メルセデス・ベンツGLC250 4MATICスポーツ(本革仕様)(4WD/9AT)
“プラス90万円”の価値はある 2016.03.11 試乗記 新たな“オジサンの星”が登場? メルセデス・ベンツから新型クロスオーバーモデルの「GLC」がデビュー。その走りの実力を試すとともに、Dセグメント不動の人気モデル「Cクラス」とは一味違う、このクルマならではの魅力に触れた。Dセグメントにおけるベンツの新しい選択肢
GLCは中年男子にとって、新しい“目標”になるだろう。
「Cクラス」は、Dセグメントの“テッパン・セダン”。なんだかんだ言っても、やはり上品なインテリアの質感、われら中年の“悲哀”を巧みに癒やす乗り心地、“メルセデス”というステータス性……。どこかひとつがトンがることはなく、レーダーチャートで満遍なく高得点を取るその実力に、大人になればなるほど、われわれはあらがえなくなっていく。だが、それだけに没個性となりやすいのも事実。「大枚はたいて手に入れたのに、まわりはCクラスだらけ」なんてことは珍しくない。
そんなとき、GLCは光を放つ。セダンでは少々やり過ぎな感じがした、なまめかしくうねるようなデザインは、SUVとして仕立て直されただけで一気にまとまりを見せる。
運転しても、その仕上がりは見事だ。この手のクロスオーバーSUVの利点は、ストローク長をたっぷり取ったサスペンションにあるが、GLCの乗り心地は硬すぎず柔らかすぎず、ドイツ車ならではの高いスタビリティーとSUVらしい緩さが絶妙にマッチしている。個人的には、セダン以上の上質感と、ステアリング操作に対する素直なロール感、そして軽快感を味わうことができた。
全高と全幅をそれぞれ1645mmと1890mmに拡大しながらも、全長は4660mmとセダンよりむしろ短く抑えている点も泣かせる。これはアプローチアングルとデパーチャーアングルを稼ぐためであり、実際、試乗路にあった泥んこ道や、軽いモーグルがついた林道も、GLCはザクザク走ってくれた。
一方で、2.5リッター直噴ターボ(211ps)と9段ATについては少し不満を感じた。強くアクセルを踏み込んだときにはピッチングが発生するし、高回転域を多用するシーンでのギア選択にもやや難がある。いつまでも低いギアをホールドしてしまったり、変速のタイミングがドライバーの意図からワンテンポ遅れたりするのだ。エンジンの特性というよりATとの協調に起因するところだが、ここらへんは同じドイツのライバルである「ポルシェ・マカン」(7段PDK)に一歩譲ると感じた。
もっとも、いまどきのATには“学習機能”が付いているので、もしかしたら筆者の前に乗ったジャーナリストの踏みぐせが大きく影響していたのかもしれない。
エンジン自体は1860kgの巨体を引っ張るだけのトルクを有しており、特に巡航中、そっと右アシに力を込めたときの追従性が素晴らしかった。オジサンはこうした性能に魅力を感じるのだ。
このGLCを手に入れるには、セダンに対して90万円ほど余計なバジェットを用意しなければならない。だが、その価値はあると思う。そもそも745万円からという価格自体、相当ハードルが高いのだが
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎)
【スペック】
全長×全幅×全高=4670×1890×1645mm/ホイールベース=2875mm/車重=1860kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(211ps/5500rpm、35.7kgm/1200-4000rpm)/トランスミッション=9AT/燃費=13.4km/リッター/価格=745万円
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。