ベントレー・コンチネンタルGTスピード ブラックエディション(4WD/8AT)
今のところ、最強 2017.06.07 試乗記 ハイパワーなW12エンジンを搭載する、「ベントレー・コンチネンタルGT」の高性能バージョン「コンチネンタルGTスピード」に試乗。その走りっぷりや、クルマとしての使い勝手を報告する。2代目の掉尾を飾る
本来なら史上最強、最速のベントレーとして紹介するつもりだったコンチネンタルGTスピードだが、今年の初めに究極のコンチネンタルGTたる「スーパースポーツ」が発表されたせいで、その称号を掲げるのを控えなければならなくなった。とはいえ710psと1017Nm(!)を誇るスーパースポーツは限定モデルと聞くし、いまだに日本には上陸していないので、今のところ最強最速のベントレーはこの「スピード」である。
実は初代モデルもモデルライフの最後(2009年)にスーパースポーツと「同コンバーチブル」を発売して、現行の2代目にモデルチェンジした。クーペとコンバーチブル、そしてサルーンの「フライングスパー」それぞれに少しずつ強力なモデルを追加していき、最後に極め付きの硬派仕様を送り出すというのはこれまでもベントレーが実行してきたこと。ということはそろそろ新型に切り替わる時期が近いと判断できる。このような手法は何だか同族のポルシェに似ている。そういえばベントレー・モーターズのヴォルフガング・デュルハイマー社長はポルシェ出身である。
2003年に発売された当初のコンチネンタルGTのW12ツインターボのピークパワーは560ps、最大トルクは650Nmだった。その後ライバルとの競争の中で見る見るパワーアップされ、今ではスタンダードのW12コンチネンタルGTでも590psと720Nmを生み出すW12ツインターボを搭載しているのはご存じの通り。2代目で追加されたV8モデルでも、当初のW12に近いレベルにまで来ている。V8ツインターボ(「ミュルザンヌ」系が積む6 3/4リッターのV8ツインターボエンジンとは出自が違う)は、もともとクールで潔癖症なアウディ用の最新V8でとにかく洗練されているのが特徴、いっぽうW12ユニットは野蛮にも思えるたくましさを守り続けている。
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「もともと最強」をさらに強化
コンチネンタルGTの最強力モデル、スピードのW12ツインターボユニットは、2016年春のマイナーチェンジで635ps/6000rpmと820Nm/2000rpmから642ps/5900rpmと840Nm/2000-5000rpmへ若干強力になっている。編集部のS君はそのパワーアップについて一生懸命説明してくれたが、もともと600ps以上の6リッターW12ツインターボエンジンのピークパワーが7psアップしたからといって、その違いを見極められるような身体センサーは申し訳ないけれど持ち合わせていない。20Nm強化された最大トルクも同様だ。そもそもけた外れの怒涛のパワーを、さらにわずかばかり向上させることを是非にと望む顧客がいるとも思えないが、絶えず改良を加える姿勢が大切なのだろう。
ちなみに若干とはいえパワーアップした結果、0-100km/h加速タイムは従来の4.2秒から4.1秒に短縮されたという。無論その0.1秒自体に現実的な意味があるわけではないし、一般道では(おそらくテストコースでも)その差を体感することは無理だ。最高速は331km/hで変わらないという。
それよりも“バーントオレンジ”という鮮やかなオレンジ色をまとった試乗車が「ブラックエディション」と称する特別仕様であることが重要かもしれない。真っ黒な21インチホイールを履き、インテリアにカーボンファイバートリムを施したいかにも戦闘力が高そうな、こわもてのエクステリアで、英国流のアンダーステートメントを旨とするベントレーとしてはちょっとあからさまに過ぎるのではないかと心配するが、ニューリッチ層はこれぐらいがお好みなのかもしれない。
迫力の脈動が魅力
W12はフォルクスワーゲンのVR6という狭角V6エンジンを2基合わせた奇抜な12気筒エンジンであり、もともとバランスが取れているV型12気筒とは異なっていて当たり前である。滑らかさと静かさよりは、どう猛な獣の息吹のようなすごみのあるビートが特徴であり、魅力である。もちろんラフではなく、スムーズに回るのだが、複雑に組み合った重い金属パーツが力ずくで回されているようなたくましさが独特だ。強力な腕っぷしをあえて抑えている礼儀正しさといえるだろうか。無論思い切り踏めばその剛腕をあらわにして、ごう音を発して猛然と加速する。その辺のSUVなどよりはるかに重い2360kgのボディーを軽々と加速させる怒涛のパワーは相変わらず驚くばかりだ。
ただし、さすがにデビューから15年も経過すると、基本設計の古さを感じさせる部分も現れてくる。それは例えば緊急ブレーキや車線逸脱警告などの予防安全支援システムが備わらないこと。最新のSUVである「ベンテイガ」にはほぼ漏れなく搭載されているが(ただしあちらもアダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストなどはなぜかオプションだ)、コンチネンタル系などほかのベントレーには備えがない。特別な場合にしか乗らないからという言い訳も、ビジネスにもパーソナルにも使えるのが売りのコンチネンタルGTには通用しないだろう。予防安全支援システムはカメラやレーダーセンサーを後付けすればいいというものではなく、データを高速でやり取りするネットワークを構築しなければならないが、それは間もなく登場する次期型を待たなければならないのだろう。
デジタルとの折り合いは
同じように課題となるのがインターフェイスかもしれない。レザーとウッドと真ちゅうのインテリアトリムと、液晶モニターなどのデジタル機器をどのように両立させるかは考えただけで難しい。以前のようにカーナビぐらいだったらふたを付けて隠してしまえば済んだかもしれないが、今では四六時中ネット接続することも考えなければならない。伝統的なクラフツマンシップと現代的な装備を融合させる新たなアイデアを期待したいところだ。もっとも、個人的にはクルマに乗っている時ぐらい“コネクト”しなくてもいいだろうと思う。もしかすると将来はレスオプションに料金を払うようになるかもしれない。テレビもWi-Fiもないことが本当のリゾートの条件とされるのなら、運転している時ぐらいはコネクトしないクルマこそ、真のラグジュアリーカーとみなされる時代が来るのではないかと思う。
コンチネンタルGTの次期モデルは、すでにプロトタイプのテスト走行もスクープされている。新型はハイブリッドかプラグインハイブリッドシステムを搭載するモデルも用意される、と考えるのが順当だ。W12もベンテイガと同じ最新スペックになるだろう。いかにベントレーとはいえ、いや好事家向けではなく、新たな生き方を選んだベントレーだからこそ、新しい価値を作り出すことを絶えず考えなければ未来はない。自動車の歴史そのものを背負っているベントレーはそうすべき責任があるのだ。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTスピード ブラックエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4820×1945×1400mm
ホイールベース:2745mm
車重:2360kg
駆動方式:4WD
エンジン:6リッターW12 DOHC 48バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:642ps(472kW)/5900rpm
最大トルク:840Nm(85.7kgm)/2000-5000rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y/(後)275/35ZR21 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:14.6リッター/100km(約6.8km/リッター、EUドライブサイクル 複合モード)
価格:2710万円/テスト車=3009万4900円
オプション装備:ブラックエディション<ベルガクロスカラーアクセント>(171万9800円)/オプションペイント<バーントオレンジ>(79万7700円)/リアビューカメラ(17万6300円)/シートベンチレーション+マッサージ機能付きシート<フロントシート>(14万9000円)/ドアミラーキャップ<ベルガグロスカラー>(9万3000円)/ディープパイルオーバーマット(5万9100円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2216km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:245.4km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.5km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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