ホンダNSX(4WD/9AT)
ここから歴史が始まる 2016.09.09 試乗記 3.5リッターV6ツインターボエンジンと、3つのモーターからなる「スポーツハイブリッドSH-AWD」を搭載した新型「ホンダNSX」。こだわりの車体構造とライバルとはまったく異なるパワーユニットが織り成す走りを報告する。卓越したシャシーバランスがかなえる走り
鈴鹿サーキット前半のハイライトであるデグナーカーブを駆け抜けてフル加速。パドルをはじいて3速へとシフトアップしたときに、新型NSXの素晴らしさを心から実感した。
これだけ安心して“SUZUKA”を走れるスポーツカーは、なかなかお目にかかれない。
この安心感をもたらす最も大きな要因は、重心の低さだと思う。75度のバンク角を持つ3.5リッターV6ツインターボは、ブロック下にオイルパンを持たないドライサンプ方式によって、車体の一番低い位置に搭載されている。3つのモーターを稼働させるバッテリーとコンバーター(インテリジェント・パワーユニット)も、床下ではなく斜めに立てかけられてはいるものの、ドライバーズシートの直後、ホイールベースのなるたけ内側の、低い位置に配置されている。
これはまんま、レーシングカーの造りである。
だから新型NSXは、クルマがロールしてもリアタイヤがビタッと路面を捉え続けてくれる。安心してミドシップならではのコーナリングを楽しむことができる。そしてこれこそが、FF車から流用した横置きエンジンをミドシップした初代NSXと、明らかに違う点である。
エンジンパワーは507ps。ここにドライブモーター(48ps)と、フロント用モーター(37ps×2)を合わせたシステム全体での最高出力は581ps。これは「マクラーレン570S」(570ps)や「ポルシェ911ターボS」(580ps)に比肩する数値だ。しかしEVユニットを搭載するぶん車重も1780kgと重たく、その加速は圧倒的とは言いがたい。
またその重さに抗すべき多段のトランスミッションも、9段全てを使い切って走るようなクロスレシオにはなっていない(エンジニアはこれに筋道立てた理由を用意していたが、それはまた別の機会に)。
また、そのつながり方もライバルと比べて緩慢で、ポルシェのように雑ではないが、アウディに比べればまったくもってツメが甘い。
ミドシップの車体を安定させ、オンザレールなハンドリングをもたらすとされるトルクベクタリングも、限界領域では操縦性の難しさが顔を出す。具体的には、内輪には逆方向のトルクが生じて、カウンターを切った方向へノーズがすっ飛んでしまう。だからそうならないように、ドライバーはフロントタイヤに駆動をかけ続けなければならない。
それでも新型NSXは、流儀にのっとった運転をしさえすれば、前述したシャシーバランスの良さで、フォーミュラカーのごときピュアな走りを披露してくれる。またライバルに先んじて、いち早くモーターを動力性能向上のために投入した姿勢も、大いに評価できる。
だから新型NSXは、これっきりで終わってはいけない。2370万円という価格をして「もうけは度外視」というのならば、そのバッテリーを小型化して車両重量を減らし、モーターの出力を上げて次世代の加速を得られるまで進化し続けなければならない。まだまだ未熟な部分を、研ぎ澄ませなくてはならない。
それはまるで、初代「プリウス」が誕生したときに非常に似ていると筆者は感じた。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)
【スペック】
全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm/ホイールベース=2630mm/車重=1780kg/駆動方式=4WD/エンジン=3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ(507ps/6500-7500rpm、56.1kgm/2000-6000rpm)/フロントモーター=交流同期電動機(37ps/4000rpm、7.4kgm/0-2000rpm)×2/リアモーター=交流同期電動機(48ps/3000rpm、15.1kgm/500-2000rpm)/燃費=12.4km/リッター(JC08モード)/価格=2370万円
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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