スバル・レガシィ アウトバック リミテッド(4WD/CVT)
アクティブ家族のために 2018.01.19 試乗記 30年を超える歴史を持つ“筋金入り”のクロスオーバーSUV「スバル・レガシィ アウトバック」が、マイナーチェンジで商品力をアップ。スバルのこだわりが詰まったフラッグシップモデルの実力を、スキーシーズンを迎えた冬の霧ヶ峰で確かめた。四輪駆動にかけるスバルのこだわり
<スバル=シンメトリカルAWD=水平対向エンジン+四輪駆動>という定理は、広く知られるところとなった。重量バランスのよさを生かして適切な駆動力配分を行い、滑りやすい路面から高速道路まで、どんな状況でも高い操縦安定性を実現する。スバルだけが持つ技術だから、この唯一無二の駆動システムが購入動機となるケースは多いだろう。
同じ方式ですべてのモデルをカバーするのではなく、4つのバリエーションが用意されている。メカニカルなシステム1種類と、電子制御を用いたシステム3種類だ。レガシィ アウトバックには、電子制御システムの中ではベーシックな「アクティブトルクスプリットAWD」が採用されている。スポーティーな走りのモデルでは回頭性最優先のシステムが使われているが、アウトバックはドライバーが走りを楽しむだけでなく、家族を乗せて遠くまで出かけることを想定したモデルである。クルマの性格を考え、安定性重視のシステムが選ばれているのだ。
SUVばやりで新しいモデルが続々と誕生しているが、アウトバックの歴史は古い。1994年に「レガシィ」をベースにしたクロスオーバーSUVとしてアメリカで発売され、翌年日本にも導入された。当初「レガシィグランドワゴン」という名前で売られたことでもわかるように、大きくて背の高いワゴンとして出発している。やたらにプレミアムをアピールする威圧的なSUVとは出自が異なる。
だから、運転感覚は至って普通である。着座位置はセダンと変わらない高さだし、実はスタッドレスタイヤを装着していることさえ意識せずに高速道路を飛ばせる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“ぽっと出”のSUVとはわけが違う
このところは<スバル=アイサイト>という定理のほうがシンメトリカルAWDよりも有名になっているが、もちろんアウトバックにも標準装備。2017年秋のマイナーチェンジで、アイサイトの機能もグレードアップされた。後退時自動ブレーキシステムを追加し、前走車追従機能付きクルーズコントロールの車速域を0km/h~約120km/hへと拡大している。目的地まではもちろんこのクルーズコントロールとレーンキープ機能を使って楽ちんドライブを決め込む。加減速などのレスポンスのよさは、相変わらず一級品だ。
向かったのは長野県の霧ヶ峰高原。すでにスキー場が営業を始めており、山を登っていくと路面がだんだん白くなっていく。途中で見つけたチェーン装着場を華麗にスルーして運転を続ける。ドライバーは何もしなくていい。アクティブトルクスプリットAWDは前60:後ろ40のトルク配分を基本にしているが、路面や走行状態に合わせて瞬時に配分を変える。前輪が滑ったのを感知すると後輪へのトルクを増やして駆動力を確保するらしいが、運転していて気づくことはない。
深い雪にハマってしまった時のために、「X-MODE」が用意されている。エンジンやトランスミッション、ブレーキ、VDCを統合制御し、路面へのトラクション伝達能力を一段と高める電子制御システムだが、スキー場のまわりを走るだけならお世話になる場面はない。凍結路面の下り坂で使う「ヒルディセントコントロール」も同様である。いざという時のための、安心機能なのだ。
試乗にはオールシーズンタイヤを装着したFF車も同行した。雪道でも不安なく走れることに感心したが、やはり発進時にはタイヤが一瞬空転する。アウトバックの盤石ぶりは、当然ながらワンランク上である。凝ったデザインを採用したSUVが増殖する中で、アウトバックは地味に見えるかもしれない。でも、使い勝手や操縦性能をしっかり見極めれば、高いアドバンテージを持っていることがわかる。見た目だけのファッションSUVとは違うのだ。どこにでも出かけていくアクティブな家族には、実質重視のアウトバックが似合う。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
【スペック】
全長×全幅×全高=4820×1840×1605mm/ホイールベース=2745mm/車重=1580kg/駆動方式=4WD/エンジン=2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ(175ps/5800rpm、235Nm/4000rpm)/トランスミッション=CVT/燃費=14.8km/リッター(JC08モード)/価格=356万4000円

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。









































