DS 5シック レザーパッケージ(FF/6AT)
いまなおアバンギャルド
2016.06.27
試乗記
DSブランドの中でも、他に類を見ない斬新なスタイリングが特徴の5ドアモデル「DS 5」が、新しい“DS顔”にフェイスリフト。さらにパワートレインにも手が加えられる大幅改良が施された。進化したDSブランドのフラッグシップの魅力に触れた。既存の枠に収まらないカタチ
やっぱり変わったカタチだなあ。ひさしぶりにDS 5を間近に見てそう思った。今回の取材は、ひと足先にwebCGに試乗記をアップした「DS 3カブリオ」同様、静岡の御殿場市で開催されたDSオールラインナップ試乗会で行ったのだが、敷地に置かれたDS 3や「DS 4」は一般的なハッチバックやクロスオーバーに見えるのに、DS 5だけがひとり、カテゴライズできない独特のフォルムをしている。
現時点では最も新しい輸入車ブランド、DSの目指すところが、「タイヤの上に乗った最新パリモード」であるならば、フラッグシップはやはりDS 5のような姿でなければならないし、DS 5には十分にその資格があると思った。デビューから4年たっても、独創性はまったく色あせていない。
新型の一番のアピールポイントである「DS顔」は、2015年秋の東京モーターショーで初めて対面したときは、目が慣れるまでに少々時間を要した。しかし何度か見ているうちに慣れ、今回はむしろ感心することが多かった。
グリルの形状をかなり吟味したのだろう、既存のノーズに違和感なく収まっているし、バンパーが一直線になったのでむしろ自然に映る。ヘッドランプの外形を変えずに中身をほかのDSと共通の「LEDビジョン」に一新し、グリルの側に連続感を持たせて「DSウイング」を表現したところからは、フランスらしい合理主義も感じ取ることができる。
DS顔のDS 5を見て思ったのは、やっぱりヨーロッパはブランドの扱い方が上手だなあ、ということだった。
上質で前衛的な車内空間
今回の試乗車は上級グレードの「シック レザーパッケージ」。ドアを開けると真っ赤なレザーのインテリアが目に飛び込んできて、一瞬ハッとしたけれど、よく見ればそこはシトロエン時代とほとんど同じだ。でもそれでいい。こちらもいまなお前衛的なのだから。
特にセンターコンソールのパワーウィンドウスイッチや、オーバーヘッドコンソールにあるガラスルーフのシェードのスイッチなどは、タッチパネルに代表される無機質な操作系があふれるなかで、意味もなく触れたくなる魅力的な造形だ。人の気持ちにまで入り込んだインターフェイスである。
しかもメーターカバーのステッチや、センターパネルのチタンカラー、コンソールにちりばめたDSモノグラム、エレガントなアナログ時計など、細かいディテールまでこだわりがあふれている。プレミアムブランドを名乗るにふさわしい上質な仕上がりだ。
腕時計の金属ベルトにヒントを得たクラブレザーシートももちろん健在。見た目から想像するより、はるかに体になじむ。後席は身長170cmの僕なら不満なく過ごせるものの、伝統的な高級車のような広大さはない。でもリアゲートの一部を含めて合計4枚のガラスルーフが、特別感と開放感をもたらす。
多少暑くとも例のスイッチに左手の指を掛け、合計3枚のシェードを一気に開け放って走りたくなる。夏の暑さに辟易(へきえき)としている日本人であっても、この粋な演出を味わえば、太陽をこよなく愛するフランス人の気持ちが理解できたような錯覚を覚えるから不思議だ。
新しいパワートレインの恩恵
1.6リッター直列4気筒ターボエンジンに6段ATを組み合わせ、前輪を駆動するというパワートレインはいままでと変わらない。ただしアップデートは実施されていて、エンジンの最高出力は156psから165psに向上した。
といっても、久しぶりに乗ったクルマのパワーが9psアップした実感は、残念ながら即座に判別できなかった。レブリミットまでシューンと伸びていく気持ち良い吹け上がりや、デュアルクラッチ・トランスミッションより滑らかな発進停止をこなすトルコンATの優しいマナー、相変わらずハイレベルの静粛性のほうが印象に残った。
それよりも日本の多くのユーザーにとっての恩恵は、ようやくアイドリングストップが付いたことだろう。おかげでJC08モード燃費は15.0km/リッターと、このサイズの5人乗りガソリン車としては悪くない数字をマークしている。
ブーメランを組み合わせたような鋭角的なデザインが目を引くアルミホイールには、225/50R17から235/45R18へと、やや太く偏平になったタイヤが組み合わされる。だから乗る前は乗り心地が心配だった。シトロエン時代のDS 5は街中ではかなり硬めで、高速道路でも心地良い揺らぎを得られることはなかったからだ。
走りと乗り心地の“最適解”
でもそれは杞憂(きゆう)だった。低速では路面の凹凸を伝えがちであるものの、サスペンションはマイルドになっていることが確認できたからだ。さすがに“クラシックDS”のようなフワ~ンという感触はないけれど、発進時にルームミラーに目をやると景色が下がることからも、それが分かる。
ハンドリングは旧型に似ていて、フランス車としては重めのパワーステアリングの影響もありノーズが重い印象を受けるけれど、一方でペースを上げても路面を捉えて離さない粘り腰からは“フランス生まれ”を実感する。
できればこのシャシーと17インチの組み合わせも味わってみたいと思ったけれど、現状でもそのテイストは、いまのフランス車としての乗り心地とハンドリングのバランスの最適解に近づいていると思った。
DS 3やDS 4は、最初からそれぞれの理想像にかなり近い位置にあったと記憶している。それがシトロエンではなくDSを名乗った理由のひとつなのだろう。そしてDS 5も新型でその領域に近づいてきた。顔だけでなく、
(文=森口将之/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
DS 5シック レザーパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4535×1870×1510mm
ホイールベース:2725mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)235/45ZR18 98Y/(後)235/45ZR18 98Y(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:15.0km/リッター(JC08モード)
価格:454万円/テスト車=483万9700円
オプション装備:SSDカーナビゲーション(19万7640円)/パールペイント<ブラン ナクレ>(9万1800円)/ETC車載器(1万260円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:1003km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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