メルセデスAMG GLC63 S Eパフォーマンス(4WD/9AT)【試乗記】
アスリート系PHEV 2024.05.06 試乗記 システム最高出力680PSを誇る高性能SUV「メルセデスAMG GLC63 S Eパフォーマンス」が上陸。「One man, One engine」主義に従って熟練のマイスターが手作業で組み上げる2リッター直4ターボエンジンと、F1由来の電動化技術が織りなす走りを確かめた。GLCに2種類のPHEV
メルセデス・ベンツのミドルサイズSUV「GLC」のカタログを見ると、4つのグレードのうち2つ、つまり半分がプラグインハイブリッド車(PHEV)であることがわかる。一台は「GLC350e 4MATICスポーツ エディションスター」で、もう一台はメルセデスAMG GLC63 S Eパフォーマンスだ。
どちらも2リッター直4ガソリンターボエンジンと電気モーター、外部電源から充電可能な駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載するというのは共通だが、GLC350eが998万円であるのに対して、GLC63は1780万円とほぼ倍の値段に跳ね上がる。
システム出力は前者が313PSなのに対して、後者は680PSと、こちらは倍以上。一方、電気だけで走る、いわゆるEV走行の距離は、GLC350eが118kmを誇るのに対して、GLC63はたったの16kmと逆転。それもそのはずで、バッテリー容量を確認すると、前者が31.2kWh、後者が6.1kWhと大きな違いがあるのだ。
おかげで、ひととおり撮影を終えた試乗車のGLC63を受け取り、まずはEV走行を試そうと走行モードを「ELECTRIC」に変更しようとしたら、バッテリー残量が足りず、ELECTRICには切り替わらなかった。そのときは、直前まで運転していた編集部のSさんがGLC63の高性能を楽しみすぎたのかと思ったが、実のところはEV走行の航続距離が短かったのだ。Sさん、疑ってゴメンなさい。
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ハイパフォーマンスの源となる「M139」エンジン
GLC63のプレスリリースを見ると、「このバッテリーは、航続距離を最大化することより、速やかな放電と充電を行えることを重点に設計されたもの」とあり、ひとくくりにPHEVといっても、GLC350eはEV走行の航続距離を重視しているのに対して、GLC63はメルセデスAMGの名にふさわしい高性能を目指しているという違いがあった。GLC63のパワートレインを“パフォーマンスハイブリッド”と呼ぶのもそのあらわれだろう。
そのハイパフォーマンスの源となるのが、「M139」と呼ばれるAMGの2リッターエンジン。AMGといえば、ひとりのマイスターが一基のエンジンを手作業で組み立てる「One man, One engine」で知られるが、このエンジンもまさにそのひとつ。
しかも、このM139ユニットは、量産車用としては世界初となる「エレクトリックエキゾーストガスターボチャージャー」を採用。F1由来のこの技術は、ターボチャージャーの軸に組み込んだ電気モーターで直接タービンを駆動する“電動ターボ”であり、排気の流れが遅い低回転域でもターボラグのないレスポンスの良さと、低回転域での高トルク化が図られるという。
エンジンだけでも最高出力476PSを発生し、これで十分なところを、さらに定格出力109PS、ピーク出力204PSを誇る電気モーターが加わるのだから、まさに鬼に金棒。電気モーターにパワーを供給する「AMGバッテリー」もF1由来の技術で、素早い充放電と軽量構造を特徴としていて、これだけのハイテクがてんこ盛りでは、約1800万円の価格にも納得せざるを得ない。
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とにかく速い!
縦のルーバーが雄々しいAMG専用フロントグリルや大きなエアインテークを備えたフロントバンパー、30mmワイドなボディーなどにより、標準モデルとの差別化が図られたGLC63。さらにオプションの「AMGカーボンパッケージ」を手に入れた試乗車はただならぬオーラを放っている。
インテリアは標準のGLCをベースとしているが、グリップが太く、「AMGドライブコントロールスイッチ」が付く「AMGパフォーマンスステアリング」や、大きく張り出したサイドサポートが際立つオプションの「AMGパフォーマンスシート」、そしてダッシュボードを覆うカーボンパネルが、ドライバーをその気にさせてくれる。
前述のとおり、バッテリー残量が足りないため、とりあえず走行モードを「SPORT」に変えて、エンジンを積極的に使う設定に。こうすることで、走行しながらバッテリーの残量を増やせるのがPHEVの良いところ。しかも、GLC63のバッテリーは6.1kWhと比較的容量が少ないので、普通充電を行うよりもこちらのほうが手っ取り早い。
エンジンの力で発進したGLC63は、低めのギアを使うこともあって低速から力強い動き出しを見せる。例の電動ターボのおかげでアクセルペダルの動きに素早く反応するうえ、さらにモーターによるアシストが加わる効果は絶大。軽くアクセルペダルを踏むだけでも周囲のクルマを置き去りにするほどに速い。基本の「COMFORT」モードでも十分すぎる速さで、ふだん使いにはこちらが最適。一方、SPORTの上を行く「SPORT+」モードならさらに鋭い加速が楽しめるが、日本の公道ではその実力を発揮しきれないのが悩みのタネだ。
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EV走行でも十分なパフォーマンス
バッテリーに電気がたまってきたところで、走行モードをELECTRICに切り替える。COMFORT同様、発進はモーターだけで行うが、街なかで流れに乗るのはもちろんのこと、高速道路への流入でも加速は十分なレベル。ただし、EV走行可能距離が短いGLC63では、ELECTRICは主役というより、早朝や深夜、静かに家に帰り着きたいときに選ぶ脇役というのが、妥当なところだろう。回生ブレーキはステアリングホイールのAMGドライブコントロールスイッチで調整が可能で、「なし」「通常」「強力」「最大」が選べ、強力や最大ならアクセルペダルだけでほぼ速度調整が可能になるのがうれしい。
GLC63には、フロント:265/40ZR21、リア:295/35ZR21サイズのタイヤと21インチのアルミホイールが標準で装着されるが、オプションのAMGカーボンパッケージが選ばれた試乗車ではアルミホイールは同じ21インチでも鍛造にアップグレード。「AMGライドコントロールサスペンション」と「AMGアクティブライドコントロール」が備わることもあり、乗り心地はやや硬めとはいえ、十分な快適性を確保。目地段差を越える際のショックも巧みにいなす仕上がりの良さだ。コーナリングも痛快の一言で、ロールを感じさせることなく素早く向きを変える俊敏さは、SUVをドライブしている気がしない。
このクルマの唯一の弱点になりそうなのが荷室。エンジン仕様の容量が620〜1680リッターであるのに対して、PHEVのGLC63では470〜1530リッターと少し狭い。それでもボディーサイズ相応の収納性は確保されている。
一般的なPHEVとは異なり、性能重視のプラグインハイブリッドシステムを搭載するGLC63は、メルセデスAMGのブランドや、パフォーマンスの名前にふさわしい刺激的なSUVだった。EV走行に重きを置く人には不向きだが、PHEVのテクノロジーでファン・トゥ・ドライブを求める人には、その期待にきっと応えてくれるはずだ。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG GLC63 S Eパフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4750×1920×1635mm
ホイールベース:2890mm
車重:2350kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:476PS(350kW)/6750rpm
エンジン最大トルク:545N・m(55.6kgf・m)/5250-5500rpm
モーター最高出力:204PS(150kW)/4500-8500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-4500rpm
タイヤ:(前)265/40ZR21 105Y XL/(後)295/35ZR21 107Y XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト7)
ハイブリッド燃料消費率:9.8km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:16km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:12km(WLTCモード)
交流電力量消費率:385Wh/km(WLTCモード)
価格:1780万円/テスト車=1928万2000円
オプション装備:メタリックカラー<グラファイトグレー>(0円)/AMGパフォーマンスパッケージ(76万1000円)/AMGカーボンパッケージ(72万1000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:311km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:222.6km
使用燃料:28.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.8km/リッター(満タン法)/8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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