DS 5シックBlueHDiレザーパッケージ(FF/6AT)
変わっていることだけが魅力ではない 2017.05.26 試乗記 DSブランドならではの、アバンギャルドなスタンスが魅力の「DS 5」。先頃ラインナップに加わった2リッターのクリーンディーゼルエンジン搭載モデル「DS 5シックBlueHDiレザーパッケージ」は、遠くまで走ってこそ真価が光る快適至極なグランドツアラーに仕上がっていた。DSって知ってますか?
DSシリーズだけを分離、独立、新たなブランドとして展開する戦略をプジョー・シトロエンが打ち出したのは2年前のこと。日本でもようやくこの3月に初の専売店である「DS STORE滋賀」が、4月には2号店の「DS STORE名古屋」がオープンした。とはいえ、売っているモデルは当面これまで通りなので、ある日突然、それまでの名前が変わりましたと言われても、はいそうですか、という具合にはならないだろう。
60年以上も前の1955年に登場したオリジナルの「シトロエンDS」が先進的な車であったことは疑いないものの、少なくとも日本ではDSがどれほどユニークな車だったかを知る人はかなりのクルマ好きに限られるはずであり、いまさらそれを持ち出されても「DS」の何たるかを理解するのは難しい。自動車の歴史において机上で立案したブランド戦略が成功した例はまずない。近年ではBMW MINIという例外もあるけれど、あの場合はオリジナル・ミニのデザインを巧妙に利用することでアピールできた。トヨタが威信をかけたレクサスでさえ、日本での展開から10年以上たった今もメルセデスやBMWの国内販売台数に届かない現状を見れば、その難しさは明らかだろう。
もちろん、だからこそ挑戦しがいもあるわけだが、プジョー/シトロエンとは違う、プレミアムでラグジュアリーなブランドとして認められるかどうかは今後のプロダクトの出来栄え次第である。革新的、前衛的と言うは易しいが、どのメーカーもコンポーネンツの共用化に腐心するこのご時世に、どうやってユニークな製品を生み出すのか。もともとシトロエン自体、風変わりでユニークであることを特徴としていたから、さらに違いを生み出すのは生易しいことではないだろう。