アルファ・ロメオ・ジュリア2.0(FR/8AT)/ジュリア2.2ディーゼル(FR/8AT)/ジュリア クアドリフォリオ(FR/6MT)
新時代のアルファ 2016.07.06 試乗記 アルファ・ロメオにとって久々のFRセダン「ジュリア」が、いよいよデビューを果たした。本国イタリアでの試乗を通して見えてきた、ドイツのライバルとも、これまでのアルファとも違うスポーティネスの形をリポートする。歴史的な背景を持つ車名
アルファ・ロメオがそのラインナップの中軸にFRモデルを置くのは、かれこれ四半世紀ぶり、「75」以来のことだ。その75のエンジニアリング面でのルーツとなるのは1972年に発表された「アルフェッタ」。そしてアルフェッタのさらに向こうに、1962年に発表されたオリジナルの「ジュリア」がある。FFのジェネレーションを無視するわけではないが、なにもブランドのつじつま合わせに昔の名前を引っ張りだしたのではなく、新しいジュリアにはちゃんとひも付けできる歴史背景があるということは知っておいてもいいことだと思う。
オリジナルのジュリアにまつわる歴史は、そのまま市販車におけるアルファ・ロメオの黄金期と重なっている。「アルフィスタ」と呼ばれる多くのエンスージアストが通ってきた道も、またここにつながるわけだ。
一方でアルフェッタから75にかけては、会社はもとよりイタリアそのものが経済的な低迷期を迎えたこともあって販売は低迷。フィアット側のポートフォリオに倣うかたちで、エンジニアリングの近代化としてアルファ・ロメオはFF化を推進することになる。
結果的にそれは「156」の世代でビジネス的にも実を結ぶわけだが、そこで培われたアルファ・ロメオのポジティブなプロダクトイメージは、繊細なデザインといい意味でクラシックなエンジンによるところが大きい。
一方で、アルフィスタにとってアルフェッタ以前のアルファ・ロメオは、DOHCやインボードディスクブレーキ、トランスアクスルレイアウトをこのクラスに用いるなど、技術面において非常にアグレッシブなメーカーであるという印象が強いだろう。
そしてこの新しいジュリアから、アルファ・ロメオは新たなブランドイメージの構築を加速させると思われる。果たしてそれはどんな着地点を目指すものなのか。このクルマの出来栄えは、確かにそれを示唆するものとなっていた。
透けてみえるフェラーリとマセラティの影
新しいジュリアについての技術的な詳報は既に目を通された方もいるだろう。現状発表されているラインナップは、仕向け地の法規の関係などから出力の差異はあるものの、大きく3種類に分けられる。いずれも新開発となる、2リッターの直噴4気筒ターボ、2.2リッターの直噴4気筒ディーゼルターボ、そして2.9リッターの直噴V6ツインターボというのがその内訳だ。
日本への導入仕様や時期は現在検討中とのことだが、恐らくは200ps版の直4と180ps版のディーゼル、そして510psのV6が導入されるもよう。ディーゼルはフィアットの子会社であるVMモトーリが開発を担当、90度のバンク角を持つV6は100%アルファ・ロメオの開発をうたうが、「フェラーリ・カリフォルニアT」が搭載するV8とボア×ストロークを同じくするなど、エンジニアリングの基礎では生産元であるフェラーリも関与していることだろう。組み合わせられるトランスミッションは全てのモデルに6段MTの用意もあるが、日本仕様は当面8段ATのみになる可能性が高そうだ。また、アメリカ市場を意識したモデルゆえ四輪駆動のドライブトレインも用意されるが、日本仕様への搭載は現状考えられていないようだった。
サスペンションはフロントがオリジナルジュリアと同様のダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンクとなる。プラットフォームもまた100%アルファ・ロメオといわれるも、恐らくフロアパネル等まで目を凝らせば同門のマセラティの影はみえてくるはずで、考えようによっては新生アルファ・ロメオ、やたら豪勢なバックボーンを備えるに至っている。
意匠は秀逸、質感は要改善
車寸的には全長が4643mm、ホイールベースが2820mmと、想定されるライバルとガチンコだ。そう、つまり新しいジュリアは「BMW 3シリーズ」や「メルセデス・ベンツCクラス」が牛耳る大きなマーケットにカチ込むために企画されたプレミアムDセグメントのモデルというわけである。ただし前脚にダブルウイッシュボーンを採用しつつ横幅の広い90度V6を搭載する関係で、全幅は1873mmとEセグメント並みに広く取られていた。
そういう視点でみるに、スタティックで気になったのは内装まわりの仕上がりだった。往時のアルファ・ロメオの象徴的なディテールである2連のメーターナセルをなぞらえつつ今日的な要件にも合致したデザインは見応えがあるも、それを構成する樹脂部品、特にダッシュボードやドアトリムアッパーなどに用いられるPVCの質感の乏しさが全体の印象をぼんやりさせている。プレミアムセグメントではこの辺りの質感競争は非常に厳しく、サプライヤーへの要求水準も非常に高いため、やはり初出からキャッチアップするのは難しいのだろう。
走りに関してはこれまでのFF世代のアルファ・ロメオとはまったく違う。詳しくは後述するとして、まず当たり前のことを記せば、全てに共通するのはいかにもFRという明快なトラクションと姿勢変化の妙だ。交差点を曲がる程度のゆっくりした速度から気持ち強めの加速を試みると、テールをクイッと沈ませるなど、その応答の饒舌(じょうぜつ)さはさながら「マツダ・ロードスター」のよう。もちろん速度が高まればそこまで大げさな動きも影を潜めるが、ハイスピードのコーナリングでもロールのダイアゴナル感はドライバーにしっかり伝わってくる。
ライバルとは違うスポーティネス
うまいのはそのロールスピードがきっちりコントロールされていて、ドライバーに急激な姿勢変化の恐怖を与えないことだ。FF時代のアルファ・ロメオのハンドリングは多かれ少なかれ、素早いロールスピードからタイヤのコンプライアンスを生かしつつ前輪を軸足的に使ってキュッと曲がっていくエッジィな感覚があった。新しいジュリアのそれは、大きなストロークで全輪をしっかり路面につけて、ドライバーにそれを適度に感じさせながらしなやかにコーナーをクリアするスタイルということになるだろうか。かといって、左右の動きにもっさりした粘度は感じさせない。
V6にせよ直4にせよ、意外なほど野太くチューニングされたサウンドも相まって、その走りのキャラクターはオリジナルのジュリア系を重ねる方がむしろふさわしいだろう。驚くほどの静粛性の高さは副産物としても、バネ下の重さを感じさせないすっきりした乗り心地、そして必要以上の情報を欲張って伝えないステアリングフィールの設定など、乗れば乗るほど思い浮かぶのはその姿だ。そういう、過去との連続性からいえばドンピシャでアルファ・ロメオらしいと思えるグレードは直4ガソリンユニットのそれ。ディーゼルはエンジンの重さや振動が若干の濁りとしてステアリングに伝わってくる点や、工夫のない回転フィールがちょっと気になった。V6のクアドリフォリオは強烈な動力性能をやすやすとは発散させないシャシーのセットアップのうまさに感心したが、これはAMGやMに伍(ご)するブランドイメージのけん引役であり、ちょっと別物と考えた方がよさそうだ。
新しいジュリアから垣間見えるのは、メルセデスやBMWとは一味違うスポーティネスを自らのプレミアム性として前面に押し出すという決意だろうか。それは視覚や聴覚というよりむしろ触感、つまりドライバビリティーやダイナミクスの面においてより強くオリジナリティーを打ち出そうとしているように感じられる。思えば往年のアルファ・ロメオはマジックと称されるほどシャシーセットアップには一家言を持つメーカーだった。来年前半辺りが予定されるという日本上陸時には、ぜひその辺りにも注目してみていただきたい。
(文=渡辺敏史/写真=FCA)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュリア2.0
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4643×1873×1436mm
ホイールベース:2820mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:200ps(147kW)/5000rpm
最大トルク:33.7kgm(330Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション、ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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アルファ・ロメオ・ジュリア2.2ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4643×1873×1436mm
ホイールベース:2820mm
車重:1445kg
駆動方式:FR
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:180ps(132kW)/3750rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
燃費:4.2リッター/100km(約23.8km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション、ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4639×1873×1426mm
ホイールベース:2820mm
車重:1580kg
駆動方式:FR
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:510ps(375kW)/6500rpm
最大トルク:61.2kgm(600Nm)/2500rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
燃費:8.5リッター/100km(約11.8km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション、ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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