ポルシェ・パナメーラ ターボ(4WD/8AT)/パナメーラ4S(4WD/8AT)
スポーティーとラグジュアリーの融合 2016.09.22 試乗記 ポルシェの新型「パナメーラ」にドイツ・ミュンヘンで試乗。新機軸の投入により、さらなる高みに達した“4ドアスポーツカー”の実力を探った。すべてが新しい
この先、フォルクスワーゲングループ内のさまざまなブランドで活用していくことを前提に、ポルシェが責任をもって開発を担当。アルミニウム材の使用部位を増し、マルチマテリアル化も進めて、強靱(きょうじん)さとともにさらなる軽量化も追った新骨格“MSB”を初採用の上で、パワーユニットやシャシー/サスペンションなども新規に開発――こうして、まさに「すべてが新しい」と紹介できる初のフルモデルチェンジを受けたパナメーラの概要は、ワークショップで得た情報を中心に、すでに本サイト上でもお伝えした通りだ(関連記事はこちら)。
そんな新型パナメーラを、いよいよ自身で試せる機会がやってきた。
国際試乗会は、国際空港を発着点としたドイツ南部のミュンヘン近郊がその舞台。思い返せば、本社主催による試乗イベントは、以前からなぜかこの近辺が好んで用いられてきたものだ。
テストドライブに用意されたのは、「ターボ」に「4S」、そして「4Sディーゼル」という、いずれもツインターボ付きのエンジンに4WDシャシーを組み合わせた、現時点で発表済みのすべてのグレード。
ただし、プログラムのタイトな時間設定と「日本には導入の予定ナシ」ということから、“世界最速ディーゼルサルーン”を豪語する4Sディーゼルには、指一本触れることができなかったのは何とも残念だった……。
911とのつながりを強調
ワークショップのリポートでも触れたように、そもそも全長が5m、全幅が1.9mを超えていた大柄なボディーのサイズは、従来型と比較して特に大きくは変更されていない。
それでも、新旧を比べれば「よりスタイリッシュになったナ」という印象を覚える。その理由は、30mmとやはりわずかに延長されたホイールベースが「フロントオーバーハングを短縮し、リアは延長する」という方向で消化されたことに加え、“フライライン”と称する後ろ下がりのルーフラインの後端をより下方まで引っ張り、同時にリアのフレアショルダーをより強調するなど、すべてのポルシェ車の根幹に当たる「911」とのデザインの共通性を、より強くアピールする方向でリファインされたからでもあるだろう。
実際、隊列を組んでアウトバーンを進んで行くと、前を走る新型パナメーラのルックスは、なるほど911の雰囲気と強くダブって目に映った。デザインチームが取り組んだリファインの成果は、まずは大成功ということになるわけだ。
911ならではの特徴である前述のようなディテールに加え、やはり最新911との共通性をイメージさせる、薄型のリアコンビネーションランプ間を結ぶ黒いストリップライン上にレイアウトされた、3D造形の“PORSCHE”のバラ文字ロゴも、最新ポルシェ車に共通するデザインのひとつだ。
端的に言って、ポルシェのスポーツカーとしての純血度をより高める方向へとリファインされたのが新型――今度のパナメーラのエクステリアデザインには、そんな雰囲気が確かに漂っている。
“新興モデル”ゆえの宿命?
これだけ大柄なサイズの持ち主ゆえ、当然居住性に大きな不満が発生するわけもない。キャビン空間はゆとりに溢(あふ)れた、プレミアムセダンらしい上質で快適な仕上がりというのがその第一印象だった。
前述したルーフのフライラインに合わせて、十分なヘッドスペースを確保するべく、後席ヒップポイントはやや落ち込み気味の設定。そうしたパッケージングのスタンスには、正統派のセダンというよりはいわゆる“4ドアクーペ”の風味を感じさせられるものの、それでも大人4人が長時間を過ごすのが苦にならない、余裕ある空間の広がりは十分に実感できた。
好みは分かれるかもしれないが、クラスター内の中央に位置するタコメーターにのみメカ式のアイテムを採用し、その左右にカラーディスプレイを配することで、基本状態では911同様の“5眼式メーター”を装うとともに、必要に応じてナビゲーションマップを含むさまざまな情報を映し出せるようにしたのは、個人的にはなかなか優れたアイデアと好意的に受け取った。
一方で、ダッシュボード中央部の大型ディスプレイと、“ブラックパネルコンセプト”をうたうセンターコンソール部の操作系には、大きな疑問を抱かざるを得なかった。
そもそも、「スマホライク」をターゲットとしたという触感を伴わないセンターディスプレイの操作性は、ブラインド操作を目指していない時点で自動車用アイテムとしては失策と思う。空調ルーバーの吹き出し方向調整を、コンソール上のタッチスイッチ操作へと置き換えてわざわざ使い勝手を悪化させている点なども、甚だポルシェらしくないと感じざるを得なかった。
こうして、ある種“好まざる流行”をも追わなければ立ち行かないのは、新たなる顧客層をターゲットとして取り込まなければならない“新興モデル”ゆえの宿命ということなのか? 一見、新奇性に富んだスタイリッシュな操作系のデザインには、残念なことにそんな思いが拭い去れなかった。
スーパーカー級の動力性能
効率を高め、CO2排出量を削減させながらパフォーマンスは向上させるという、昨今のポルシェが提唱をする“インテリジェントパフォーマンス”の思想――それが新型パナメーラの心臓部にも息づいていることは、さまざまな新旧スペックを見比べれば明らかだ。
“現時点では”というフレーズに、この先の発展性を予感させられるトップパフォーマンスの持ち主、パナメーラ ターボの動力性能は、端的に言って「あきれるほど」の水準にある。
スタートの瞬間からまさに強力無比。「150km/hから再度の発進加速が味わえる!」と表現しても過言ではないほどのパフォーマンスは、まさに“アウトバーンの王者”そのものだ。標準仕様で3.8秒、オプションの「スポーツクロノパッケージ」を選択し、ローンチコントロールシステムを用いての“カタパルト発進”にトライをすれば、さらにコンマ2秒短縮されるという0-100km/h加速のデータは、もはや100%スーパーカー級。
一方で、わずかな燃料も節約をするべく、エンジン/トランスミッションには4気筒休止やコースティングといった制御が絶えず介入する。が、現実にはそんな複雑なことが行われていることを一切体感させない、見事な仕上がりではある。
ただし、高級セダンとしての価値観からすると、微低速時にわずかに尖(とが)った加減速Gを発するDCTに、「ここばかりはステップATの方が上手だな」という印象を抱かされることにもなった。
そんなパナメーラ ターボに比べると、シリンダーボアを1.5mm減じた上で2気筒をカットしたV6ユニットを搭載するパナメーラ4Sの動力性能が、「ややおとなしく」感じられることは事実。
が、それでも0-100km/h加速は4秒台前半でクリアしてしまうのだから、当然こちらも絶対的なパフォーマンスは文句なし。サウンド面も、8気筒のパナメーラ ターボに“聞き劣り”はするものの、それでも日本での走りの環境を考えれば「こちらの方がまだ身の丈に合ったもの」と思えるのも間違いない事柄だった。
完成度の高いエアサス
骨格が新しくなった新型パナメーラでは、それに組み合わせるシャシー/サスペンションもすべて一新されている。ちなみに、今回の試乗会に用意されたのはすべてが4WDモデル。「新型は、4WDがデフォルトという考え方なのか?」との問いに対し、担当エンジニア氏の回答は「全エンジンがターボ付きとなり、トルクが大幅に増強されているので、答えは“YES”」というものだった。
ところで、まさに“テクノロジーショーケース”のごとくさまざまな新メカニズムが用意された中にあっても、特に自信をもって力説されたのが、これも完全新開発というエアサスペンション。それを裏付けるように、今回はすべてのテスト車両にそれが装着されていた。本来の設定は、ターボには標準採用で、4Sにはオプションとなる。
各輪用のストラットすべてに贅(ぜい)を尽くした3チャンバー方式を採用し、「空気量が約60%増加」と報告される新システムでは、当然その分スプリングレートの変動幅も大きく取れるという理屈。実際、コンフォートモードでのゆったりとした乗り味は、これまで自身で経験の記憶がないほどのロードノイズの小ささとも相まって、「何とも上質で高級なクルマに乗っている」というテイストを、余すことなく味わわせてくれた。
一方で、2つのグレードと3台の個体に乗って、そのいずれでも感じられたのが、「ポルシェ車としては、ステアリングフィールやその正確性、そして超高速時の安定感などがまだ物足りないかな」という印象。
実は、“ポルシェの作品”ゆえ、こちらが抱く走りの期待値が飛び切り高いものとなってしまったのも一因であることは自身にも分かっている。
が、これまでもポルシェ発の作品の多くが、そんな要求にも応えてきてくれた。だから、今回抱いたそうした小さな不満も、きっと遠からず解決されることと信じている。
圧倒的な動力性能と驚くべき快適性を、4ドア+フル4シーターのパッケージングに融合させた新型パナメーラ。それはまさに、創業以来の積年の夢をかなえるべく生み出された最新作。そこでわずかにでも手抜きをすることなど、もちろんこれっぽっちも考えられないのである。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ)
テスト車のデータ
ポルシェ・パナメーラ ターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1427mm
ホイールベース:2950mm
車重:1995kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:550ps(404kW)/5750-6000rpm
最大トルク:78.5kgm(770Nm)/1960-4500rpm
タイヤ:(前)275/40ZR20/(後)315/35ZR20
燃費:9.4-9.3リッター/100km(約10.6-10.8km/リッター、欧州複合モード)
価格:2327万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ・パナメーラ4S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
ホイールベース:2950mm
車重:1870kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:440ps(324kW)/5650-6600rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1750-5500rpm
タイヤ:(前)265/45ZR19/(後)295/40ZR19
燃費:8.2-8.1リッター/100km(約12.2-12.3km/リッター、欧州複合モード)
価格:1591万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。





























