MINIクーパーS コンバーチブル(FF/7AT)
小さな高級車 2018.05.25 試乗記 現行型MINIの3モデルが、デビューから4年を経て大幅にマイナーチェンジ。デュアルクラッチ式ATの採用とサスペンションの改良は、このクルマにどんな変化をもたらしたのか? スペイン・マヨルカ島での試乗で感じた、進化の程をリポートする。“愛されキャラ”のさらなる進化
現行モデルで3代目となるMINIが、未来を見据えたマイナーチェンジを行った。日本でもその発表がなされたばかりで、『webCG』でも詳細は報告されているが、その内容は7段DCTの搭載と、内外装の磨き上げ。3代目となる「F50」系は登場から4年半の時間が経過しているから、フツーのクルマであれば販売戦略上の小さなテコ入れとも取れるお化粧直しだが、これが世界的な“愛されキャラ”であるMINIであることを思えば、メーカーならではの楽しさの追求と感じられ、また動力性能的にはさらに奥深い熟成が見られた。
まず人目を引くのは、これまで半円球形状だったデイライトが完全なリングタイプとなったLEDヘッドランプだろう。トピックとしては、オプション装備となるがハイビームに対向車への幻惑防止機能を持つ「マトリックスヘッドライト」が今回から用意された。最近では国産Bセグメントにも「ハイ/ロー切り替え式」ライトが用意されているが、このマトリックス式は細かなLED球を装備することにより相手に届く部分だけをロービーム化できるライト。高級車特有の装備というイメージがある最先端のシステムだが、これはまさにMINIがBMWグループの一員だからこそなしえたアップグレードオプションだと言えるだろう。
さらにテールランプが、ユニオンジャックを模したLEDライトとなっているのも凝った演出。対してノーズおよびテールのエンブレムはこれまでの立体的な形状から平べったくなったが、これは昨今のトレンドである“フラットデザイン”を意識したものなのだとか。
さらにインテリアに目を移すと、その特徴的なセンターメーターに収まるナビゲーションシステムがタッチパネル式となった。日本仕様ではどうなるのか不明だが、現地では既に4G機能による各種サービスが始まっており、筆者のスマホもすぐにWi-Fiへとコネクト。遠く離れた日本の様子がネットやSNSですぐに確認でき、海外の様子を友人や家族にすぐに伝えられる楽しさが味わえた。
シームレスな変速マナーが身上
この他にも、MINIらしい遊び心アイテムとしては自分の好みで絵柄や文字を入れられるウエルカムライトや、ユニオンジャックのイルミネーションが浮かび上がるインパネなどがある。極めつけは、3Dプリンターを用いてスカッフプレートなどをオリジナルで作れること。これは専用のオンラインシステムからオーダーするようだった。
こうした、小さいながらもオリジナリティーをふんだんに盛り込める楽しさは、クルマを長く愛する上でのスパイスとなる。それこそ“クラシック・ミニ”や、「フォルクスワーゲン・ビートル」が得意としていた技である。日本でこれができるのは「ロードスター」くらいのものだから、マツダにもここは意識してほしいところだ。
さて本題の7段DCT搭載だが、これは想像以上にMINIのトータルバランスを底上げしていた。試乗車は「コンバーチブル」の「クーパーS」で、「ジョンクーパーワークス」に次ぐハイパワーなモデルだったが、むしろその動力性能をデュアルクラッチ式ATが遺憾なく発揮するというよりは、実にシームレスで快適な、それこガラケーからスマホに変わったときのような使いやすさが目立ったのである。
BMW側もかなり意識していたのだろう。まずシフトレバーは縦に長いシンプルなピアノブラックカラーがクールで、スマホ世代の操作系を強く意識している。シフトパターンは「R-N-D」と続き左に倒すとマニュアルモードとなるのは「BMW M2クーペ」や「M3」「M4」と同様で、パーキングボタンを含め、その操作感は軽くかつ心地よいクリック感がある。かつてのデザインコンシャスなノブも懐かしいが、あのゴリゴリと武骨だった操作感がシームレス化されたのは、人が直接操作する部分だけに大きな進化だと言えるだろう。
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ドライバビリティーが大きく変わった
そもそもBMWがこの期に及んでMINIにDCTを投入したのは、環境負荷の関係からだ。今回のパートナーである「クーパーS コンバーチブル」を例に挙げると、その燃費性能はNEDC複合モードで5.6-5.5リッター/100km(約17.9-18.2リッター/km)となっており、その数値は従来型6段ATの5.8-5.6リッター/100km(約17.2-17.9リッター/km)をわずかだが上回っている。日本のJC08モードに当てはめると実は従来モデルより数値は下がっているらしいが、現状でもJC08モードより欧州モードの方が実用的だという声が多く、実燃費は向上していると期待したい。
実際に走ってみても、この変更はMINIの印象を大きく変えていた。トルコンAT時代で唯一気になっていた変速レスポンスの歯がゆさが解消され、隙のない加減速によって大きくそのドライバビリティーを高めていたのである。
ただ前述した通り、そのフィーリングはたとえマニュアルモードに入れても、Mシリーズのようなダイレクト感を第一としたレーシングスポーツ的なものではない。トルコンATで感じたあの“一瞬の間”を取り去ったことが、最大のセリングポイントなのである。いやあまりに自然だからこれを意識すらしないドライバーも多くいるはずだが、これまでのMINIオーナーが乗ったら、感度の高い人たちが多いだけにその差をうらやむのではないかと思う。試乗車のステアリングにはパドルが付いてなかったが、シーケンシャル式マニュアルシフトも直感的に運転しやすく(加速Gに伴いシフトを引き、減速Gを感じてシフトを押せる)、パドル派の筆者をして運転が楽しいと思えた。
こんなコンパクトカーは他にない
さらに喜ばしかったのは、何のアナウンスもなかったのだがその足まわりが一層のしなやかさを得ていたことだ。MINIといえば“ゴーカートフィーリング”が代名詞だが、新型の操舵感にはクイックさと引き替えに乗り心地を悪化させる、ゴツゴツとした硬さが感じられなかったのである。どうやらこれはオプションの可変式ダンパーが大きく関係しているのではないかと思う。コンプ側(縮み側)を緩めたダンパーは路面の凹凸を絶妙にいなし、ステアすればそのボディーを見事にロールさせていく。攻撃的なダイレクト感こそないものの、それが退屈だとは感じない。フロントタイヤには微蛇から入力が加わるようで、操作に対するノーズの反応はリニア。かつ舵を切り込んでいくほどに接地感を高めていき、リアサスペンションも粘りすぎることなく旋回姿勢を整えてくれるのだ。
また、この可変ダンパーは、今回からインパネへと移設されたモード切り替えスイッチを「スポーツ」に入れることで、バンプ側のしなやかさはそのままに、伸び側の減衰力を絶妙に引き締める。するとコンフォートモードでは気になっていた不安定さは影を潜め、ショートホイールベースのMINIがバシッ! とまっすぐ走るようになる。カブリオレとは思えないしっかりとしたボディーと共に、快適なスーパークルージングを可能にしてくれるのだ。
だからここに慣れ親しんだ2リッターターボの加速が加わると、思わずうっとりしてしまう。確かに425万円という価格には考えさせられるものがある。しかし逆を言えばこれだけ完成度が高くて、エモーショナルで、ラグジュアリーなBセグコンパクトはなかなかない。小さな高級車とはよく言われるフレーズだが、これを実践するのは何より大変。なぜならそのサイズが、結局は“割高感”を高めてしまうからだ。
そういう意味で、そこそこ大きいながらも小さいMINIは、独自の世界観を引き継ぎ、そこにプレミアム性すら与えることに成功した。ベーシックなモデルが欲しければ「ONE」もある。いま小さな高級車を求めるならば迷わず、ボクはMINIのクーパーSを選ぶ。
(文=山田弘樹/写真=BMW/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
MINIクーパーS コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3860×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1350-4600rpm
タイヤ:(前)205/40R18 86W/(後)205/40R18 86W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:425万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は日本仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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