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BMW 120iスタイル(FR/8AT)

エンジン工場の心意気 2017.01.28 試乗記 生方 聡 「BMW 1シリーズ」に、新たに2リッター直4ガソリンターボエンジンを積んだ「120i」が登場。“バイエルンのエンジン工場”が送り込んだ、新世代モジュラーエンジンのフィーリングを確かめた。 

大胆不敵な進化を遂げる

約30年の愛車遍歴を振り返ると、その半数がコンパクトなハッチバックという私。“EP71”と呼ばれる3代目「トヨタ・スターレット」に用意されたモータースポーツ向けベース車両「3ドアRi」に始まり、この分野のグローバルスタンダードである「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や、プレミアムコンパクトの「アウディA3」、さらには「フォルクスワーゲン・ポロ」、「アウディA1」といった13台のハッチバックが、過去の愛車リストに並んでいる。

ハッチバックを選ぶのは、スポーティーなデザインに加えて、コンパクトなサイズでありながら必要十分な室内空間と機能的なラゲッジスペースを備えることに大きな魅力を感じているからで、きっとこれからもハッチバックを乗り継ぐことになるだろう。

そんなハッチバック愛好家にとって、BMW 1シリーズは特異な存在だ。これまでともに過ごしたハッチバックはすべてFFであり、私の中ではハッチバック=FF2ボックスである。ところがBMW 1シリーズは、2004年のデビュー以来、FRのレイアウトを守り続けているのだ。後輪駆動と50:50の前後重量配分により「駆けぬける歓び」を提供してきたBMWのこだわりが、この1シリーズにも凝縮されているというわけである。

ハッチの異端児である1シリーズの現行型は、2011年に登場した2代目“F20”型のマイナーチェンジ版で、日本では2015年5月に販売がスタートしたものだが、それからわずか1年半でラインナップが激変! なんとも大胆不敵な進化を続けているのだ。

「BMW 120i」は、2016年11月の改良で、エンジンが1.6リッターターボから、2リッターターボに置き換えられた。
「BMW 120i」は、2016年11月の改良で、エンジンが1.6リッターターボから、2リッターターボに置き換えられた。拡大
FFレイアウトが大多数を占める小型ハッチバック車でありながら、「BMW 1シリーズ」はデビュー以来、FRを守り続けている。
FFレイアウトが大多数を占める小型ハッチバック車でありながら、「BMW 1シリーズ」はデビュー以来、FRを守り続けている。拡大
試乗車にはオプションの電動ガラスサンルーフが装着されていた。
試乗車にはオプションの電動ガラスサンルーフが装着されていた。拡大
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最新のモジュラーエンジンを搭載

実は2016年11月までに、1シリーズに当初用意されていたエンジンが総入れ替えとなっているのだ。マイナーチェンジ直後は、出力違いの1.6リッター直列4気筒ターボを「118i」と「120i」に、3リッター直列6気筒ターボを「M135i」にそれぞれ搭載していたが、BMWはこれらを適宜、新世代モジュラーエンジンに置き換えるとともに、ディーゼルエンジンを追加したのである。

これにより、現時点でのラインナップは、1.5リッター直列3気筒ターボを積む118i、2リッター直列4気筒ディーゼルターボの「118d」、3リッター直列6気筒ターボ(新世代)の「M140i」、そして、2リッター直列4気筒ガソリンターボの120iとなった。次のモデルチェンジまで従来のエンジンで乗り切るという選択肢もあっただろうが、いち早く自慢のエンジンを提供してきたところに、“バイエルンのエンジン工場(Bayerische Motoren Werke)”の心意気を見たような気がする。

さて、今回試乗した「120iスタイル」に搭載される“B48”型エンジンは、500ccのシリンダーを直列に4つ配置することで2リッターの排気量を実現したもの。ちなみに1.5リッター3気筒は“B38”、2リッター4気筒ディーゼルは“B47”、3リッター6気筒は“B58”だ。

正確には「B48B20A」という120i用は、直噴システムとツインスクロールターボに加えて、お家芸のバルブトロニックやダブルVANOSといったテクノロジーによって最高出力184ps、最大トルク27.5kgmを実現している。

2リッターターボエンジンは、最高出力184ps/5000rpm、最大トルク27.5kgm/1350-4600rpmを発生する。
2リッターターボエンジンは、最高出力184ps/5000rpm、最大トルク27.5kgm/1350-4600rpmを発生する。拡大
試乗した「120iスタイル」は、クロス/レザーのコンビシートを採用する。
試乗した「120iスタイル」は、クロス/レザーのコンビシートを採用する。拡大
試乗車のボディーカラーは、有償色の「グレイシャー・シルバー」。
試乗車のボディーカラーは、有償色の「グレイシャー・シルバー」。拡大
デザインラインは「スタイル」のほか、「スポーツ」「Mスポーツ」も用意される。スタイルでは、キドニーグリルに「マットオキサイドシルバー」仕上げが施される。
デザインラインは「スタイル」のほか、「スポーツ」「Mスポーツ」も用意される。スタイルでは、キドニーグリルに「マットオキサイドシルバー」仕上げが施される。拡大

あふれ出るトルク!

184ps、27.5kgmという数字だけ見ると、2リッターターボとしては特に驚くようなスペックではないが、実際に運転してみると、その完成度の高さに舌を巻く。

8段オートマチックを組み合わせたパワートレインは動き出しから実にスムーズで、かつ、豊かなトルクを示す。スペック表には1350rpmから最大トルクを発生するとあるが、実際1500rpm以下の低回転でもクルマはスルスルと走り、アクセルペダルを軽く踏み増したときの反応も悪くない。そこからさらに右足に力を込めると、エンジンはシュッとスムーズに回転を高め、素早い加速を見せてくれるのだ。その際のシフトも滑らか。パワートレインの上質さは、クルマの上質さに直結するものだが、それだけにこの120iは、“いいクルマに乗ってる”感がじんわりと伝わってくる。

最近のダウンサイジングターボエンジンは、確かに必要十分なトルクを得られるが、どうしても“絞り出す”という印象が強くなってしまう。それに対して120iの2リッターエンジンはドライバーのアクセルワークに余裕をもって対応する鷹揚(おうよう)さがあり、“絞り出す”のではなく“あふれ出る”という表現がしっくりする。

高速道路の合流で思い切りアクセルペダルを踏みつけると、フラットなトルク特性のおかげでスピードはリニアに伸びていく。さらに、最大トルクが持続する4600rpmを超えてもなお、感覚的には盛り上がりを見せる印象だ。これで、もう少しパンチがあるとさらに魅力を増すはずで、「3シリーズ」などに積まれる、同じB48型のハイパワー版がこの1シリーズにも用意されたらいいのに……と思うのはきっと私だけではないだろう。

試乗車にはオプションのバリアブルスポーツステアリング(可変ステアリングギアレシオ機構)が備わっていた。
試乗車にはオプションのバリアブルスポーツステアリング(可変ステアリングギアレシオ機構)が備わっていた。拡大
トランスミッションは8段ATを採用する。シフトセレクターの右には走行モード切り替えスイッチが、左下にはインフォテインメントシステムの操作スイッチが備わる。
トランスミッションは8段ATを採用する。シフトセレクターの右には走行モード切り替えスイッチが、左下にはインフォテインメントシステムの操作スイッチが備わる。拡大
今回の試乗では241.6kmを走行。ハイオクガソリンを21.1リッター消費し、満タン法で11.5km/リッターの燃費を記録した。
今回の試乗では241.6kmを走行。ハイオクガソリンを21.1リッター消費し、満タン法で11.5km/リッターの燃費を記録した。拡大

タイトなコックピットに胸躍る

というのも、120iの中では最もおとなしい見た目の、この120iスタイルでさえ、その気にさせる軽快な走りを見せてくれるからだ。BMW伝統の“ドライバーオリエンテッド”なコックピットはよく言えばタイトでスポーティー、悪く言えばサイズのわりにやや窮屈な印象だ。もちろんこれはBMWの意図するところで、肯定的に受け止める人にとっては、胸躍る絶妙な演出といえる。

軽めのステアリングを操作すると、不安になるほどの鋭さはないものの、軽快に向きを変えるハンドリングはFR車の面目躍如。FFや4WDのハッチバックでも優れたハンドリングのモデルは多々あるが、1シリーズは動きが実に素直で、それでいて人工的な味が一切しないのがいい。

225/45R17サイズのランフラットタイヤを履くため、ゴツゴツというほどではないが、路面によってはゴロゴロという感触を伝えてきたり、高速走行時の落ち着きがもう少しほしかったりと、多少気になる部分もあるものの、爽快な走りがいつもの街角でも楽しめるのはうれしいところで、これこそが、1シリーズ一番の存在理由であるのは確かである。

次期1シリーズは、「2シリーズ アクティブツアラー」や「MINI」と共通のFFプラットフォームを採用する可能性が濃厚とのことだが、できることならこのままずっと異端児のままであってほしい。

(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

「120iスタイル」のコックピット。ホワイトアクリルガラスカラーのアクセントが施されるなど、3つのデザインラインの中では、最もラグジュアリーに仕立てられている。
「120iスタイル」のコックピット。ホワイトアクリルガラスカラーのアクセントが施されるなど、3つのデザインラインの中では、最もラグジュアリーに仕立てられている。拡大
試乗車は「ブリヂストン・ポテンザS001」のランフラット(RFT)を履いていた。サイズは前後ともに225/45R17。
試乗車は「ブリヂストン・ポテンザS001」のランフラット(RFT)を履いていた。サイズは前後ともに225/45R17。拡大
視認性の高いL字型のテールランプを採用。光源にはLEDを使用する。
視認性の高いL字型のテールランプを採用。光源にはLEDを使用する。拡大

テスト車のデータ

BMW 120iスタイル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4340×1765×1440mm
ホイールベース:2690mm
車重:1500kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:184ps(135kW)/5000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1350-4600rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ブリヂストン・ポテンザS001 RFT)
燃費:15.9km/リッター(JC08モード)
価格:418万円/テスト車=474万円
オプション装備:ボディーカラー<グレイシャー・シルバー>(7万7000円)/電動ガラスサンルーフ(14万4000円)/電動フロントシート(12万円)/アクティブクルーズコントロール(9万1000円)/BMWコネクテッドドライブプライム(6万1000円)/バリアブルスポーツステアリング(2万9000円)/スルーローディングシステム(3万8000円)

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1522km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:241.6km
使用燃料:21.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.5km/リッター(満タン法)/11.9km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW 120iスタイル
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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