アウディR8 V10クーペ 5.2 FSIクワトロ(4WD/7AT)/R8 V10プラス クーペ 5.2 FSIクワトロ(4WD/7AT)
万能のスーパースポーツ 2016.05.19 試乗記 第2世代へと進化したアウディのフラッグシップスポーツ、新型「R8」が日本に上陸。富士スピードウェイでフルパワーを解き放った。ドライからウエットへと変化する路面で体感した、その走りを報告する。デザインはキープコンセプト
新型アウディR8をテストする機会を得た。試乗会が開かれた富士スピードウェイのピットロードで、じっくりと新型の外観を眺める。プロポーションというかシルエットは初代とさほど変わらない。ベールをかぶせたら旧型か新型かを見分けることができる人は少ないんじゃないか。
けれど、細部を見るとほとんどすべての部分が変わっている。まずヘキサゴングリルやシャープで細長いLEDヘッドランプなど、フロントマスクが最新のアウディ顔になった。R8といえばだれもが思い浮かべる左右ドア背後のエアインテークは新型にも踏襲されたが、上下2分割のデザインに変更された。リアは比較的変更点が少ない。
ただまぁ全体的にはキープコンセプトのスタイルだ。もうずいぶん長い間このカタチを見てきたような気がする。それもそのはずで、2007年の初代登場から約9年たっているが、その前の03年にコンセプトカーの「ルマン クワトロ」が出ていて、それがほぼそのままR8として登場したので、このカタチが世の中に出てきてからかれこれ13年くらいたっていることになる。それを考えると長持ちする優れたデザインだと思う。最初から新しく見えたわけじゃない分、13年たっても古く見えない。
540psと610psの2タイプを設定
旧型は同じグループの「ランボルギーニ・ガヤルド」とフレーム構造やエンジンの基本設計などを共有していた。新型にもその図式は当てはまり、ガヤルドの後継モデルに当たる「ウラカン」と多くのコンポーネンツを共有している。アルミとカーボン素材を適材適所で用いた新世代の「アウディスペースフレーム」を採用し、リアミッドに5.2リッターV10自然吸気エンジンを搭載する。新型には現時点ではV8エンジン搭載モデルはない。その代わりノーマルとエンジンのチューニングが異なるハイパワーバージョン「プラス」が設定される。
ノーマルとプラスの判別方法は簡単で、固定式のリアウイングが付いていたらプラス、なかったらノーマルだ。ノーマルのV10が最高出力540ps/8250rpm、最大トルク55.1kgm/6500rpmなのに対し、プラスは同610ps/8250rpm、同57.1kgm/6500rpmを発生する。ちなみに、プラスのスペックは「ウラカンLP610-4」とまったく同一だ。いずれもデュアルクラッチトランスミッションの7段Sトロニックとの組み合わせ。旧型にあったマニュアルトランスミッションは設定されない。
最初にプラスから試乗した。メディアのクルマそれぞれにプロドライバーによるペースカー(クルマは「アウディTTSクーペ」)が付くかたちでの試乗。説明を受け「ペースカーなんて要らないよ~」という表情をしておいたが、心の中ではホッとしていた。だって車両価格2906万円(テスト車は各種オプション付きで3079万円)だし、試乗開始とともに雨が降ってきたし……。
エンジンが気持ちよすぎる
乗り込むと、シートの着座位置がとても低いのに前方視界が良好なのに驚く。スーパーカーにしてはウインドシールドが非常に大きいため、前がよく見えるのだ。それは見た目を考えればマイナス要素かもしれないが、ぶっ飛ばすクルマだからこそ安全性を重視したのではないだろうか。そのあたりに耐久レースで長く輝かしいヒストリーをもつブランドのクルマだということを感じる。
アウディドライブセレクトを「ダイナミック」に、Sトロニックをスポーティーな性格の「S」モードに合わせ、TTSの追従を開始。ピットロードを出て、1コーナー、2コーナーを慎重に抜け全開加速を試みる。ここでひとつ謝罪。ここ数年、webCGをはじめ、さまざまな媒体で「近ごろのよくできた高効率ターボエンジンがあれば、大排気量の自然吸気マルチシリンダーは要らない」といった趣旨のことを書いた記憶があるが、前言を撤回させていただきたい。R8の5.2リッターV10エンジンの全開加速が気持ちよすぎる。
アクセルを深く踏み込むと、カミソリのような切れ味のレスポンスで寸分の遅れなく加速Gが立ち上がり、バケットシートに背中を押しつけられ、背後から澄んだエキゾーストノートが聴こえ、タコメーターの針がとんでもない速さでレッドゾーンめがけて回っていったかと思うと直後に電光石火の速さでギアアップするという、時間にすればわずか数秒にすぎない一連の事象。この中で重要な役割を担っているのが自然吸気の大排気量マルチシリンダーだと実感した。
クワトロならなんとかなる
2周目にようやくエンジンの魅力に慣れ、ハンドリングはどうかと意識することができた。ロー&ワイドのミドシップマシンは大昔からハンドリングがシビアと相場が決まっているのだが、クワトロのおかげで無用なシビアさが大幅に緩和され、だれでも自信をもって走らせられるというのがR8の真骨頂だろう。コーナーの途中でバランスを崩し、クルマが内側を向きすぎたような場合でも、アクセルを踏み増せば4輪に適切なトラクションがかかって、再びクルマを正しい方向に修正することができる。また、コーナー出口で気が急(せ)いて早くアクセルを踏みすぎた場合、RWD(後輪駆動)ならクルマが横を向いてとっちらかるが、クワトロならなんとかなる。
R8プラスでは、ドライブセレクトの「コンフォート」「オート」「ダイナミック」「カスタム」に加え、「パフォーマンス」というモードを選ぶことができる。パフォーマンスモードを選んだ上で「ドライ」「ウエット」「スノー」を選択すると、前後トルク配分などがそれぞれのモードに最適化される。すなわちドライを選ぶとあらかじめリア寄りのトルク配分となり、スノーでは50:50に近い前後配分となる。
続いて、540psのノーマルモデル(2456万円)をテストしたが、そのころには雨が強まったため、ペースを落とさざるを得ず、プラスとのパワーの差がどれほどのものなのか、よくわからなかった。正直、ストレートで目いっぱいアクセルを踏んでみてもはっきりとは540psと610psの差を感じることができなかった。70psの価格差450万円をどう考えるか。買える人にとっては悩ましい問題かもしれない。
ハイテク満載がアウディらしさ
どの尺度から見てもR8は一級のスーパースポーツカーだ。その一方で、ハイテクを駆使した生真面目な機能も盛り込まれる。ドライブセレクトでコンフォートを選べば「A8」もかくやの乗り心地を得られるし(ちょっと大げさ)、低負荷時にはV10の片バンクを休止し、5気筒エンジンとなって燃費を稼ぐ。しかも片バンク休止時間が長くなると、触媒の温度が下がるのを防ぐため、作動するのが反対側のバンクに切り替わるという芸の細かさ。ゆっくり走らせてみたが、気筒休止にもバンク切り替えにも気づくことはできなかった。同じフォルクスワーゲン・グループのクルマでもウラカンにはこんな重箱の隅をつつくような生真面目な機能はない。あってほしくもないけれど。
派手な見た目と、見た目を裏切らない動力性能がスーパーカーの魅力だが、スーパーカーというだけならよそにもたくさんある。同じフォルクスワーゲン・グループにだって、速さの頂点に君臨するブガッティがあるし、エキゾチックな魅力に富んだランボルギーニもある。じゃあフォーシルバーリングスを冠したスーパーカーはどうあるべきかというと、R8のようなハイテク全部のせによる万能感ありありのモデルなのかもしれない。
(文=塩見 智/写真=田村 弥)
拡大 |
テスト車のデータ
アウディR8 V10クーペ 5.2 FSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4426×1940×1240mm
ホイールベース:2650mm
車重:1670kg
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:540ps(397kW)/8250rpm
最大トルク:55.1kgm(540Nm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)295/35ZR19 104Y(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:--km/リッター
価格:2456万円/テスト車=2724万円
オプション装備:ダイナミックステアリング(20万円)/ステアリング マルチファンクション 4コントロールサテライト(24万円)/サイドブレード ケンドウグレー(0円)/エクステリアミラー 電動調整&格納機能 自動防げん機能 ヒーター(0円)/ファインナッパレザー ダイヤモンドステッチング(7万円)/エンジンカバー カーボン(47万円)/セラミックブレーキ(123万円)/アウディ レーザーライトパッケージ(47万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
アウディR8 V10プラス クーペ 5.2 FSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4426×1940×1240mm
ホイールベース:2650mm
車重:1630kg
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:610ps(449kW)/8250rpm
最大トルク:57.1kgm(560Nm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター
価格:2906万円/テスト車=3079万円
オプション装備:ボディーカラー<カモフラージュグリーン マットエフェクト>(76万円)/アルミホイール 10スポークYデザイン グロスブラック<F:8.5J×20/R:11J×20 鍛造>(0円)/サイドブレード マットチタン(0円)/ヘッドライニング アルカンタラ ダイヤモンドステッチング(49万円)/エクステリアミラー 電動調整&格納機能 自動防げん機能 ヒーター(0円)/Bang & Olufsenサウンドシステム(27万円)/ファインナッパレザースポーツシート 電動調整機能(21万円)/TVチューナー(0円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。





























