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第441回:“ガレーヂ伊太利屋カラー”のアバルトが激走
日本人ドライバーがヨーロッパラリーに挑む

2017.09.22 エディターから一言
ローマ市内の中心部、「真実の口」前の広場で行われたセレモニアルスタートの様子。観光客も足を止めて見入っていた。
ローマ市内の中心部、「真実の口」前の広場で行われたセレモニアルスタートの様子。観光客も足を止めて見入っていた。拡大

ラリーの本場、ヨーロッパで行われるヨーロッパラリー選手権(ERC)。イタリアで開催されたその第7戦に、日本のラリーチームとラリードライバーが参戦! 懐かしい“ガレーヂ伊太利屋カラー”の「アバルト500」がローマを駆けた。

昨年までイタリア選手権の一戦として開催されていた「RALLY DI ROMA CAPITALE」。今年はERCのカレンダーに加えられ、イタリア選手権とその下位カテゴリーである地域選手権「RALLY DI PICO」が併催された。
昨年までイタリア選手権の一戦として開催されていた「RALLY DI ROMA CAPITALE」。今年はERCのカレンダーに加えられ、イタリア選手権とその下位カテゴリーである地域選手権「RALLY DI PICO」が併催された。拡大
全日本ラリー選手権にもmCrtから参戦している眞貝知志選手。ダニーロ・ファパーニ選手とコンビを組むのはこれが初で、ラリー前に事前テストを敢行してコンビネーションを確かめていた。
全日本ラリー選手権にもmCrtから参戦している眞貝知志選手。ダニーロ・ファパーニ選手とコンビを組むのはこれが初で、ラリー前に事前テストを敢行してコンビネーションを確かめていた。拡大
サービスはイタリアのSPORTEC engineeringが担当。アバルト以外にもプジョーなどのラリー車を扱っており、参戦をサポートしてくれる心強い存在だ。
サービスはイタリアのSPORTEC engineeringが担当。アバルト以外にもプジョーなどのラリー車を扱っており、参戦をサポートしてくれる心強い存在だ。拡大
“ガレーヂ伊太利屋カラー”に塗装された「アバルト500R3T」が、市役所前のヘアピンを立ち上がる。
“ガレーヂ伊太利屋カラー”に塗装された「アバルト500R3T」が、市役所前のヘアピンを立ち上がる。拡大

あのカラーリングがイタリアで復活!

ERCの第7戦「RALLY DI ROMA CAPITALE」が、9月15日から17日にかけて、イタリア・ローマ近郊のフィウッジで開催された。

中世からの温泉地として知られ、イタリアではミネラルウオーターの産地としても有名なフィウッジで行われるこのラリー。今回、日本とはいささか縁遠そうなこのイベントを取材した理由は、日本のムゼオチンクエチェントレーシングチーム(mCrt)が参戦しているから。そして、往年のレースファンには懐かしい“ピンクのカラーリング”が久々に復活したからだ。

順を追って説明すると、mCrtは全日本ラリー選手権に「アバルト500R3T」で参戦しているチームである。RALLY DI ROMA CAPITALEに挑むのは昨年に続きこれが2度目。ドライバーを務めるのは、全日本ラリーにもmCrtから参戦している眞貝知志選手だ。眞貝は2007年から全日本ラリーに参戦しており、2009年には当時のJN2クラスを、2012年にはJN3クラスを制覇。2014年からはこのアバルト500R3Tでラリーに臨んでいる。

一方、今年のコ・ドライバーにはイタリア人のダニーロ・ファパーニ選手を起用。ファパーニは1997年に「スバル・インプレッサ」でイタリアチャンピオンを獲得。その後も数々のラリーに参戦し、2006年から2016年まではイタリア人ドライバー、シモーネ・カンペデッリと組んで世界ラリー選手権(WRC)やイタリア選手権で活躍してきた経験豊富なベテランである。

このファパーニの起用と並び、昨年の参戦から大きく変わった点が、チームを支援するパートナーにガレーヂ伊太利屋が加わったこと。それに伴い、マシンにピンクの“ガレーヂ伊太利屋カラー”が施されたことである。1970年代から1980年代にかけて、グラチャンやWECなど、各カテゴリーのレーシングカーを彩ったあのカラーリングだ。ルマン24時間レースに参戦した「ポルシェ962C」を思い出すようなファンの方なら、久しぶりにモータースポーツの世界に舞い戻った「伊太利屋」の文字が懐かしく感じられるの違いない。

地元イタリアのマシンを日本人が駆る

マシンについては先にも触れたとおり、全日本ラリー選手権と同じくアバルト500R3Tを使用。といっても全日本で使用しているマシンそのものではなく、現地イタリアでレンタルしたものだ。イタリアと日本では車両規則が異なり、全日本仕様のマシンでイタリアやヨーロッパのラリーにそのまま参戦することは不可能。また、ヨーロッパではラリー車のレンタルというのは至って普通のことで、ビジネスとしても成立している。

ちょうどいいので、ここでヨーロッパラリーなどで用いられる車両規定についても説明させていただく。文字数の都合もあるのでおおざっぱに言うと、WRCのトップカテゴリーであり、各メーカーが威信をかけて開発した「WRカー」で競われる「RC1」を頂点に、R5規定のマシンが走る「RC2」、R3規定で競われる「RC3」、2シーターの車両が走る「R-GT」などに分けられている。

中でも、ERCをはじめとした地域選手権のトップカテゴリーが、R5規定で競われるRC2クラスである。R5規定のマシンは、シュコダやシトロエン、ヒュンダイ、プジョー、フォードなどが提供しており、地域選手権だけではなく各国の国内選手権にも参戦が可能。世界のスタンダードともいえるカテゴリーだ。

一方、mCrtがアバルト500R3Tとともに参戦するクラスは、文字通りR3規定で競われるRC3クラス。主なライバルは「シトロエンDS3 R3T」「トヨタGT86 CS-R3」となるのだが、DS3が1600ccターボ、GT86が2000cc自然吸気のエンジンを搭載するのに対し、アバルト500のエンジンは1400ccターボ。なおかつアバルト500はこのなかで最も古く、戦力不足は明らかといえる。

実際、“地元”イタリアで開催された今回のラリーでも、アバルト500R3Tの姿はほとんど見受けられなかった。それどころか、去年のこの大会では、mCrtが唯一のアバルト、唯一のイタリア車での参戦だったのだ。それを日本人ドライバーが駆るというのだから、いやが応にも注目度は高まる。「イタリア選手権なのに唯一のイタ車」ということから愛国心に火がついたか、ギャラリーの声援もひときわ大きかった。

ちなみに、今年はイタリアの若手育成プログラムからRC3クラスにもう1台のアバルト500R3Tが参戦。2年連続で「イタリアのラリーなのに……」という事態は避けられたようだ。

一部を除き、基本的には観戦は無料。老若男女問わず、多くのギャラリーが各ステージに詰めかけた。
一部を除き、基本的には観戦は無料。老若男女問わず、多くのギャラリーが各ステージに詰めかけた。拡大
RGTクラスには3台の「アバルト124ラリー」が参戦。表彰台を独占した。形こそ似ているものの、市販車の「アバルト124スパイダー」とはまるで別物だ。
RGTクラスには3台の「アバルト124ラリー」が参戦。表彰台を独占した。形こそ似ているものの、市販車の「アバルト124スパイダー」とはまるで別物だ。拡大
RC3クラスに参戦する「トヨタGT86 CS-R3」。走らせているのはイタリアのチームだが、ドイツのTMG(Toyota Motorsport GmbH)が支援している。
RC3クラスに参戦する「トヨタGT86 CS-R3」。走らせているのはイタリアのチームだが、ドイツのTMG(Toyota Motorsport GmbH)が支援している。拡大
イタリア選手権に参戦している「ルノー・クリオR3T」。今回は直接競う相手ではなかったが、同じクラスのエントラントとしてタイム差を測るには好適な存在だった。
イタリア選手権に参戦している「ルノー・クリオR3T」。今回は直接競う相手ではなかったが、同じクラスのエントラントとしてタイム差を測るには好適な存在だった。拡大
RGTクラスに参戦する「ポルシェ911 GT3」。ハッチバック車が主流のラリーでは特異な存在だが、とにかく音が大きくて、子供たちに大人気だった。
RGTクラスに参戦する「ポルシェ911 GT3」。ハッチバック車が主流のラリーでは特異な存在だが、とにかく音が大きくて、子供たちに大人気だった。拡大

最後まで何が起こるかわからない

ラリーは金曜夕方に、ローマ市内の観光名所「真実の口」のそばからスタートした。警察車両の先導により、市内の観光スポットをパレード……というにはあまりに速いペースで巡る。SS1はイタリア文明宮前の広場に特設された特設コースで行われ、眞貝・ダニーロ組はクラス2位で初日を終えた。

明けて土曜からはフィウッジ周辺の山間部がステージ。山あいの街をつなぐ道がそのままコースとなるため、街中ではバールや民家の目の前をラリー車が全開で走り抜けるという、日本ではおよそ想像もつかない光景が繰り広げられる。WRCでも街中を通るステージはあるが、ここまでの規模は見たことがない。いずれにせよ、イタリア人がコーヒーやワインを飲みながらラリーを観戦しているのだから、盛り上がらないはずがないだろう。

こうした市街地コースもあるかと思えば、SSの中には道が細くて路面はバンピー、片側は谷でアベレージスピードがやたらと高いといった、性格の全く異なるステージも待ち受けている。かように変化に富んだラリーだけに、トップ選手も含めてクラッシュが続出。そんな中で眞貝/ファパーニ組は着実にSSをこなしていった。

これが海外3戦目となる眞貝は、地元勢と比べて圧倒的に経験が少なく、昨年はその焦りからコースオフ。マシンを傷めてリタイアを喫した。今年も思い通りに走らせられない自分にいら立ちを見せるも、ベテランのファパーニが眞貝をうまくコントロール。とにかく焦らず無理せず、確実にステージをこなすことに集中させる。経験豊富なコ・ドライバーの仕事ぶりには、チーム代表も全幅の信頼を置いていた。

眞貝が「ドライバーとしては全く納得のいかない走り」と語りながらもクラス3位で迎えた最終日。マシンのセットアップとタイヤ選択は、確実な完走を目標としたものだった。とはいえ、走りきることができたならば、最後の最後に何かが起こるかもしれないのがラリーというスポーツ。そして実際、それが最終ステージで起こってしまった。クラストップを走行していたエマ・ファルコンのDS3が、エンジントラブルでリタイア。最終ステージを走りきった眞貝/ファパーニ組がクラス優勝を飾ったのだ。

勝利にうれしさを見せながらも、思い通りにドライブできなかったもどかしさと、あらためて実感したヨーロッパ人ドライバーとの実力差について語る眞貝。今後は、日本のラリーとは全く異なる道や環境に慣れ、日本をベースに海外ラリーに参戦することの難しさを、いかに克服するかが課題となるだろう。とはいえ、眞貝の次戦は全日本ラリーの最終戦、新城ラリーである。ラリーの本場でクラス優勝を果たした眞貝がどのような走りを見せるか、ぜひ注目したい。

(文と写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

SS1に挑む「アバルト500R3T」。奥に見えるイタリア文明宮はムッソリーニ時代の建築物で、今はFENDIの本社ビルとなっている。
SS1に挑む「アバルト500R3T」。奥に見えるイタリア文明宮はムッソリーニ時代の建築物で、今はFENDIの本社ビルとなっている。拡大
アバルトユーザーの選手や関係者、ゲストのために設置された、アバルトのホスピタリティーブース。そこら辺のイタ飯屋よりもおいしい料理が提供される。クルーを送り出すと暇になるメカニックは、もっぱら昼寝か、こうしてゲームで時間を潰す。
アバルトユーザーの選手や関係者、ゲストのために設置された、アバルトのホスピタリティーブース。そこら辺のイタ飯屋よりもおいしい料理が提供される。クルーを送り出すと暇になるメカニックは、もっぱら昼寝か、こうしてゲームで時間を潰す。拡大
地元の人からしたら「自宅の前がステージ」なので、庭や窓から参戦する姿も見られる。筆者も、なぜか仲良くなった地元の名士(自称)だというおじさんにコーヒーをごちそうになりながら撮影を敢行。さすがに仕事なので、ワインのお誘いは丁重にお断りした。
地元の人からしたら「自宅の前がステージ」なので、庭や窓から参戦する姿も見られる。筆者も、なぜか仲良くなった地元の名士(自称)だというおじさんにコーヒーをごちそうになりながら撮影を敢行。さすがに仕事なので、ワインのお誘いは丁重にお断りした。拡大
すべてにおいてプロフェッショナルだったコ・ドライバーのダニーロ・ファパーニ選手。なんと、世界で5番目の参戦数を誇るコ・ドライバーだとか。
すべてにおいてプロフェッショナルだったコ・ドライバーのダニーロ・ファパーニ選手。なんと、世界で5番目の参戦数を誇るコ・ドライバーだとか。拡大
ラリーを終始リードするも、最終SSのエンジントラブルに泣いたエマ・ファルコンの「シトロエンDS3 R3T」。ちなみに、エマさんは1991年生まれの速くて美人な女性ドライバーである。
ラリーを終始リードするも、最終SSのエンジントラブルに泣いたエマ・ファルコンの「シトロエンDS3 R3T」。ちなみに、エマさんは1991年生まれの速くて美人な女性ドライバーである。拡大
最後まで走りきることが最も重要なこと。去年の反省を踏まえ、今年は絶対完走を目標にしたmCrtの眞貝/ファパーニ組。最後の最後にサソリの神様がご褒美をくれたのかも。
最後まで走りきることが最も重要なこと。去年の反省を踏まえ、今年は絶対完走を目標にしたmCrtの眞貝/ファパーニ組。最後の最後にサソリの神様がご褒美をくれたのかも。拡大
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