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第384回:大矢アキオ&清水草一
イタリアを愛する2人が、知られざるイタリア事情について語り合う
「アモーレ! イタリア」(前編)

2016.12.10 エディターから一言 清水 草一
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レモンの花咲く国、イタリア

清水草一(以下「清」):大矢さん、以前からお会いしたかったんですよ!

大矢アキオ(以下「大」):それは光栄です(笑)。

清:なにせこちとら、イタリア車を愛していながら「伊太利は遠くにありて思うもの」じゃないですか……。何年に一度か訪伊してレンタカーで走って、香りの一端を嗅いでますけど、生のイタリア自動車生活を日本語で伝えてくれる大矢さんの連載は、霊界通信みたいなもんです!

大:(笑)私も、スイスやオーストリア側からアルプスを越えてイタリアに入った時に感じるあの太陽の色、花や食の違い。それらのとりこになって、「ここが新しい人生を歩むべき国だ!」と思いましたから。最初陸路でイタリアに入ったので、そのすばらしさがよくわかりました。

清:それは文豪ゲーテと同じですね!?

大:そうです。まさに「レモンの花咲く国」です。ただ実際住むと税金高いですけどね~。まず消費税が22%。クルマにも全部これがかかります。

清:租税負担率を調べると、イタリアは45.1%。日本は24.1%ですね。日本の自動車ユーザーは、「日本はクルマにかかる税金が高すぎる!」って言いますけど、実はうその面もある。確かに保有税は高いけど、燃料税は安いし消費税率も低い。

大:フツーのイタリア人は高いクルマなんか絶対買えませんから。

初対面での対談となったが、「アモーレ!」ポーズで打ち解けるお二人。
初対面での対談となったが、「アモーレ!」ポーズで打ち解けるお二人。拡大
当サイトの長寿連載「マッキナ あらモーダ!」でおなじみ、コラムニストの大矢アキオ氏。イタリア在住20年、ヨーロッパのクルマ事情をよく知る人物として各メディアで活躍中。
当サイトの長寿連載「マッキナ あらモーダ!」でおなじみ、コラムニストの大矢アキオ氏。イタリア在住20年、ヨーロッパのクルマ事情をよく知る人物として各メディアで活躍中。拡大
当サイトで「カーマニア人間国宝への道」を連載するモータージャーナリストの清水草一氏。現在は「ランチア・デルタ1.6ディーゼルターボ」ほか「フェラーリ458イタリア」を所有するなど、これまでに買ったイタリア車は18台。
当サイトで「カーマニア人間国宝への道」を連載するモータージャーナリストの清水草一氏。現在は「ランチア・デルタ1.6ディーゼルターボ」ほか「フェラーリ458イタリア」を所有するなど、これまでに買ったイタリア車は18台。拡大

維持費の高さがまねく、独特のクルマ事情

大:それとイタリアは自動車保険料が高いんですよ。都市によって違うんですけど、南の方は盗難率が高いので、例えばナポリ市内在住の若者だと、車両保険も付けるとフツーのクルマ、「フィアット・パンダ」とかで年間50万円くらい取られたりします。

清:げえっ! それじゃクルマに乗れないじゃないですか!

大:深刻な社会問題になってます。公共交通機関があまりなくて、クルマは不可欠ですからね。

清:日本の地方と同じですよね。でも日本には税金も保険料も安い軽自動車がある。恵まれてるんですよね!

大:イタリアには軽はないので(笑)、とにかく安く乗れるクルマとして、いまだに「アウトビアンキY10」や初代フィアット・パンダが隠れた人気中古車なんです。

清:それってえーと、最低でも20年くらいたってますよね!?

大:それを直し直し乗るんです。

清:絶対故障しない軽が安く乗れる日本はやっぱり恵まれてるなぁ~。でもイタリアでは、フツーの人がディープなカーマニア的クルマ生活をいや応なく送ってるわけで、そういう意味で日本は不運とも言えますかね?(笑)

大矢氏が語るイタリアのクルマ事情に、思わず前のめりになる清水氏。話は大いに盛り上がり、気づけば予定時刻を大幅に過ぎてしまっていた。
大矢氏が語るイタリアのクルマ事情に、思わず前のめりになる清水氏。話は大いに盛り上がり、気づけば予定時刻を大幅に過ぎてしまっていた。拡大
「アウトビアンキY10」は1985年から1994年まで販売されたハッチバック車。イタリア国外の多くのマーケット(日本を除く)では「ランチアY10」の名で販売された。「ランチア・イプシロン」の前身でもある。
「アウトビアンキY10」は1985年から1994年まで販売されたハッチバック車。イタリア国外の多くのマーケット(日本を除く)では「ランチアY10」の名で販売された。「ランチア・イプシロン」の前身でもある。拡大
初代「フィアット・パンダ」は1980年から2003年まで販売された。
初代「フィアット・パンダ」は1980年から2003年まで販売された。拡大

フェラーリはイタリアの誇り

清:ところでイタリアでは、一時国産車(イタリア車)はダサいものになって、ドイツ車人気が高まったんですよね?

大:EU内の貿易自由化で輸入枠が撤廃されて、そこにフィアットの経営危機が重なって、フィアットがフィアットらしさを失った時期、イタリアでもドイツ車に乗るのがクールになりましたね。でも2007年に「フィアット500」が出て、今は若い世代に国産車は人気ありますよ。若い人たちはフィアットがダサかった時期を知りません。

清:それはよかった!(笑)

大:オペルは「アダム」っていう“なんちゃってフィアット500”を出しましたけど、それはまったく人気ないです。

清:え、アダムって知らなかった。そんなんがあったんだ。あとはフェラーリですけど、日本では私はじめマニアの間で、「488」がターボ化されて、しかもデザインからピニンファリーナを外したことへの反発があるんですけど!

大:フェラーリはイタリアの誇りで、フェラーリはフェラーリ、それだけで崇拝の対象ですから、そういう話は一切聞かないです(笑)。日本のエンスージアストは本当に勉強家ですよ。それはフェラーリ本社の人も言ってます。とにかく詳しいって。

清:つまり、そんな細かいこと言ってるのは日本人ぐらいってことですかね!?

大:でしょうね。特に新興国のユーザーはフェラーリというだけで満足します。日本市場はそこがまったく違います。

清:それはまあ、日本人として誇っていいのかな?(笑)

<後編に続く>

(語り=大矢アキオ&清水草一/まとめ=清水草一/編集=大沢 遼)
 

2007年に登場した3代目「フィアット500」。
2007年に登場した3代目「フィアット500」。拡大
2012年に発表された「オペル・アダム」。車名はオペルの創業者の名前にちなんでいる。
2012年に発表された「オペル・アダム」。車名はオペルの創業者の名前にちなんでいる。拡大
「フェラーリ488GTB」
「フェラーリ488GTB」拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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