くすぶり続ける排出ガス不正問題に対する
ある欧州製ディーゼル車オーナーの本音
2017.09.25
デイリーコラム
あれって結局どうなったわけ?
欧州メーカーのディーゼル排出ガス問題って、結局どうなったのだろうか?
実のところ、よくわからない。いや、まったくわからないと言っていい。ディーゼルびいきの私としては、知るのが怖い、知りたくないという面すらあったりするが……。
今のところ、大々的に法的責任を問われたのはフォルクスワーゲンのみで、疑惑がささやかれている他メーカーは、なんやかんやでかわしている。メルセデスの300万台サービスキャンペーンをはじめとして。
もちろんサービスキャンペーンはあくまで善意(?)による自主的なもので、法は犯していなかったことになっているが、事実は五里霧中。個人的には、「これが宮廷政治というものかなぁ」と思っております。
フォルクスワーゲンの不正が明らかになったのは、宮廷の外(アメリカ)で摘発されてしまったからだ。その後の事の推移を見ると、宮廷の内部では、厳しい処罰は行えないようだ。
なにせメンバーは有力貴族ばかり。検察官や裁判官が正義を振りかざしたとしても、「まあそう目くじら立てなさんな」「そこらへんは穏便に!」となりそうじゃないですか~。あ、この言い方は日本のムラ社会的ですね。宮廷政治は「諸君に神の祝福あらんことを!」みたいな感じでしょうか?
拡大 |
日本で批判の声が高まらない理由
こういうことは、われわれ日本人はスポーツの世界では何度か感じてきた。ノルディック複合で日本勢が連戦連勝したことで、日本勢に不利なルール改定が行われたり、F1でホンダが勝ちまって出る杭(くい)が打たれたりとか。
ただ今回は、日本に住んでいる日本人には、さほど実害は出てない。よって欧州でのこれら宮廷政治について「おかしいじゃないか!」と声高に非難する動機は、決して強くない。
フォルクスワーゲンの不正ディーゼル車は1台も正規輸入されていなかった。仮にメルセデスが不正を行っていたとしても、日本では大河の一滴でしかない。
そういえば「E320 CDI」が日本に導入された際、弊社(編集プロダクション・フォッケウルフ)のマリオ高野二等兵は、そのド太いトルクに震撼(しんかん)し、感激のあまりアイドリング中の排気を思い切り吸い込むという自己人体実験を試みて、「まったく問題はないであります!」と報告していました。
とにかく、これまで日本に輸入されたディーゼル乗用車は、累計販売台数で言うとメルセデスとBMWが大多数。他のブランドは、ボルボでようやく2年、ジャガー・ランドローバーやプジョー・シトロエンはほんの1年ほど前からだ。
で、メルセデスは日本でも「サービスキャンペーン」でソフトのアップデートを行うことにしたわけなので、残る大口はBMWである。
BMWのディーゼルに関しては、これまで「シロ」とされてきている。つい先月、「BMW 320d」(中古)を買った私としては、「シロだといいな~」と祈っているし、実は「シロなんじゃないかな?」と希望的観測を抱いている。
拡大 |
“宮廷政治”に怒りは感じるものの……
というのも、私は3年前、たまたまイタリアで「フォルクスワーゲン・ゴルフ1.6ディーゼル」(触媒タイプの不正車)のレンタカーを借り、その想像を絶するエンジンレスポンスに驚嘆したからだ。
「これってガソリン車と変わらないじゃん!」
真剣にそう思った。それでいてトルクはガソリン車など相手にしない太さ。フォルクスワーゲンのディーゼルってこんなに進んでるのか! マツダのSKYACTIV-Dバンザイとか言ってちゃダメだったのか! と、自らの無知を恥じたほどだ。
不正ソフトを搭載すると、ディーゼルでもめっきりレスポンスをよくできる。フォルクスワーゲンの場合、コストの削減よりもそれが主目的だったらしい。
でも、BMWのディーゼルはあんなにレスポンスよくないです。同じ触媒型で。だからセーフじゃないか……。尿素SCRに関するカルテル5社にはBMWも含まれているが、自分のクルマはカンケーないし!
このように私は、自分のクルマのことだけ心配しておりまして、疑惑全体については傍観しております。
まぁですね、欧州貴族たちの腐敗した宮廷政治に軽い怒りを感じないでもないですが、日本もつい昭和の頃まで、交通違反のもみ消しとかフツーにありましたよね。今でもスピード取り締まりは「20km/hオーバーまでは黙認」だったりとか……。あれ、正直とてもありがたいのです。
というわけで、欧州の大都市の大気汚染、石原元都知事がペットボトルのススを振った頃の東京に比べたらかなりマシだと感じますが、それでもそこそこ深刻とは聞きますので、あちらの皆さまが本気で不正を摘発すればそれはそれでよし、サービスキャンペーンで手を打つもよし。どっちにせよ、30年前に旅行したデリー(インド)の大気汚染に比べたら屁(へ)みたいなもんだ。本当に問題があるのは途上国で、そっちの方が実害も1000倍深刻だと思います。
(文=清水草一/編集=堀田剛資)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証するNEW 2026.10.1 BYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。
-
目指したのは“さらなるスポーティーセダン” 新型「BMW 3シリーズ」の技術的ハイライトを読み解く 2026.9.30 BMWが「i3」に続いて「3シリーズ セダン」の新型を公開した。かたや電気自動車、かたや内燃機関搭載車とはいえ、どちらも同じ3シリーズなのだが、どうも世間の受け止めはそうではないらしい。それはともかく、「Mスポーツ プロ」も設定された新型の技術的ハイライトを解説する。
-
目指せ国内生産100万台! 日産の国内事業再編にみる思惑と狙い 2026.9.28 日産が将来の成長へ向けた国内事業の再構築を発表。国内生産100万台を実現すると表明した。赤字に工場閉鎖と、暗いニュースが続いていた日産だが、現状の4割増しというこの大胆な目標は、達成可能なものなのか? そもそも日本での事業にこだわる理由とは?
-
あのクルマはなぜ売れている? 自販連のデータから“日本車の今”を読む 2026.9.25 ここ数年の自販連のデータからは、国内市場におけるトヨタのゆるぎない強さが見てとれる。ではその実績から、人々にどんなクルマが求められているといえるのか? 統計や数字の裏にある消費者マインドを探ってみよう。
-
トヨタもスバルもマツダも いまなぜ2.5リッターエンジンなのか? 2026.9.24 トヨタもスバル、マツダも最新のパワートレインに2.5リッター直4エンジンを採用している。ユーザー感覚では「2リッターを超えると自動車税が高くなるのに」と、疑問に思えるが、そこにはメーカーもユーザーも納得の理由がある?
-
NEW
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する
2026.10.1デイリーコラムBYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。 -
NEW
マツダCX-5 L(後編)
2026.10.1あの多田哲哉の自動車放談ファン待望の新型「マツダCX-5」ではあるが、試乗した多田哲哉さんは気になるところがある様子。一体、どんなところが……? さまざまな車両を開発してきた専門家としての意見を聞いてみよう。 -
NEW
楽しいのが一番! 世界のスポーツカー特集
2026.10.1日刊!名車列伝過ごしやすい気候になり、ドライブが楽しみな10月。「スポーツの秋」ということで、クルマ好きならグッとくる、国内外のスポーツカーを日替わりで紹介します。 -
最新のルーテシアはカッコも走りも燃費も“イイ!”
2026.9.30選ぶならルノーのベストセラーコンパクト<AD>車体が小さいだけでコンパクトカーと呼べるのだろうか。少なくともルノーはそう考えておらず、サイズに見合った走りのよさとユーザビリティー、さらにスタイリングの美しさまでを高いレベルで求めている。最新の「ルーテシア」はまさにそれを体現した一台である。 -
目指したのは“さらなるスポーティーセダン” 新型「BMW 3シリーズ」の技術的ハイライトを読み解く
2026.9.30デイリーコラムBMWが「i3」に続いて「3シリーズ セダン」の新型を公開した。かたや電気自動車、かたや内燃機関搭載車とはいえ、どちらも同じ3シリーズなのだが、どうも世間の受け止めはそうではないらしい。それはともかく、「Mスポーツ プロ」も設定された新型の技術的ハイライトを解説する。 -
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】
2026.9.30試乗記日産のプレミアムミニバン「エルグランド」がフルモデルチェンジ。その動力を担う第3世代の「e-POWER」は優れたドライバビリティーとともに、懸案だった高速燃費の改善もうたう。ロングドライブで進化のほどを確かめた。


