第482回:いまやグッドイヤーの主戦力!
「E-グリップ」シリーズの2つの新製品を試す
2018.02.15
エディターから一言
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グッドイヤーが2つの新製品「エフィシエントグリップ コンフォート」「エフィシエントグリップ パフォーマンスSUV」を日本に投入。静かさを武器にした乗用車用コンフォートタイヤと、全方位的進化を図ったSUV用プレミアムタイヤの実力を試す。
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新製品は高い静粛性が自慢
ブリヂストンやミシュランと並ぶ、“世界3大タイヤメーカー”のひとつに数えられるのが、アメリカ発のグッドイヤー。約120年という歴史を持つそんなブランドから、2種類のニュータイヤが日本市場へと投入された。
“パフォーマンスコンフォート”をうたう乗用車向けオンロードタイヤの「エフィシエントグリップ コンフォート」(以下、E-グリップ コンフォート)と、ラグジュアリーSUVを対象に開発された、やはりオンロード向けの「エフィシエントグリップ パフォーマンスSUV」(以下、E-グリップ パフォーマンスSUV)がその2つ。ちなみに、これらを含め「E-グリップ」との略称で呼ばれるアイテム群は、現在のこのブランドの主力商品でもある。
「騒音エネルギーベースでパターンノイズが28%、ロードノイズが7%減少……」と、まずは従来製品「イーグルLS EXE」との具体的な比較指標を持ち出すことで、その静粛性の高さを分かりやすくアピールするのが、14~20インチ径の中に全51サイズが用意されるE-グリップ コンフォート。そのものずばりな「コンフォート」の名が与えられたことからも分かるように、このモデルで代表的な売りとしてうたわれるのは快適性、特に高い静粛性だ。それをシャープなハンドリングと高次元でバランスさせた、「街乗りに求められる快適性を追求したコンフォートタイヤ」というのが基本コンセプトであったという。
他の性能を犠牲にしないための工夫
なるほど、そんなE-グリップ コンフォートの見どころが、まずは高い静粛性を獲得するべくデザインされたトレッドパターンにあることは明白だ。
ショルダー部分のピッチバリエーションは、従来製品の69から、78へと1割ほどの増加。こうして細分化を行うことで路面をたたくピッチ音のピークを分散させ、相対的に目立たないようにするという細工が施されているわけだ。
ただし、そんな静粛性への配慮は、得てして運動性能やウエット時のグリップの低下につながるもの。そこでこのタイヤの場合、接地面積を増して直進性も向上させるべく、従来品以上に幅の広いセンターリブを採用。接地形状もリファインしてコーナリング時に中央に集中しがちだった接地圧を均一化させることで、パターン全体を路面へと追従させ、ハンドリング性能を向上させている。
ノイズの低減のみならず、キャップ部分のコンパウンドにより柔軟性に富んだアイテムを用いたり、段差の乗り越し時にたわみが均一化するサイドウオール形状を採用したりするなど、路面からの衝撃を緩和して上質な乗り心地を追求する工夫も採り入れられた。
加えて、サイドウオールを薄く軽量化することで発熱を抑制し、燃費性能も向上させるなど、最新の乗用車に求められる諸性能をバランスよく高めることに腐心しているのが、このモデルの特徴でもある。
全方位の進化を通してプレミアム性を高める
一方、バリエーション展開を17~20インチとし、ラグジュアリーなSUVオーナーをターゲットに「高い静粛性と快適性、ウエット性能の実現」をアピールするのがE-グリップ パフォーマンスSUV。こちらは同じSUV用のE-グリップでも、この先も併売される現行品「SUV HP01」に対して、よりプレミアム志向を強めた新カテゴリーを担うアイテムという設定だ。
パターンノイズ低減のためにブロックピッチ数を細分化し、ショルダー部分に気柱共鳴音を低減させるグルービングを施す、というアイデアは、基本的に乗用車用のE-グリップ コンフォートと同じ考え方。一方で、ブレーキング時におけるショルダー部分の接地面積確保を狙ったことで、「ウエット時に15%、ドライ時でも9%の制動性能向上を実現」というのは、このモデルならではのうたい文句となる。
「路面追従性を高める新ポリマーの配合でウエットグリップ力が向上し、正確なステリアリングレスポンスを実現」というフレーズは、いかにも名称中にある“パフォーマンス”という言葉を連想させるもの。ビードに特徴的な六角形状を採用したのも、ステアリングレスポンスを高めることに大きな効果があったという。
かくして、こちらが狙ったのは快適性はもとよりドライ/ウエット路面でのグリップ力やハンドリングなど、さまざまな性能のバランスのよい向上。そのコンセプトによってさらなるプレミアム性をかなえようというわけだ。
もう少し違う環境で試したい
そんなグッドイヤーの最新モデル2タイプを、E-グリップ コンフォートは「トヨタ・マークX」や「プリウスPHV」で、E-グリップ パフォーマンスSUVは「レクサスRX」や「ボルボXC60」などで、前出の既存商品と比較するというカタチでチェックを行った。
ただし、テストの当日は激しい降雨。走行時間や距離も非常に限られたため、得られた印象も極めて限定的だった。
マークXやプリウスPHVで粗粒路などを走行すると、なるほど新タイヤが静粛性に配慮したアイテムであることは明白。粗粒路面ではロードノイズのボリュームが確かにより抑えられていたし、パターンノイズは「ほとんど気にならない」というレベル。ただし、今回の条件下ではステアリング操作初期の応答性がやや優れる印象を受けたほかは、「運動性能全般はあまり変わっては感じられない」というのが現実だ。
さらに、E-グリップ パフォーマンスSUVの場合には、比較を行った従来品との間に「目立った大きな違いは感じられなかった」というのが率直な感想だった。何しろ、前述のように土砂降りのコンディションの中で、許された最高速は70km/h程度。しかも横方向のグリップ力チェックは簡単なパイロンスラロームのみ、という条件下では、限定的なコメントさえ言えるほどには走り込めなかったのだ。
いずれにしても、グッドイヤーの主力タイヤであるE-グリップシリーズのバリエーションが、カテゴリー的にもサイズ的にもワイド化されたのは歓迎すべき事柄。これを機に、グッドイヤーのタイヤそのもののプレゼンスも、高まっていく方向にあるのは間違いなさそうだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。