シトロエンC4フィールBlueHDi(FF/6AT)
本命は遅れてやってきた 2016.10.20 試乗記 PSAグループの最新ディーゼルエンジン、BlueHDiを搭載する「シトロエンC4」に試乗した。フランスではディーゼルが乗用車用パワーユニットの主役。遅れてやってきた“本命”は、日本の交通環境下でいかなる走りを見せるのだろうか。1.6リッターディーゼルを搭載
2010年に本国で発売され、日本にも翌11年に導入された現行型シトロエンC4だが、はっきり言ってその存在を忘れていた。思い出したのは15年夏。マイナーチェンジがあり、エンジンが、長らく使われてきたBMWと共同開発の1.6リッター直4および同ターボから、PSAオリジナルの1.2リッター直3ターボへと、トランスミッションがロボタイズド6段MTからコンベンショナルな6段ATへとそれぞれ変更された。この1.2リッターエンジンが優れもので、3気筒のくせに振動が少なく、静かで、十分なパワーがある。これを機にC4の印象がかなり向上した。
だが、本命の仕様は1年遅れでやってきた。待望のディーゼルエンジン搭載モデルが追加されたのだ。この夏、プジョー、シトロエン、DSのPSA各モデルの日本仕様に一気に1.6リッターと2リッターの直4ディーゼルターボエンジンが幅広く採用された。C4には1.6リッター版が載る。トランスミッションは1.2リッターガソリンモデルと同じ6段AT。フランスを走るフランス車は半分以上、感覚的にはほとんどがディーゼルだ。ようやくフランスを走っているようなフランス車に日本で乗ることができるようになったということになる。
ガソリン車のように粛々と
試乗日の朝、曇天のビル街に溶け込むボディーカラー(グリ スピリット)のシトロエンC4を見て思った。なんて地味なんだろう。いや地味というのは決してdisっているわけではなく、なんの気負いもなく、遠慮なく使えそうだなという褒め言葉。洗わなくても汚れが目立たなそうという意味で実にフランス車っぽい。現行C4の全長4330mm、全幅1790mm、ホイールベース2610mmというサイズはCセグメントとして標準的で、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の同4265mm、同1800mm、同2645mmに非常に近い。日本で、というかどこでだって一番使いやすいサイズだ。この中に大人4人(定員は5人)とそこそこ荷物を飲み込むスペースが確保されている。
都内から横浜へ向けて走らせる。1.6リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力こそ120ps/3500rpmと控えめながら、最大トルクは30.6kgm/1750rpmとディーゼルターボらしく豊かだ。1750rpmで30.6kgmということは、発進直後にエンジン回転が最もおいしいゾーンに達するわけで、実際、発進直後から力強く加速する。小排気量ディーゼルターボ特有の反応遅れはその特性上どうしても存在するが、すぐにそれを見越した運転ができるようになる。
最も得意とするのは高速巡航で、すいた首都高横羽線の流れであれば2000rpm未満で粛々と巡航することができる。その速度域では非常に静か。運転していなければガソリンかディーゼルかわからないのではないか。
プジョー308と比べてみると……
同時期に同じディーゼルエンジンが搭載された「プジョー308」とC4を比べてみると、13年秋に新しいプラットフォームで発売された308のほうが、10年発売のC4よりもあらゆる面で新しく、優れている。車重はC4が40kg重いだけなのだが、308のほうがあらゆる挙動が軽快で、体感的なボディー剛性も高い。308にはアクティブ・クルーズコントロールが付き、ヘッドランプもHIDだったりと、先進的な装備にも差がある。
一般的な尺度ではそういう評価になるはずだ。けれども、C4の大ぶりでちょうどいい柔らかさのシートに身を委ね、径が大きくゴムをねじるようなフィーリングのステアリングホイールをぐるぐる回しておうようにクルマの向きを変えながら、最新ディーゼルエンジンの豊かなトルクを味わうドライビングも決して悪くない。速度が低いとハーシュが伝わってくるが、乗り心地は全体的にソフト。インテリアに目を向ければ、オートバックスで特価で売られてそうなオーディオデッキが1DINに収まっているが、最近はどうせBluetoothで飛ばしてスマホに入った音楽を聴くんだからこれでも問題ないはずだ。テスト車にはデッキの上にオプションのカーナビが付いていたが、あまり使いやすいタイプではないから僕ならこれは付けない。スマホの地図機能に頼ろうじゃないか。
なかなかいいとこ突いてくる
要するにC4はエンジン以外は古いのだ。けれど古くからのシトロエンファンは、不満だったのはパワートレインぐらいで、あとはおおむね気に入っていた。そこへもってきて、ついに悲願の最新ディーゼルエンジンとよくできたATの組み合わせを選べるようになったのだからこれ以上の福音はない。
プジョー308は新しいが、10年たったら古くなる。C4はもう古いから10年たっても印象は変わらない。今度買うクルマはひとつ長く乗ってやろうと考えているなら、そしてその人がしょっちゅうロングドライブをするから経済性も大事というなら、C4ディーゼルは候補に含めるべき一台だと思う。279万円というのは輸入車のディーゼル車としては最安。なかなかいいとこ突いてくるな。
(文=塩見 智/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
シトロエンC4フィールBlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1790×1490mm
ホイールベース:2610mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 SOHC 8バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:120ps(88kW)/3500rpm
最大トルク:30.6kgm(300Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91H/(後)205/55R16 91H(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:20.2km/リッター
価格:279万円/テスト車=309万8728円
オプション装備:メタリックボディーペイント(グリ スピリット)(5万9400円)/SDメモリーカーナビゲーションユニット(19万7640円)/DVD+CDチューナー(4万1428円)/ETC(1万0260円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:465km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:175.9km
使用燃料:11.6リッター
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/14.0km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。































