アルファ・ロメオ・ジュリア ヴェローチェ(FR/8AT)
勝負はこれから 2018.05.03 試乗記 プレミアムブランドとしての復権をもくろむアルファ・ロメオが、満を持して投入したDセグメントのスポーツセダン「ジュリア」。新たに設定された280psのFRモデルに試乗し、新世代アルファの課題を浮き彫りにする。“脱フィアット化”でブランド復権をもくろむ
1910年にブランドが設立された当初の“強いレーシングカーメーカー”だった時代を、今一度敬意を持って振り返り、これまでのように個性あふれるデザインのみならず、「固有のハードウエア」という部分にも力を入れ直すことでブランドの再定義をもくろむ昨今のアルファ・ロメオ。
具体的には、親会社であるフィアットの作品との共有性を高めるべく採用してきたFFレイアウト前提のボディー骨格などを、この期に及んで“見直し”。多額の投資を行って、全く新しいFRレイアウトをベースとした骨格を開発・採用することで、あらためて純粋なプレミアムブランドとしての地位を確立させよう、というのが、FCAグループのCEOであるセルジオ・マルキオンネ氏が考えるすこぶる野心的なシナリオなのだ。
ちなみに、「124スパイダー」が当初アナウンスされていたアルファ・ロメオではなく、フィアットとアバルトのブランドに属することとなったのも、急転直下に決定されたそんなシナリオの結果と推測ができる。
いかにオープンボディーの持ち主とはいえ、「『マツダ・ロードスター』がベースのモデルでは、新時代のアルファ・ロメオが必要とするプレミアムのレベルには達しない」というのは、なるほど前述の考え方を基準とすれば正しい判断であるのかもしれない。
FRならではのプロポーションと前後重量配分
かくして、満を持しての誕生となったのが1960~70年代に人気を博した往年のモデル名を冠した新生ジュリア。そのボディーサイズに目をやれば、このモデルが“ジャーマン3”の作品を中心に、すでに激しい戦いを繰り広げているプレミアムDセグメントへと投じられた挑戦者であることは明白。まずはセダンのみでの発表となったが、機が熟した折には、よりルックスオリエンテッドなクーペボディーの追加などもあり得ることは、当然想定内というものだろう。
スラリと伸びたフロントフードに、後ろ寄りのキャビンセクション。すなわち、なんとも明瞭なる“ロングノーズ&ショートデッキ”のプロポーションは、あらためて自身がFRレイアウトの持ち主であることを、無言のうちに強くアピール。ちなみに、今回テストドライブを行った、「後輪駆動仕様のヴェローチェ」の前後軸重は、820kg/810kgとほぼ完璧な50:50の配分。既存の4WD仕様に比べると、車両重量はちょうど40kgのマイナスという関係となる。
そこに8段ステップATとの組み合わせで搭載される、最高出力280psを発するツインスクロールターボ付きの2リッター4気筒ガソリンエンジンは、4WDモデルと同一のユニット。専用デザインのバンパーやツインエキゾーストパイプ、スポーツレザーシートなど、このグレードならではの装備群も4WDモデルに準じた設定だ。
パワープラントの出来栄えはBMWに比肩する
そんな最新のジュリアで走り始めると、まずなんとも感心させられたのはその動力性能だった。
単に加速力にたけているというだけではない。低回転域から高回転域まで、スムーズかつ回転の伸びに伴って活気を増していく様は、エンジンコンストラクターとして名をはせた、あのBMWの4気筒ユニットをしのぐとすら感じられるもの。そんなエンジンのキャラクターを見事に引き出すトランスミッションの出来栄えや、排気音のみでごまかすことなく、いかにも緻密な機械が生み出していることが連想できるメカニカルなサウンドも、そんな好印象をさらに引き立てる原動力となっていた。
低回転トルクが思いのほか強力で街乗りシーンではカタログスペックから察する以上に活発に走ってくれる、というのは、確かにいわゆる“ダウンサイジングターボエンジン”を搭載したモデルでは昨今頻繁に味わえるテイスト。しかし、このモデルの場合はそうした“ありがちな部分”のみではなく、アクセルペダルを深く踏み込んで高回転域へと至った場面でも頭打ち感を示すことなく、「上まで回してみたら期待外れ」という感覚がまったく伴わないのが特筆すべきポイントなのである。
正直、アルファ・ロメオの作品で「ここまで動力性能に感銘を受ける」というのは、われながらちょっと意外でもあった。もちろん、フラッグシップグレードの「クアドリフォリオ」、すなわちフェラーリユニットとの血縁関係が指摘をされるツインターボ付きV6エンジン搭載モデルのような、“怒涛(どとう)の速さ”はそこにはない。けれども、フィーリング的にはそんな特別な心臓にも勝るとも劣らない価値を味わわせてくれるのが、ヴェローチェの4気筒エンジン+8段ステップATから成るパワーパックなのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
今後のためにも改善してほしい
一方で、当初はきっと“そこ”でこそ感動をさせてくれるのだろう、と期待をしたフットワークに、むしろちょっとばかり精彩を欠く印象を覚えてしまったことも、また意外な発見だった。端的に言って、このモデルのフットワークの仕上がりは、自身が予想と期待をしていたレベルには達していなかったということだ。
舗装の行き届いた完全に平滑な路面上での振る舞いは、このクラスのスポーティーなセダンとしては納得のいくもの。前述した前後が均等な重量配分もあってか、4輪がしっかりと仕事をしながら、コーナーをヒラリヒラリとクリアしていく様は、ライバルの中にあっても特にこのモデルが強く意識したであろうBMWの「3シリーズ」と比べても、決して見劣りしない人とクルマの一体感を提供してくれる。
が、ひとたび路面が荒れ始めると時に大きな揺すられ感に見舞われるなど、途端にボディーに無駄な動きが目出ってしまう。いかに「お金の掛け方が違う」とはいえ、同じジュリアでもなかなか心地良いフットワークを味わわせてくれたフラッグシップのクアドリフォリオの仕上がりとは、かなり大きな印象の違いがあると言わざるを得ないのだ。
そもそもジュリアシリーズの場合、クアドリフォリオ以外ではランフラットタイヤが装着されるが、今回のモデルもすでに走りだしの早々から「それを履きこなせていない」感が強かった。すなわち、街乗りシーンでも路面凹凸を拾った際に、それに伴うとがった波形の振動が、時に不快な印象へとつながってしまうのだ。
歴史と伝統あるブランドの再構築への期待を込めて、ついに世に送り出された新型ジュリアが“価値ある一台”であることにもちろん異論はない。けれども、スマホとのミラーリングで済ませようというナビゲーションシステムの設定や、一部にチープさが認められるインテリアの素材感、そして前出の乗り味など、まだ「煮詰めの甘さ」が想起される部分も皆無ではない。
何しろ、メーカーをあげて、そして国をあげての群雄割拠というのがこのカテゴリーの今の状況。「勝負はこれから」なのである。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュリア ヴェローチェ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4655×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1630kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:280ps(206kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2250rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91Y/(後)255/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3 ランフラット)
燃費:12.0km/リッター(JC08モード)
価格:587万円/テスト車=592万2380円
オプション装備:Alfa RomeoオリジナルETC(1万1340円)/フロアマット プレミアム(4万1040円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:4473km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:598.3km
使用燃料:50.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.9km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。













































