースモデルにも、自動ブレーキのアウディプレセンスシティ/プレセンスフロントや、車間距離保持機能を備えたアダプティブクルーズコントロールが標準装着されている。渋滞時に速度調整だけでなく、ステアリング操作をサポートするトラフィックジャムアシストも、一度味わうと手放せなくなる機能だ。
というわけで、あらゆる部分が進化した新型A4。アウディといえばクワトロだが、新型A4はFFの出来の良さを考えると、このベースモデルが案外狙い目ではないだろうか。
(文=生方 聡/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
アウディA4 2.0 TFSI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4735×1840×1430mm
ホイールベース:2825mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190ps(140kW)/4200-6000rpm
最大トルク:32.6kgm(320Nm)/1450-4200rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94Y/(後)225/50R17 94Y(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:18.4km/リッター(JC08モード)
価格:518万円/テスト車=631万5000円
オプション装備:オプションカラー(タンゴレッド・メタリック)(8万5000円)/レザーパッケージ(ミラノレザー+デコラティブパネル<ウォルナットブラウン>+エクステリアミラー<電動調整&格納機能、自動防眩(ぼうげん)機能、メモリー機能、ヒーター>+電動調整機能<フロント>+メモリー機能<ドライバーサイド>)(45万円)/バング&オルフセン3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/アルミホイール 10スポークデザイン 7.5J×17(9万円)/マトリクスLEDヘッドライトパッケージ(マトリクスLEDヘッドライト、LEDリアコンビネーションライト、LEDインテリアライティング、ヘッドライトウォッシャー、バーチャルコックピット)(34万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2968km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:246.4km
使用燃料:24.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/10.7km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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