第444回:2年ぶりにフルモデルチェンジ!
ヨコハマのスタッドレスはこう変わった
2017.09.27
エディターから一言
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横浜ゴムの乗用車用スタッドレスタイヤ「iceGUARD(アイスガード)」の新製品「アイスガードiG60(通称:アイスガード6)」が発売された。従来品に比べ、すべての基本性能がアップしたとうたわれる新タイヤの実力やいかに? 報道関係者向けの先行試走会で確かめた。
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ウエットにも強い最新モデル
ヨコハマからスタッドレスタイヤの新商品「アイスガード6」が登場した。その始まりは1985年に誕生した「GUARDEX(ガーデックス)」だったが、2002年に氷上性能を大幅に向上させた第3世代のスタッドレスタイヤ「アイスガード」が登場してからは、「アイスガード TRIPLE iG30(アイスガード トリプル)」「アイスガードiG50(アイスガード5)」「アイスガードiG50プラス(アイスガード5プラス)」などを経て、その性能を高めてきた。スタッドレスタイヤに求められる性能の中で、特にユーザーの関心が高いのが氷上性能。「ice」で始まる名前からは、この氷上性能にこだわるヨコハマの思いが伝わってくる。
そして第6世代となるアイスガード6は、アイスガードが重視してきた「氷に効く」という性能に加えて、「永く効く」、「燃費に効く」を進化させるとともに、新たに「ウエットに効く」を追加したのが見どころである。
東京で雪が降ることはめったにないが、筆者は「備えあれば憂いなし」の考えから、取材先で雪に見舞われても大丈夫なようにと、ここ数年は冬の訪れとともにスタッドレスタイヤに履き替えている。おかげで雪のために足止めを食らったことはないが、「スタッドレスタイヤは雨に弱い」というイメージを抱いており、雨の日のドライブに不安を感じていたのも確かである。
ヨコハマの調査でも、ユーザーの約3割がそんな不安を抱えていて、「ウエット性能が向上したスタッドレスタイヤを購入したい」と答えた人は約55%に上ったという。こういった市場の要望に応えるべく生まれたのがアイスガード6である。
「氷に効く」と「永く効く」はトレードオフ?
とはいうものの、スタッドレスタイヤに一番に求められるのは氷上性能であることに変わりはない。アイスガード6では、非対称のトレッドパターンや、エッジ効果をアップした「ダブルマイクログルーブ」、凍結路面でタイヤが滑る原因となる“氷面の水膜”を吸収する「プレミアム吸水ゴム」などにより、氷上性能を向上。氷上でのブレーキでは、従来品のアイスガード5プラスに比べて約15%短い距離で停止することが可能という。
しかし、氷上性能を高めると“永く効く”との両立がしにくい。すなわち経時劣化が大きくなるという悩みがあった。そこで、アイスガード6では「オレンジオイルS」の配合によりタイヤのしなやかさを持続することなどにより、装着から時間がたってもトレッドが硬くなりにくく、その効果が永く続くようした。また、新・低発熱ベースゴムの採用などにより、走行時のエネルギーロスを低減することに成功。転がり抵抗は同社の低燃費タイヤ「ECOS(エコス)ES31」に匹敵するレベルを実現した。
その性能を試すために、アイスガード6の発売に先がけて訪れたのが、真冬の北海道。旭川にあるヨコハマの「北海道タイヤテストセンター(TTCH)」で思う存分試乗する……はずだった。ところが、季節外れの暖かさや直前に降った雨により、テストコースのコンディションが悪化し、自慢の氷盤を使った円旋回はキャンセル。氷上での制動、雪上のハンドリングコース走行、雪上でのスラロームも難しい状況だったが、スタッフの懸命の努力により、予定より少し遅れて、なんとか試乗にこぎ着けることができた。
試乗に用意されたのは、「トヨタ・プリウス」の4WD車。アイスガード6とアイスガード5プラスが装着されたクルマを乗り比べることで、その進化を確かめる。タイヤサイズはともに195/65R15 91Qだった。
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進化ははっきり体感できる
まずは凍結路で制動性能をチェックする。路面のコンディションがいまひとつということで、開発にあたったエンジニアは「新旧の差は出にくいかもしれません」と心配そう。
そんな状況にも関わらず、ストレートで40km/hまで加速し、そこからフルブレーキングするというテストでは、アイスガード6を履いたプリウスがアイスガード5プラス装着車よりもクルマ1台分くらい手前でストップした。確かにうたい文句どおりだと感心したのだが、それ以上に違いを感じたのが、停止状態から40km/hまで加速するその過程だった。発進からアイスガード6のほうが明らかにグリップが高く、加速中の安定性も優れているのだ。おかげで安心してアクセルペダルを踏むことができた。
大小のコーナーを組み合わせた雪上のハンドリングコースでも、アイスガード6の進化が確認できた。アイスガード5プラスでも十分に雪上性能は高いのだが、アイスガード6が装着されたプリウスに乗り換えると、トラクション、加速中の直進性ともに、アイスガード5プラスを上回る高さを見せる。コーナーによって変わるものの、通過可能スピードは約1~2割高めといったところで、そのぶん安心して駆け抜けられる。そして短い試乗でも、乗り心地や静粛性もアイスガード6のほうが上であるように思えた。
雪上のスラロームコースも用意されていたが、走行するにつれコースが荒れてしまい、筆者の番になると、できるのは撮影のみという事態に。そんな消化不良な私たちのために、ヨコハマは後日、「新横浜スケートセンター」で比較試乗する機会を用意してくれた。ここでは、氷上のブレーキとコーナリングをチェック。制動の比較では、20km/hからのフルブレーキを試すことになったが、助走が短いコースではアイスガード5プラス装着車は20km/hに到達できない。にもかかわらず制動距離はアイスガード6よりも長く、加速・減速ともにアイスガード6の良さが際立つ結果となった。コーナリングも、アイスガード6のほうが安定して走れる速度が高く、氷上性能の進化を実感できた。
というわけで、氷上でも雪上でも、性能向上が確認できたアイスガード6。今シーズンも続々と新しいスタッドレスタイヤが市場に投入されているが、ヨコハマの新作は、購入候補に加えておきたい一品である。
(文=生方 聡/写真=横浜ゴム、webCG/編集=関 顕也)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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