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第362回:ロードスターのワールドカップ迫る!
マツダ「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」試乗商談会リポート

2016.08.26 エディターから一言 鈴木 ケンイチ
「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」の試乗商談会から。当日は15人の参戦予定者が会場に足を運んだ。
「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」の試乗商談会から。当日は15人の参戦予定者が会場に足を運んだ。 拡大

2016年にアメリカ国内でスタートした「マツダMX-5(日本名:ロードスター)」のワンメイクレースが上陸。2017年以降、日本を含む世界の国々へと開催地を拡大するという。それは一体、どんなレースなのか? マツダの意図はどこにあるのか? 参加予定者を対象とした、試乗商談会の様子をリポートする。

ワンメイクレースの参戦マシンを、来場者が興味深そうにチェックする。
ワンメイクレースの参戦マシンを、来場者が興味深そうにチェックする。 拡大
会場となった筑波サーキットには、イベント用のテントが設置された。テント内には「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のほか、オンラインレーシングシミュレーターの「iRacing」(写真)が並べられた。
会場となった筑波サーキットには、イベント用のテントが設置された。テント内には「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のほか、オンラインレーシングシミュレーターの「iRacing」(写真)が並べられた。 拡大
2016年9月には、マツダレースウェイ・ラグナ・セカで「GLOBAL MX-5 CUP」の“プレ世界一決定戦”が開催される。日本からは、2015年のパーティーレースのチャンピオンである堤 優威選手(写真左)と、現役のパーティーレース参戦者である北平絵奈美選手(右)の2人が参加する。
2016年9月には、マツダレースウェイ・ラグナ・セカで「GLOBAL MX-5 CUP」の“プレ世界一決定戦”が開催される。日本からは、2015年のパーティーレースのチャンピオンである堤 優威選手(写真左)と、現役のパーティーレース参戦者である北平絵奈美選手(右)の2人が参加する。 拡大

“グローバルなレース”日本上陸

猛烈な2つの台風が飛び去った後の2016年8月25日は、台風一過と呼ぶにふさわしい真夏日となった。そして、強烈な日差しがアスファルトの温度をぐんぐんと高める筑波サーキットでは「GLOBAL MX-5 CUP仕様車 試乗商談会」が開催されたのだ。

「GLOBAL MX-5 CUP」はマツダMX-5をベースとした統一仕様の車両を使うワンメイクレースだ。2016年からアメリカでスタートし、すでに100台以上のカップカーが販売され、4月のマツダレースウェイ・ラグナ・セカでの開幕戦には40台以上が参戦。初戦から大きな盛り上がりを見せている。

そして日本でも2017年から「GLOBAL MX-5 CUP JAPAN」が導入され、スポーツランドSUGO/ツインリンクもてぎ/鈴鹿サーキット/岡山国際サーキットなどの5カ所で、45分のスプリントレースが開催される。欧州でも2017年の実施が予定されており、その先にオーストラリアやアセアンでの開催も検討されているという。また、各シリーズの上位者による世界一決定戦を実施するなど、“GLOBAL”の名称にふさわしい世界規模のレースプログラムだ。

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豊かなカーライフを提供したい

「試乗商談会」と銘打たれたように、この日の筑波サーキットに集まったのは、来年度のレース参加を検討する15名。約30名の申し込みから抽選で選ばれた面々だ。その顔ぶれはスーパー耐久レースなどに参戦するベテランレーサーやカーショップのオーナー、モータージャーナリストなど、サーキット上級者がずらり。遠く三重から足を伸ばしてきた人物もいる。先代ロードスター(NC型)に先導された1人15分の試乗では、全員が危なげなく「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」を乗りこなしたのであった。

「ロードスターは初代から“誰もが幸せになる”と言っていますが、それは本当に大切なことです。人生を楽しんでもらいたい。仕事に追われているけれど、休みになったらサーキットに家族と行って“ああ、よかったね”となってほしい。クルマと一緒に豊かになるという世界観を広めたいんです」とロードスターの開発主査を担当した山本修弘氏は言う。「モータースポーツを楽しむことによって、豊かな人生を送ってもらいたい」という思いが、GLOBAL MX-5 CUPの根底に流れているという。

また、マツダがワークスとしてレースに参戦するのではなく、ドライバー育成を主眼においたGLOBAL MX-5 CUPに力を注ぐのは、「クルマの保有を彩る仕組みを作ることで、お客さまの豊かなカーライフに貢献したい」という思いがあると、執行役員/営業領域統括/ブランド推進・グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当の青山裕大氏は言う。

「GLOBAL MX-5 CUP」は、日本仕様の「マツダ・ロードスター」よりも排気量の大きな2リッター直4エンジン(最高出力157ps/6000rpm、最大トルク20.5kgm/4600rpm)を搭載する。
「GLOBAL MX-5 CUP」は、日本仕様の「マツダ・ロードスター」よりも排気量の大きな2リッター直4エンジン(最高出力157ps/6000rpm、最大トルク20.5kgm/4600rpm)を搭載する。 拡大
「マツダ・ロードスター」の開発主査を務めた山本修弘氏は、主査を後進にバトンタッチし、2016年8月から“ロードスターのアンバサダー”になっている。
「マツダ・ロードスター」の開発主査を務めた山本修弘氏は、主査を後進にバトンタッチし、2016年8月から“ロードスターのアンバサダー”になっている。 拡大
「マツダのブランド戦略のひとつとして、クルマに愛着を持ってもらうための方法を2、3年前から模索していました」と語る、執行役員/営業領域統括/ブランド推進・グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当の青山裕大氏。
「マツダのブランド戦略のひとつとして、クルマに愛着を持ってもらうための方法を2、3年前から模索していました」と語る、執行役員/営業領域統括/ブランド推進・グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当の青山裕大氏。 拡大
 
第362回:ロードスターのワールドカップ迫る!マツダ「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」試乗商談会リポートの画像 拡大

ベストバリューなレーシングカー

そのGLOBAL MX-5 CUP仕様車は、アメリカのノースキャロライナにあるロングロードレーシング社で開発・生産されている。「最新のMX-5(ロードスター)はルーツに立ち返った良さと、モダンな技術の採用という、ふたつの顔があります。カップカーは、その良さを生かしている。そこが最も重要なところ」と開発を担当したトム・ロング氏。具体的に言えば、北米仕様の2リッターエンジン車をベースに、BFグッドリッチのスリックタイヤをはじめ、ECUからエキマニ、サスペンション、強化ギアなど、数多くの専用パーツを採用した。
そのチューニングの内容は非常にレベルが高い。聞けばアメリカでのMX-5 CUPは、プロドライバーへの登竜門的な存在であり、トップカテゴリーのIMSウェザーテック選手権のドライバーも輩出しているという。日本で言えばナンバー付きのパーティーレースではなく、スーパー耐久に近いのだ。

「コンセプトは、ベストバリューなレーシングカーです。アメリカには他にもたくさんのワンメイクレースがあります。ただし、ポルシェやランボルギーニなどを使うため、参加費は非常に高額です。それに対してMX-5のカップカーならば半分以下のコストでレースができます。またランニングコストも低く抑えているので、若いレーサーのタマゴの入り口となります」とは開発を担当したトム・ロング氏。耐久性と信頼性を高め、ランニングコストを抑えることで、総コストを低くするのが狙いだという。

日本での販売はキャロッセが担当し、価格は788万4000円。1シーズン戦うなら1500万円くらいの予算が必要だろう。アマチュアの週末レーサーには高額だが、セミプロもしくは、完全なプロであればリーズナブルということだろう。アメリカ発祥のレースイベントということもあってか、年間の賞金総額500万円を用意しているのも特徴的だ。年間エントリーフィーが54万円であるが、フル参戦するとボーナス賞金として25万円が支給されるのもうれしい。日本でも意外とリーズナブルなのではないだろうか。

現在は、アメリカのトップカテゴリーでマツダプロトタイプのドライバーを務めるトム・ロング氏。彼もまた「MX-5 CUP」の卒業生だ。
現在は、アメリカのトップカテゴリーでマツダプロトタイプのドライバーを務めるトム・ロング氏。彼もまた「MX-5 CUP」の卒業生だ。 拡大
レースを前提に仕立てられた、「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のコックピット。バッテリーは小型のリチウムイオン式が採用される。
レースを前提に仕立てられた、「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のコックピット。バッテリーは小型のリチウムイオン式が採用される。 拡大
ダッシュボードには、トランスミッションとデフの冷却用スイッチが設けられている。
ダッシュボードには、トランスミッションとデフの冷却用スイッチが設けられている。 拡大
ダンパーは伸び側と縮み側を個別に調整可能。フロントのスタビライザーも調整式。
ダンパーは伸び側と縮み側を個別に調整可能。フロントのスタビライザーも調整式。 拡大
「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のリアビュー。キャビンを囲むように張りめぐらされた、専用のロールケージが目を引く。
「GLOBAL MX-5 CUP仕様車」のリアビュー。キャビンを囲むように張りめぐらされた、専用のロールケージが目を引く。 拡大

“世界の舞台”への入り口

では、その実際の走りのフィーリングはどのようなものなのか?

「2リッターエンジンのNDロードスターに乗るのは初めてでした。野太いサウンドが迫力ですね。クルマの挙動はつかみやすいのですが、ハイスピード向けのクルマのようですね。勝負するとなると、もっともっと高いレベルで、これを手足のように扱わないといけなくなりますね」とは、モータージャーナリストの藤島知子さん。彼女も真剣に来年度の参戦を検討しているという。

「動きはフォーミュラっぽいですね。硬くてストロークが少なくて、よりダイレクトに動きます。セッティングでものすごくクルマの挙動も変わります。タイムを詰めていくと、どんどん難しくなるでしょうね。またタイヤは、ものすごいロングライフです。1時間、走らせてみても、あまり摩耗しませんでしたよ」というのは、この日のイベント用に日本でセッティングを行った加藤彰彬氏。ロードスターのパーティーレースでは常勝を誇った人物だ。

「スピードレンジが高い」という意見はあちこちから出た。筑波サーキットでいえば、大きな最終コーナーは気持ちよく曲がれるけれど、小さなヘアピンは苦しいというのだ。そこはセッティングの勝負になるのではないだろうか。

ユーザーが独自に変更できるのは、ほぼサスペンション系のセッティングのみ。ドライバーの技量が勝負の決め手になるレースである。腕前を証明したいドライバーにはおすすめだ。
パーティーレースの上のカテゴリーとして、ステップアップの道が開けたのは朗報だ。「なんといっても日本代表になれるんですよ」と山本氏も言うように、世界一決定戦の存在も大きな魅力。日本を飛び出して、世界で活躍するドライバーが生まれる可能性もある。北米と日本だけでなく、欧州、豪州、アセアンと世界中のドライバーが顔をそろえるロードスターのワールドカップ。なんと華やかなプログラムではないだろうか。

(文=鈴木ケンイチ/写真=鈴木ケンイチ、MAZDA / B-Sports)

「パーティーレースは身近なレースだったけれど、GLOBAL MX-5 CUP JAPANは、アメリカへの足がかりとして、すごくおもしろいんじゃないかなと思います。やはりモータースポーツをする人にとって世界はものすごく遠く、大きな壁なので」と、モータージャーナリストの藤島知子さん。
「パーティーレースは身近なレースだったけれど、GLOBAL MX-5 CUP JAPANは、アメリカへの足がかりとして、すごくおもしろいんじゃないかなと思います。やはりモータースポーツをする人にとって世界はものすごく遠く、大きな壁なので」と、モータージャーナリストの藤島知子さん。 拡大
「GLOBAL MX-5 CUP」には、専用ECU、専用エキゾーストシステム、専用オイルクーラー、専用大型ラジエーター、専用強化マウントブッシュが採用されている。
「GLOBAL MX-5 CUP」には、専用ECU、専用エキゾーストシステム、専用オイルクーラー、専用大型ラジエーター、専用強化マウントブッシュが採用されている。 拡大
ロードスター専門ショップ「TCR」の代表である加藤彰彬氏。パーティーレースでは常勝を誇り、現在はスーパー耐久に「ロードスター」で参戦。ニュルブルクリンク24時間レースにもロードスターで参戦した経験を持つ。
ロードスター専門ショップ「TCR」の代表である加藤彰彬氏。パーティーレースでは常勝を誇り、現在はスーパー耐久に「ロードスター」で参戦。ニュルブルクリンク24時間レースにもロードスターで参戦した経験を持つ。 拡大
シートとシートベルトについては、レギュレーション上の指定はなし。トランク内には消火器が設置される。
シートとシートベルトについては、レギュレーション上の指定はなし。トランク内には消火器が設置される。 拡大
 
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鈴木 ケンイチ

鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

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