第379回:日本一、GT-Rを販売する男がそこにいる!
日産ハイパフォーマンスセンター・亀戸店に潜入取材した
2016.11.21
エディターから一言
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「日産GT-R」はどこで買えるのか知っていますか? 日産のディーラーと答えた方は、ほぼ不正解。実はGT-Rは日産ディーラーの中でも限られた店舗「日産ハイパフォーマンスセンター(NHPC)」でしか購入することができない。われわれ取材班は、そのNHPCの実態を探るべく、日産プリンス東京・亀戸店に(許可を得て)潜入した。
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日産ディーラー全体のわずか5%未満
NHPCとは、GT-Rの販売・メンテナンスが行える、日産が認定した店舗のことである。2016年11月現在、日本国内に日産ディーラーは約2200店舗あるが、その中でNHPCに認定されているのは166店舗。この中にはメンテナンスのみを行う店舗も含まれており、現在GT-Rを販売可能なのはわずか103店舗に限られる。全体の5%にも満たないエリート店舗なのである。では、どうすればNHPCに認定されるのか。そこには3つのハードルがある。
1つ目は“GT-Rの最新モデルが常設されていること”。展示車のほかに必ず試乗車がなくてはならず、GT-Rのパフォーマンスを体感してみたいというユーザーがいれば、いつでもその声に応えられる態勢になければならない。
2つ目は“GT-Rマイスターが所属していること”。GT-Rマイスターとは、特別なトレーニングを受け、GT-Rの販売を許可された人のことで、日産販売網のセールスマン(日産ではCA=カーライフアドバイザーと呼ぶ)約1万7000人の中に166人しか存在しない。まさにマイスターである。
GT-Rマイスターになるためには、まず研修を受ける必要がある。研修は1週間ほどの泊まり込みで行われ、開発責任者による講義や、開発データの詳細などの座学、試乗などのメニューがある。その後に試験が行われ、合格すれば晴れてマイスターの仲間入りという運びとなる。ただ、イヤーモデル制をとるGT-Rは毎年進化を続けているため、マイスターといえども、知識をアップデートさせ続けなければならない。勉強を怠るとGT-Rの販売資格を喪失してしまうのだという。
3つ目は“高精度なサービス機器が設置されていること”。高精度なアライメントテスターや、車両状態記録装置読み出しツール、窒素ガス充てん装置などが求められ、時にサーキット走行なども行う、GT-Rに最適なメンテナンスを提供できる、整備工場が設置されていることが必要になる。
日本一GT-Rを売る男
2016年11月18日、NHPCのプレス向け取材会のため、われわれ取材班は日産プリンス東京・亀戸店へ。NHPCの要件を満たす、17MYの「GT-Rプレミアムエディション」が2台置かれている。そして、ここに“日本一GT-Rを売る男”がいる。
その男とはNHPC亀戸店 営業課 課長の平山知之氏。GT-Rマイスター歴9年、御年51歳。“売らんかな!”のムードはまるで感じさせない、穏やかな雰囲気を持った方である。平山氏は2014、2015年度とGT-Rの販売台数が全国1位、通算で150台近いGT-Rを販売してきたという。全国のGT-Rマイスターの販売台数が年平均6.4台と聞けば、平山氏のすごさがおわかりいただけると思う。
平山氏はこの仕事のやりがいを「成功者や経営者、住む世界が違うお客さまと接することができること」だという。確かに、GT-Rはいまやスターティングプライスで約1000万円、スーパー富裕層向けの商品だ。平山氏の担当するお客さまの中には、初期型GT-R→GT-RスペックV→GT-Rブラックエディション→GT-R NISMO 15MY→GT-R NISMO 17MYと乗り継いでいる人もいるという。あやかりたいものである。
また、平山氏はたくさん販売するコツを「カタログを読むだけではわからないすごさや、開発秘話などを話してあげること」だと語る。率直にいって、取り立ててすごい変化球ではない。むしろ直球だ。それは、僕のような記者にも熱意を持っていろいろと教えてくれる、平山氏の人柄があってのテクニックだと思う。“日本一GT-Rを売る男”は、いい人だった。
NHPC亀戸店にはGT-Rマイスターがもう一人いる。元整備士という経歴を持つ坂本孝博氏である。坂本氏は現在32歳、昨年11月に念願のGT-Rマイスターの座を射止めた新米(新マイ!?)である。とはいえ、すでに17MYモデルを3台も販売するという敏腕ぶりを発揮している。坂本氏にGT-Rを買い求めるのはどんな人が多いか聞くと「GT-Rというブランドに憧れを持ったお客さまが多い」と話した。その一方で、「憧れだけでは維持することの難しい高額車なので、お金の話もきっちりする」という。確かにGT-Rのタイヤを4本取り換えたら数十万円はくだらない。自動車保険料なども他車と比べたら高額だ。実際、過去には想像以上の維持費の高さに耐えかねて、GT-Rを手放してしまったユーザーもいたという。このあたりの誠実さは、先輩マイスターの平山氏ゆずりという感じがする。
アライメント角度のズレは1度以下
ロケーションが変わって、同じ敷地内にある整備工場へ。この日は2台のGT-Rが入庫しており、そのうち1台は新車2000km点検中の、最新のGT-R NISMOである。ここで解説してくれるのは整備士の小野弘幸氏。GT-Rを整備することが許される、「GT-R認定テクニカルスタッフ」に認定されている。
小野氏は他のクルマの点検・整備と並行して、1日1台くらいのペースでGT-Rのメンテナンスにあたる。ほとんどは定期点検や車検時の整備だが、中には、サーキット向けのセッティングと、再び街乗り用に戻すという依頼を短期間に繰り返すようなユーザーもいるのだとか。さすがGT-R、富裕層の行動は読めない。
ここで、入庫中のGT-R NISMOのアライメントチェックが始まった。NHPCに必須の、高精度アライメントテスターのお出ましである。このテスターは、まず車体前方の左右に高さ3mほどのポールを立て、その後4輪すべてにセンサーを装着。するとポールに付いた機械が無線でアライメントの状態を読み取り、モニター画面に数値を表示するという仕組みとなっている。アライメントを調整するたびにリアルタイムでモニターの情報が更新されるという、便利なシステムなのだ。実際、以前は半日がかりだったアライメント調整が、今では1時間ほどで済むようになったという。とはいえ、GT-Rにはアライメント角度のズレの許容範囲が1度以下という精密さが求められる。測定は機械に任せられるといっても、1度以下に調整する技量が人間によるべきものである以上、非常に神経のすり減る作業だと思う。GT-Rが元気に街を走り回れるのは、こうしたスタッフのおかげなのである。
信頼できるスタッフによる販売と、信頼できるスタッフによるアフターサービス。この2つが高い次元で結びついているのがNHPCである。オーナーにとっては、すごく心強い存在に違いない。高額車の購入・保持には、取り巻く環境が整備されていることも大切なんだなあとしみじみ考えた。取材を終えて去り際、平山氏に「今度はお客として来ます」とベタな冗談を言ったら、「お待ちしております」と満面の笑みで返されてしまった。
(webCG 藤沢)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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