メルセデス・ベンツGLA220 4MATIC(4WD/7AT)
新旧のアウフヘーベン 2017.10.04 試乗記 メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」に試乗。充実の先進装備やトレンドに沿ったエクステリアに目が行きがちだが、その土台はメルセデスの伝統にのっとった“いいクルマ”らしさにあふれていた。中間グレードの「GLA220 4MATIC」に乗った。押し出しが強いパンチドグリル
地下の駐車場でメルセデス・ベンツGLA220 4MATICを受け取って試乗に出掛けた。ライトは「AUTO」モードになっていて、暗い場所だから当然点灯している。外に出ると曇り空。あまり明るくないからか、ライトはなかなか消えない。しばらくして晴れてきてもそのままだ。インジケーターがどうかしたのかと心配になったが、クルマを止めて外に出て見てみたら実際にライトが光っている。どうやら、2016年に改正された保安基準でデイライトが解禁されたことに対応したらしい。
メルセデス・ベンツのSUVラインナップで最も小さいモデルとなるGLAは、日本では2014年に販売が始まっている。3年間のうちに安全装備などの技術はかなり進歩しているので、今年4月のマイナーチェンジで細部をアップデートしたわけだ。将来に向けて、機敏にデイライトも取り入れている。「GLA180」と「メルセデスAMG GLA45 4MATIC」はすぐに上陸したが、GLA220 4MATICは遅れての登場となった。GLA180はFFのみ、「GLA250 4MATIC」は受注生産となったので、非AMGで四駆のGLAが欲しかった人にとっては待望のモデルだ。
フロントマスクの印象はかなり変わった。穴開きの2枚羽根のようなパンチドグリルが特徴で、押し出しが強い。エアコンのルーバーのように動きそうに見えるが、固定式だ。ヘッドランプやアンダーガードなども変更点だが、グリルの存在感が圧倒的で、ほかに目が行かなくなってしまう。
SUVっぽさはそれほど強くない。全高が1505mmと比較的低いため、腰高感が薄いのだ。基本設計を同じくする「Aクラス」が1420mmで、差は85mm。都市型SUVとしては、ほどよいプロポーションである。
パワーがあっても奥ゆかしい
エンジンフード上に走るラインと起伏が新型「トヨタ・カムリ」に似ていると思ったが、もちろん順番が逆でこちらのほうが先だ。ダイナミック感を見せようとすると、こういった造形になるのだろう。トレンド感があって、室内や荷室スペースが広く、立体駐車場にも入れられる。Aクラスと比較してこちらに魅力を感じる人が多くなっても不思議ではない。問題は価格だと思ったが、AMGモデルは別に、同じく2リッターエンジンを積む「A250シュポルト4MATIC」の495万円に対して449万円とこちらのほうが安いのだ。
エンジンを始動させると、カンカンと金属音がした。アイドリングが始まると収まったが、外に出てみるとガラガラとディーゼルっぽい音が聞こえる。新車ゆえの現象かもしれないが、少々興ざめではある。ステアリングコラムの右にあるレバーでDレンジに入れると、メルセデス・ベンツに乗っているのだなあと自覚する。シート調整スイッチがドアの内側にあったりして、このブランド独自の仕様がオーナーのプライドをくすぐる仕掛けだ。
2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンの最高出力は184ps。GLA180に搭載される1.6リッターエンジンの122psに対して大きなアドバンテージがある。メルセデス・ベンツだから、ドカンと加速するような下品なことはしない。急激なアクセル操作は受け流し、奥ゆかしさを保つのが王者の振る舞いだ。それでいて気がつけば結構なスピードが出ている。この感覚に慣れてしまうと、子供っぽいしつけのクルマに乗るのが苦痛になるだろう。
試乗車にはオプションの「レーダーセーフティパッケージ」が装備されていたので、高速道路では「ディスタンスパイロットディストロニック」を試してみた。メルセデス流の名称でわかりにくいが、要するにアダプティブクルーズコントロール(ACC)である。スピードや車間距離を設定しようとしたら、スイッチが見つからない。今どき珍しいレバー式だったのである。
拡充された先進安全装備
軽自動車の「ホンダN-BOX」でもステアリングにスイッチがあったのに、使いにくい旧式の装置が今も使われているのは意外だった。大して手間のかからない変更に思えるが、こういうところを変えるのが実は難しいのかもしれない。うっかりするとウインカーを動かそうとして間違って操作してしまう可能性があるのは困りものである。
設定に手こずったものの、ACCの出来は素晴らしかった。前走車の動きを素早く感知し、過不足のない加速をする。減速する際も早い段階で動作するので、怖い思いをすることはなかった。渋滞追従機能も付いているので、交通量が多い場面では頼もしい。マイナーチェンジでは先進安全装備が拡充されていて、緊急ブレーキの「アクティブブレーキアシスト」と、ドライバーの眠気や疲労を検知して注意を促す「アテンションアシスト」は全車に標準装備となった。
ACCスイッチがない代わりに、ステアリングホイールには右に電話や音量の、左に画面表示のコントローラーが付いている。二眼メーターの間にはマルチインフォメーションディスプレイが備えられているわけだが、あまり使い勝手がよくない。画面が小さい上に、お目当ての情報を探り出すのに手間がかかる。アウディの「バーチャルコックピット」に代表される多機能なシステムが普及する中では、いかにも旧式だ。
細かい不満はあれど、走りは上々だ。車内は静かだし、なにしろ乗り心地がいい。乗員に緊張を強いるような不快な揺れがないのは、車高を考えると見事である。スムーズな7段デュアルクラッチトランスミッションが、快適な巡航をサポートしている。「ダイナミックセレクトコントローラー」で走行モードを切り替えることができ、高速道路なら「エコノミー」モードでも十分だ。ただし、街なかだとエアコンの効きが若干もの足りない場合もある。
ダイナミックなスポーツモード
また細かいことを言うと、ダイナミックセレクトコントローラーの位置には疑問がある。センターコンソール上部に並ぶボタンの一つで切り替えるのだが、視認せずに探り当てるのは難しい。すぐ横にハザードランプのボタンがあって、間違えて押してしまいそうだ。区切りのないツルツルのパネル上にボタンを配置した「トヨタ・ハリアー」よりマシではあるが。
ワインディングロードでは、もちろん「スポーツ」モードを選ぶ。エンジン、トランスミッション、ステアリングなどの特性が一変し、エコノミーやコンフォートとは格段に違うダイナミックな走りを見せる。「制御が容易なオフロードに最適な走行特性」という「オフロード」モードもあるが、今回の試乗では使う機会がなかった。街なかでこのモードにしても、エンジン回転がなかなか上がらない鈍重なクルマになるだけである。
リアのオーバーハングがAクラスよりも長くなっていて、ラゲッジスペースには余裕がある。Aクラスが341~1157リッターなのに対し、GLAは421~1235リッターなのだ。リアハッチの開閉は電動式だから使い勝手もいい。エンジンフードはダンパーなしの突っ張り棒式だから、よく使う実用的な装備が優先されているのだ。
リアコンビネーションランプには、ラメ状加工のクリスタルルックが採用されている。乱反射して派手に光るのは視認性を高めるためというが、カスタム軽テイストにも見えるし、キラキラ女子向けのサービスのようでもある。そういえば、初登場の際は任天堂のマリオとコラボしたCMが流されていた。GLAにはこれまでメルセデス・ベンツとは縁遠かったユーザーを獲得する使命が託されているのだ。
とはいえ、老舗らしい主張もある。フロントウィンドウには創業者の一人であるゴットリープ・ダイムラーのサインが刻まれているのだ。新しいものと古いもの、洗練とヤンキー趣味、さまざまな要素がごった煮になっている。いや、はやりの言葉を使えば、アウフヘーベンと言うべきか。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLA220 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4430×1805×1510mm
ホイールベース:2700mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:184ps(135kW)/5500rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/50R18 97V/(後)235/50R18 97V(ダンロップSP SPORTMAXX GT)
燃費:13.1km/リッター(JC08モード)
価格:449万円/テスト車=515万1440円
オプション装備:レーダーセーフティパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディスタンスパイロット・ディストロニック+レーンキーピングアシスト+PRE-SAFE>(19万9000円)/プレミアムパッケージ<メモリー付きフルパワーシート[前席]+電動ランバーサポート[前席]+アームレスト[後席]+トランクスルー機能+リバースポジション機能付きドアミラー[助手席側]+サングラスケース+12V電源ソケット[ラゲッジルーム]+アンダーシートボックス+シートバックポケット+カップホルダー[後席]+アンビエントライト[マルチカラー、ウエルカムファンクション機能付き]+harman/kardonロジック7サラウンドサウンドシステム+パノラミックスライディングルーフ[挟み込み防止機能付き]>(40万円) ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアム(4万1000円)/COMANDシステムナビゲーションフルセット(20万5200円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1050km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:422.5km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)※試乗車の都合で給油せず
参考燃費:10.1km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。












































