ボルボV90 T6 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
北欧の良心 2017.04.06 試乗記 ボルボのフラッグシップエステート「V90」に試乗。新世代プラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」の上に“スウェディッシュ・ラグジュアリー”を体現した新型は、ドイツのライバルとはひと味違う、北欧の良心にあふれていた。自由自在のSPA
ボルボV90に乗ったとだれかに話すと、たいていサイズのことを質問される。「大きいんですか?」と皆心配する。いい機会だからFAQとして書いておこう。V90のサイズは全長4935mm、全幅1890mm、全高1475mm。「メルセデス・ベンツE250ステーションワゴン」は同4960mm、同1850mm、同1465mm。モデル末期だが、「BMW 528iツーリング」は同4915mm、同1860mm、同1490mm。「アウディA6 2.0 TFSIクワトロ」は同4955mm、同1875mm、同1495mm。どの数値もせいぜい数十mmの差しかない。つまり、V90はライバルに比べて大きいわけではない。よし次から「ここ読んで」と言おう。
ただサイズを心配する気持ちはよくわかる。全体に水平基調で、前後に伸びやかなスタイリングのため、大きく、というか長く見えるのだ。横から見ると、フロントオーバーハングの短さとホイールベースの長さが際立っている。フロントオーバーハングが長く、ホイールアーチからドアまでが短いというのがエンジン横置きモデルの常のはずだが、新型V90が用いるSPAという新しい車台は自由度が高く、まるでエンジン縦置きモデルのようにフロントオーバーハングが短い(前輪が前の方にある)スタイリングを可能とした。
近頃の乗用車はエンジン横置きのFWD(かそれをベースとした4WD)が多数を占めるが、いわゆる高級車は今もエンジン縦置きのRWD(かそれをベースとした4WD)が多い。また高級車はそうあるべきだという風潮もまだまだ根強い。ボルボの縦置き風デザインからは老舗高級車ブランドへのコンプレックスが見て取れる。だが周囲からのV90に対する高い評判を聞く限り、旧来のクルマ好きの講釈なんぞだれも気にしていないことがわかる。やがてエンジンは搭載されなくなるか、搭載されても隅でほそぼそと発電するのみとなる日はそう遠くない。縦でも横でも斜めでもいいのだ。
ただ、この車台はなにもデザイナー(スタイリスト)を喜ばせるために自由度が高いわけではない。この車台は次期「60シリーズ」にも用いられる。90シリーズの「XC」「S」「V」「クロスカントリー」の4モデルのように、60シリーズでも4モデルが展開されるだろうから、少なくとも8モデルに対応可能な伸縮自在ぶりを発揮しなければならないわけだ。それにどこかのタイミングでクーペやオープンカーが出てくる可能性もある。それぞれにFWDと4WDがあり、またPHVを含むさまざまなパワートレインを搭載する。そういったバリエーションに対応するために自由度が高いのだ。
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