アウディA3スポーツバック1.4 TFSI sport(FF/7AT)
普通になった特別 2017.03.14 試乗記 マイナーチェンジを受けた「アウディA3スポーツバック」をテストドライブ。新たに与えられた先進装備の使い勝手など、アウディの屋台骨を支える、最量販モデルの仕上がりをリポートする。新しい顔とバーチャルコックピット
「いい色ですなあ!」
パーキングエリアでA3スポーツバックから降りると、70歳過ぎぐらいの品のいいおじいさんに声をかけられた。家族に連れられて来ていたようで、特に自動車マニアという様子ではない。戸惑いながら感謝の意を告げると、「いやあ、素晴らしい色だ……」と感に堪えないように称賛の言葉を重ねる。試乗車のボディーカラーはタンゴレッドメタリック。鮮やかな赤で、春の穏やかな光を受けて輝いていた。
もしかすると、ビビッドな色がおじいさんの脳裏に残る青春の思い出を引き出したのだろうか。そうかもしれないが、たぶん色だけに対する感想ではなかったように思う。マイナーチェンジで新しいフロントマスクを与えられたA3は、シャープさとエレガントさを両立させたフォルムが際立っている。明るいレッドが朗らかさと快活さをプラスし、魅力を高めていたのだ。
2013年に日本での販売が始まった現行A3は、MQBを採用した「ゴルフVII」の兄弟車。今回が初のマイナーチェンジである。シングルフレームグリルの横幅が広げられ、エッジが強調された造形になった。スポーティーさと先進性が強調されて、引き締まったいい顔である。テールランプなどにも上級モデルと同様のデザインモチーフを用いたことで、車格が上がったような印象をもたらしている。
装備面では「バーチャルコックピット」が新しい。すでに「TT」や「A4」で採用された多機能なデジタルディスプレイで、ナビ画面やインフォテインメントシステムをドライバーの正面にあるメーターパネル内に表示する。ほぼすべての情報が手に入り、便利この上ない。一度このシステムに慣れてしまうと、従来のように、視線をセンターのモニターとメーターパネルの間で行き来させることがとてつもなく煩わしく思えてくる。