第7回:新人は整形ブス
2016.09.06 カーマニア人間国宝への道2580万円で“女子アナとの結婚”を決意!
ヒストリック・フェラーリよりも、火を吹く中トロの如きモダン・フェラーリに惹かれ、4年前に10台目のフェラーリとして「458イタリア」を購入したお子ちゃまな私だが、思えば遠くへ来たものだ。
なにせ458イタリアだ。定価2830万円。お高いおクルマでした。
2010年の登場時、あまりにも美しいそのボディーラインと、あまりにも異次元なその走りに心底ひれ伏し、「2000万円を切ったら絶対買ってやる!」と、「大金持ちになって女子アナと結婚してやる!」みたいな男の野望をたぎらせた私だったが、2000万円を切るまで待てず、2012年に2580万円払って嫁にした。当時は周囲から「非富裕層として恐らく世界初の偉業」と称えられた。なんせ2580万円ですから。
そんなお高いおクルマ、いったいどうやって買ったのかと申しますと、実は私、2010年に「カウンタック アニバーサリー」を1500万円で買っておりまして、それを半年後にワインレッドの「512TR」に買い替えたんですがそのお値段が1000万円、「カウンタック」の下取りが1400万円だったので400万円余りました。んで458を買う際512TRの下取りが900万円、余ってた400万円プラス貯金から280万円下ろして680万円差し出し、残り1000万円はローンという寸法です。
自慢の“女子アナ嫁”危うし!
あの時「2000万円を切ったら絶対買ってやる」なんて思ったけど、458イタリアは今でも2500万くらいしている。つまり俺はタダで4年間458イタリアに乗ったようなもん! ウルトラ得したぜ! 人生善は急げですなあ。じゃないと待ってる間にヨボヨボになっちゃうから!
いずれにせよ、すべての基本は節約。これに尽きる。じゃなきゃ非富裕層にフェラーリが買えるわけがない。フェラーリ買おうと思ったら大金持ちになるか節約するか、2つの道しかない! 大金持ちになるのは大変だけど節約は誰でもできる。これは不動の真理である。
そのようにして、世界初の偉業として購入した458イタリアなわけだが、ご存じの通り先般モデルチェンジしてしまった。
ショックであった。
いや、いつかモデルチェンジするのは当たり前の話。いつか女子アナも年を取る。いつか大金持ちも死ぬ。いつか458イタリアも旧型になるのである。カーマニア人間国宝を目指す者がそんなこともわからんのか!
であるが、人間とは愚かなものである。
ピニンファリーナは錦の御旗
つまりそれは、自分のもらった自慢の女子アナ嫁が、年を取って新人アナに取って代わられたようなもの。いつか来るとわかっていても、なにせ男の野望のすべてをかけた自慢の嫁なのでショックなのである。
その時、人間はどうなるか。
新人いびりである。新人のあらを探してあーだこーだ文句を付ける。これは人間としてごく自然な行為であり、当然の権利とも言えるだろう。
私が真っ先につけた文句はこれだった。
「ブスじゃん! 整形じゃん!」
一般の皆さまには見分けすら付かないかもしれないが、私には激しくそう見えたし、錦の御旗もあった。それはピニンファリーナデザインというかなり最強な旗だ。
458イタリアまではピニンファリーナだが、「488GTB」はフェラーリ内製デザインでピニンファリーナのエンブレムは付かない。しかも、「488」のデザインは「458」をベースにしていることは明らかであり、整形というのもまったくの真実。
つまり、こういうことになる。
「かの聖ピニンファリーナ様最後の大傑作である458を下敷きに、ヘタクソなド新人が整形かましてブスにした488GTBがチヤホヤされるなんざ超ムカつく!」
誰が聞いても完璧に納得の事実だろう。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ 2026.10.12 清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第345回:10秒ごとの快感 2026.9.28 清水草一の話題の連載。実に16年ぶりのフルモデルチェンジとなった日産の新型「エルグランド」が狙うのは、圧倒的な強さを誇るトヨタのミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」の牙城だ。早速、首都高でエルグランドの走りを確かめた。
-
第344回:アンパンマンよりばいきんまん 2026.9.14 清水草一の話題の連載。メルセデス・ベンツの新型「CLAシューティングブレーク」が気になってしかたがない。理由はその特徴的なフロントフェイス。左右の目玉(ヘッドランプ)がつながったデザインがたまらない。果たして実車の印象は?
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。