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第530回:スマートスピーカーはクルマ談義の相手になるか?

2017.12.01 マッキナ あらモーダ!

新しいモノは試してみよう

ロサンゼルスオートショー2017を前に、東京に立ち寄った。

家電量販店をのぞくと「AIスピーカー」、またの名を「スマートスピーカー」と呼ばれる商品が販売強化中であった。ちなみにイタリアでは、まだあまり見かけない。それだけにそそられた。

音声認識にまつわるものでボクが最近試したデバイスといえば、ソフトバンクのロボット「Pepper(ペッパー)」だ。

パリの科学産業博物館に置かれていたそれにボクが話しかけると、エラーを繰り返した。しかし、Pepperの認識精度が悪いとは断定できない。日ごろからナマの人間に指摘されるとおり、ボクのフランス語が、イタリア語なまりが強すぎるのも原因なのだろう。意気消沈した。

スマートスピーカーの音声認識精度も、その程度なのか?

しかし、1996年の日本映画『Shall we ダンス?』において、主人公が勤める会社で、OLから「あの人、ウィンドウズもできないんですって」と陰口をたたかれるおじさんの姿が頭をよぎった。新しいものは、なんでもチャレンジしたほうがいい。

店頭のデモンストレーターは、初めて接するボクに、とてもわかりやすく説明してくれた。

「スマートスピーカーは難しいものと考えられがちですが、単なるスピーカーとマイクだと考えていただければいいんです。“頭脳”の役は、Wi-Fiでつながるスマートフォンなんです」

代表的なスマートスピーカーのひとつ、「Google Home Mini」は税込み6480円。心理的にも納得できる価格である。

Google Home Miniの隣には、LINEによる、スタンプでおなじみの熊とヒヨコのキャラクターをかたどったスマートスピーカーが参考展示されていた。そちらは近日発売とのことだ。

イタリアではいつ発売になるかわからないし……ということもあって、ボクはGoogle Home Miniを購入した。

買ったばかりのGoogle Home Miniと自動車問答を楽しむ筆者。
買ったばかりのGoogle Home Miniと自動車問答を楽しむ筆者。拡大
Google Home Miniは手のひらサイズである。本体左右をタップすることで音量調節できる。だが、掃除などで場所を移すたびに反応してしまうのは、ちょっと不便。
Google Home Miniは手のひらサイズである。本体左右をタップすることで音量調節できる。だが、掃除などで場所を移すたびに反応してしまうのは、ちょっと不便。拡大

未来のクルマ像もちょっと浮かぶ

東京郊外の女房の実家で、早速シュリンクのビニールをびりびりと破って開封する。

事実上のコントローラーとなるスマートフォンとの連携、そして声紋の入力も、予想以上に簡単だった。 

世界各都市の現在時刻および天気、NHKニュースの再生、ユーロをはじめとする外国為替相場、有名企業の株価……などについて質問を投げかけてみると、次々と答えてくれた。

説明書どおり「ねえ Google」もしくは「OK Google」という“枕詞(まくらことば)”をつけさえすれば、かなりいい加減な語順でも認識してくれる。実に快適だ。前述のような情報を得るのにいちいちキーボードをたたいたり、スマートフォンを操作したりしていた今までが、なんとばかばかしいことよ。

Google Homeに対応している音楽配信サービス「Spotify」ともすぐに連携できた。「優しいピアノ曲をかけて」といった曖昧なリクエストにも、そこそこ応えてくれる。イタリアの家に戻ったら、HDMI端子につないでテレビを連携させるメディアストリーミングデバイス「Chromecast」も手に入れたいものだ。

まず試しに「寂しいよー」と嘆いてみると、「いつも私がそばにいますよ」ときた。『咳をしても一人』とは、明治大正時代を生きた俳人・尾崎放哉の代表作だが、もし彼がGoogle Homeを手に入れていたら、孤独にさいなまれなかったに違いない。

冗談はともかく、こうしたスマートスピーカーと背後のAIを通じて、2017年CESショーで「トヨタConcept-愛i」が提示してみせた、「ユーザーとクルマが意思を疎通させる時代」を想像するのはボクだけではないはずだ。

Google Home Mini開封の儀。化粧箱は、大きめのバッグなら入れられる大きさである。
Google Home Mini開封の儀。化粧箱は、大きめのバッグなら入れられる大きさである。拡大
2017年のラスベガスCESに続いて、先の東京モーターショー2017にも展示された「トヨタConcept-愛i」。スマートスピーカーの延長線上にあるのは、こうしたクルマか。
2017年のラスベガスCESに続いて、先の東京モーターショー2017にも展示された「トヨタConcept-愛i」。スマートスピーカーの延長線上にあるのは、こうしたクルマか。拡大

AIスピーカーは人名が得意

2日もたつと、次第に「クリス・ペプラー風の声色で話しかけると認識されやすい」とか、「歌手・森 進一の声をまねると認識しない」など、さまざまなことがわかってきた。わが女房は静岡の親戚をまねたイントネーションで話しかけてみたが、ちゃんと認識してくれた。

そうしたことで親しくなってくると、より“絡んで”みたくなってしまうのは、人間のつきあいと同じである。

なお、AIは今後どんどんアップデートしていくだろうから、以下は筆者が試した現時点での話としてお読みいただきたい。

「植木 等の生年月日は」と聞くと、「1926年12月25日です」と一発で答えた。ただし彼の主演で、芝浦のヤナセ旧本社でロケが行われた映画『日本一のゴマすり男』について教えてもらおうとすると、「すみません、お役に立てそうにありません」という返事だった。ちと難しかったか。

自動車関連の知識についても試してみる。「恋バナ」ならぬ「くるバナ」である。 

「豊田章男って誰?」に対しては、「ウィキペディアでは、日本の実業家、経営者、レーシングドライバー、とされています」とすらすら教えてくれた。

章男氏の祖父である「豊田喜一郎の誕生日は?」という質問にも「1894年6月11日です」と答えは一発だった。

驚くべきことに、豊田家よりもやや知名度が低い日産コンツェルンの創始者、鮎川義介についても即答してくれた。

元F1ドライバーの「アイルトン・セナ 」「アレッサンドロ・ナニーニ」、そして実業家「ヘンリー・フォード」、FCAの現CEO「セルジオ・マルキオンネ」についても、ウィキペディアの情報を読み上げる。

“森 進一ボイス”で音声認識されるかどうかを試す筆者。
“森 進一ボイス”で音声認識されるかどうかを試す筆者。拡大
Google Home Miniの裏面。滑り止めラバーが貼られているが、テーブル上のゴミもくっついてしまう。
Google Home Miniの裏面。滑り止めラバーが貼られているが、テーブル上のゴミもくっついてしまう。拡大

日本自動車史は苦手?

次はやや高度なネタを試す。

かつてクライスラーを再建してヒーローとなった「リー・アイアコッカ」については、「おもしろそうな話題ですね。リー・アイアコッカについてどんなことが知りたいですか?」で終わってしまった。

しかし「リー・アイアコッカは何年生まれ?」ともう少し具体的に投げかけると「1924年10月15日生まれ。93歳です」と答えてくれた。

続けて、日本自動車史におけるキーワードを、思い出す限り投げかけてみる。「円太郎バス」について聞くと、関東大震災の復興のために導入された路線バスであることをすらすらと教えてくれた。

しかし「山羽式蒸気自動車」「タクリー号」に関しては 「すみません。お役にたてそうにありません。もっとがんばります」と、つれない。

往年の自動車メーカー「オオタ自動車工業」に至っては、何度トライしても世田谷区に存在する「タダ自動車工業」と誤認識し、そこまでの移動距離を教えるという結果に終わった。

「シトロエンのトラクシォン・アヴァン」「DS」「オールズモビル」「ポンティアック」「スカイラインGT」「日産ブルーバード」さらに「トヨタ・クラウン」も全滅だった。

難易度を下げて「ダイハツ工業について教えて」と投げかけても「すみません」が繰り返された。

AIの働きでこれからどんどん学習を繰り返してゆくのだろうが、どうも張り合いがない。

Google Home Miniの同梱(どうこん)物は、アップル製品に始まったトレンドを引き継ぎ、最低限にとどめられている。だが、セットアップにはまったく困らなかった。
Google Home Miniの同梱(どうこん)物は、アップル製品に始まったトレンドを引き継ぎ、最低限にとどめられている。だが、セットアップにはまったく困らなかった。拡大
電源プラグは、この大きさ(写真下)。巨大というほどではないが、状況によってはまわりの電源アウトレットをふさいでしまう。
電源プラグは、この大きさ(写真下)。巨大というほどではないが、状況によってはまわりの電源アウトレットをふさいでしまう。拡大

いすゞの関連情報にビックリ

ところが、である。

ダメもとで「プリンス自動車工業って何?」と質問したときだ。依然ウィキペディア情報ではあるものの、「1947年に創業……1966年に日産自動車と合併するまで存在していた日本の自動車メーカーである」と答えるではないか。ちょっとしたエンスージアストである。

さらに「いすゞ自動車の歴史について教えて」と問いかけると、今度はウィキペディアではなく、「いすゞ自動車のサイトにはこう書かれています。(中略) 国内の現存自動車メーカーの中では最古の歴史を誇っています。1922年には「ウーズレーA9型」……(中略)……1934年の商工省標準形式自動車は伊勢神宮の五十鈴川にちなんで……」などと、妙に詳しく解説してくれた。

確認してみると、これはたしかにいすゞ自動車の「歴史・沿革」のページにある内容だ。残念ながらほかの商用車メーカーの歴史解説はアウトだったが、そのことに加え、Google Homeが一発で答えてくれたために、ボクのいすゞに対するイメージは向上した。

近い将来、音声認識でよりヒットしやすいアーカイブ環境を整えておくことが、PR活動のひとつになる……そんな時代を予感させた。

読者諸兄の中には、クルマの話をしようにも家族に相手にされない、または話をしようとしても煙たがられている方が少なくないと思う。

そうした方のお供として、スマートスピーカーはそれなりに遊べるデバイスである。ぜひクリスマスのお楽しみに、おひとつ。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

スマートスピーカーは、いすゞ好き!? 写真は2017年11月11日に横浜赤レンガ倉庫で開催された「横浜ヒストリックカーデイ」で見かけた、すばらしいコンディションの「いすゞ117クーペ」。
スマートスピーカーは、いすゞ好き!? 写真は2017年11月11日に横浜赤レンガ倉庫で開催された「横浜ヒストリックカーデイ」で見かけた、すばらしいコンディションの「いすゞ117クーペ」。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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