ポルシェ911カレラT(RR/7MT)
うまくてゴキゲン 2018.05.22 試乗記 徹底した軽量化やパワートレインの変更などにより、強烈なドライビングプレジャーを追求したという「ポルシェ911カレラT」。母国ドイツの道でむちを当ててみると、一段と凝縮された“911のよさ”を味わうことができた。シンプルにして高性能
ポルシェのブランド名が初めて冠されたモデル――すなわち、シャシーナンバーが001の「タイプ356」が誕生して、今年でちょうど70年。そうした歴史の中でも最も著名な作品はもちろん、この356の後継として初代モデルが1964年に登場し、2011年デビューの現行型で7代目となる「911」シリーズだ。
“猫背型”のボディー後端の低い位置に水平対向エンジンを搭載するという特徴は、初代誕生時から一貫したもの。356のユーザーを受け入れるべく、廉価版として企画され4気筒ユニットを搭載した当初の「912」を除けば、その心臓が6気筒に限られることも、このシリーズならではの重要な記号となっている。
クーペに「カブリオレ」、そして「タルガ」と、3種類のボディーを用意することにはじまり、世界のスポーツカーの中にあっても同じシリーズ内に例外的なまでに多彩なバリエーションをラインナップするのは、長い時間をユーザーとともに歩んできた、このモデルならではの“勲章”といっていい。
というわけで、現行991型のライフもそろそろ後半という今のタイミングになって追加されたのが、911カレラTという名を与えられた新バージョンである。
「ボディータイプはクーペで、駆動方式はRRのみ」というこのモデルの狙いどころは、「911の純粋主義を象徴するニューモデル」という点にある。エンジンやボディーの骨格は「911カレラ」用のアイテムをそのままに使い、リアシートは廃止、リアとリアサイドには軽量ガラスを採用、さらに吸音材の削減などによって軽量化をさらに徹底した。
一方、カレラ比で20mm、通常の電子制御式可変減衰力ダンパー「PASM」装着モデル比でも10mmのローダウンとなる「PASMスポーツシャシー」や、同じくカレラ比で1インチ大きく1サイズ幅広のシューズを標準採用するなど“走りへのこだわり”はカレラ以上だ。ちなみに、カレラでは選択不可能なリアのアクスルステアリングをオプション装着できるのも、このグレードならではの特権。そんなカレラTの車両重量は、「同等装備のカレラに対して20kgマイナス」と報告されている。