メルセデス・ベンツGLC250 4MATICスポーツ(4WD/9AT)
ヒットは続くよ どこまでも 2016.04.13 試乗記 好調なセールスを続けるメルセデスのラインナップに、新たな売れセンSUV「GLC」が加わった。「Cクラス」の“C”を冠した、注目モデルの出来栄えは? 下野康史がリポートする。Cクラス似のスタイリング
セダン系のCクラスに相当するメルセデスの新型SUVがGLCである。すでにある「GLA」と「GLE」の中間に位置するプレミアムコンパクトSUVだ。
実写版スーパーマリオのTVコマーシャルで驚かせたGLAは新規車種だが、GLEはかつての「Mクラス」、GLCは「GLK」を引き継ぐ。統一感のなかったモデル名が、SUVファミリーとしてこれでわかりやすくなった。
ちょっと中近東っぽい、ナゾのデザインという感じがけっしてワルくなかったGLKに対して、こんどのGLCはスタイリングもCクラス似である。5ドアボディーということで、「Cクラス ステーションワゴン」と比べると、全長は6cm短いが、全幅は8cm広く、全高は20cm高い。かなり堂々とした押し出しだ。
本国には後輪駆動の2WDやディーゼルもあるが、日本仕様の第1弾は、直噴2リッター4気筒ターボを搭載する250の「4MATIC」。今回、試乗したのはスポーツサスペンションを備える“スポーツ”で、本体価格は678万円。Cクラスワゴンの「250スポーツ」が738万円もすることを考えると、このGLC250 4MATICスポーツは内容盛りだくさんでお買い得に感じられる。
意外なほどに走りが軽い
このとき、たまたま一緒に走らせていたのが「ポルシェ911カレラS」だったこともあり、GLCに乗り込むと、「たか!」と思った。着座位置とアイポイントだ。あたりまえだが、911とはまるで世界が違う。
動き出すと、こんどは意外にも「かる!」と思った。211psの2リッター4気筒ターボはC250用とスペック上まったく同じだが、車重はGLCのほうが170kg重い(C250ステーションワゴン スポーツ比)。にもかかわらず、どこからでもスルスルと加速する走りの軽さはCクラス以上である。1830kgもある常時四駆SUVとはとても思えない。スポーツサスペンション付きなのに、乗り心地はかたくない。むしろしなやかで洗練されている。
GLCは、まだガソリンCクラスには採用されていない最新の9Gトロニックを装備する。前進9段も必要なのだろうかと思うが、ステップアップ比が小さいだけに、これまでの7段ATに輪をかけて滑らかである。
ドライブモードでスポーツかスポーツプラスを選んでいると1速発進だが、エコノミーとノーマルでは2速スタートになる。それでもスタートダッシュは身軽だ。
9速トップギアが100km/h時のエンジン回転数をどこまで落としてくれるのか、シフトインジケーターを見ながらチェックしてみると、100km/hでは8速までしか上がらなかった。シフトパドルでシフトアップを命じても9速には上がらないのだ。合法的に9速が使えるようになるのは、新東名など一部高速道路が120km/h解禁になってからということか。
一方、一般道を50~60km/hで流していると、エコモードでも5速までしか上がらない。エンジンが回りすぎている感じがするわけではないから、なんの不都合もないが、右足のわずかな踏み込みに即応する軽快な走りは、むやみに高いギアには上げないこのATのおかげかもしれない。
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盛りだくさんの装備がうれしい
18cmの最低地上高が確保された5ドアボディーは、キャビンも荷室もたっぷりと広い。
重い荷物を両手いっぱいに持っていても、ボディー後部で足を蹴り出すような動作をすると、自動的にドアが開く。“ハンズフリーアクセス”はGLCすべてに標準装備だ。
荷室左右の壁面に付くスイッチを引くと、左右の後席背もたれがそれぞれ前に倒れ、フラットな荷室フロアをつくる。最近のステーションワゴンやSUVではあたりまえになりつつある装備だが、GLCは同じスイッチが左右の後席側にもあるのが親切だ。リアシートに座っているとき、なんのスイッチか知らずに操作すると、背中をドンと押された。GLCんちの子どもが喜びそうだ。
700万円近いクルマだけあって、レーダーセーフティパッケージは標準装備。車間距離を自動でキープし、車線維持をアシストする最新バージョンのディストロニックプラスも付いている。
試乗したのは花冷えする日だったが、早朝、エンジンをかけて走りだすと、1kmもいかない最初の信号待ちで、エアコン吹き出し口からすでにゆるゆる温風が出ていて驚いた。
経済性も言うことなし
乗り降りするとき、ドアのちょうつがいの大きさなどを見ると、やっぱり“ベンツ”だなあと感心するが、先述したように走りは軽く、運転操作の手応え足応えも軽い。おかげで、ストレスがない。このクラスのSUVとしては、運転に不慣れな女性ドライバーなどにもいちばん扱いやすいクルマだと思う。
重さ1.8tオーバーのフルタイム四駆SUVなのに、満タン法で採った燃費は10km/リッターを超した。経済性も含めて、言うことなし、である。
メルセデスジャパンはモデルごとの販売台数を公表していないが、台数的な稼ぎ頭はCクラスである。個人的にも、いまのメルセデスラインナップでいちばん「いいクルマ」はCクラスだと思う。
そこから派生したGLCに、Cクラスほどのまったりしたよさはないものの、滑らかさはCクラスと変わらず、乗り味はCクラスより若々しい。
以前、メルセデスジャパンのスタッフに販売台数のツッコミを入れていたら、「新規投入モデルは、とにかく純増です」と言っていた。この時代に、出せば間違いなく売れてしまうとはスゴイ。GLCも売れそうだ。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLC250 4MATICスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4670×1890×1645mm
ホイールベース:2875mm
車重:1830kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ<ランフラット>)
燃費:13.4km/リッター(JC08モード)
価格:678万円/テスト車=686万8000円
オプション装備:メタリックペイント<ダイヤモンドシルバー>(8万8000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2350km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:323.0km
使用燃料:31.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/9.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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