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メルセデス・ベンツG350d(4WD/7AT)/GLC220d 4MATICスポーツ(本革仕様)(4WD/9AT)

“旧型”とは呼ばせない 2018.06.09 試乗記 生方 聡 メルセデスのSUVにイッキ乗りできる、ぜいたくな試乗会が開催された。リポーターがチョイスしたのは、デビューから40年の集大成となる従来型「Gクラス」と、売れ筋ミドルサイズの「GLC」。とりわけ印象に残ったのは、Gクラスの独自の世界観と完成度の高さだった。

7車種41モデルをラインナップ

SUVのブランドと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはジープやランドローバーではないだろうか。

世界的な“SUVブーム”により、主要メーカーのほとんどがSUVに力を入れている状況だから、老舗ブランドもうかうかしてはいられないわけだが、そんな中で、SUVの販売を確実に伸ばしているのがメルセデス・ベンツである。

メルセデス・ベンツ日本によれば、日本で販売しているSUVは7車種41モデルに及び、その数は国内で展開するブランドとしては最多だという。コンパクトSUVの「GLA」、ミドルサイズSUVの「GLC」、中核モデルの「GLE」、ラグジュアリーSUVの「GLS」、そして、最高級クロスカントリーモデルの「Gクラス」。さらに、GLCとGLEにはクーペスタイルの「GLCクーペ」と「GLEクーペ」がある。いずれもモデル名が「G」で始まるのも、メルセデスSUVの特徴である。

この全方位的なSUVラインナップにより、2017年の国内販売に占めるSUV比率は22%で、2015年の16%から6%のアップ。ボディータイプのシェアも、セダンに次いで多いという。地域別では特に関東での人気が高く、高級車種は東京、名古屋、大阪に集中。どうりで東京の街では、セダンやステーションワゴンと同じくらい、メルセデスのSUVを見る機会が多いわけだ。

そんなメルセデスのSUVのうち、いま一番気になるのがGクラス。1979年の登場以来、確固たる地位を維持してきたメルセデスSUVのシンボルが、ついにフルモデルチェンジを受けたのは、皆さんもご存じだろう。

東京・六本木のブランド体験施設、メルセデス ミーに集められた、メルセデス・ベンツのSUVモデル。写真手前から「GLA」が2台と、「GLC」「GLCクーペ」「GLE」「GLS」。
東京・六本木のブランド体験施設、メルセデス ミーに集められた、メルセデス・ベンツのSUVモデル。写真手前から「GLA」が2台と、「GLC」「GLCクーペ」「GLE」「GLS」。拡大
こちらは「E220d 4MATICオールテレイン」(写真手前)と、「Gクラス」が3台。
こちらは「E220d 4MATICオールテレイン」(写真手前)と、「Gクラス」が3台。拡大
まずは、トーンを抑えた赤色「チューライトレッド」のボディーカラーをまとった「G350d」をテスト。車両本体価格は1080万円。
まずは、トーンを抑えた赤色「チューライトレッド」のボディーカラーをまとった「G350d」をテスト。車両本体価格は1080万円。拡大
続いてテストしたのは「GLC220d 4MATICスポーツ」の本革仕様車。こちらの車両本体価格は758万円。
続いてテストしたのは「GLC220d 4MATICスポーツ」の本革仕様車。こちらの車両本体価格は758万円。拡大
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孤高のGクラス

Gクラスというと、こんな出来事を思い出す。かれこれ10年以上も前になるが、サッカーJ1の某クラブの練習場を訪れたときのことだ。選手たちがどんなクルマに乗って現れるのだろうとチェックしていると、いわゆるスーパースポーツはまれで、多くの選手が輸入プレミアムSUVを愛用していた。聞けば「僕らサッカー選手は、文字通り体が資本ですから、万一事故に遭っても体を守ってくれるSUVがいいんですよ」と、もっともらしい答えが返ってきた。

中でも人気はメルセデス・ベンツのGクラスで、若手の選手などは「○○選手のように、僕もいつかは“ゲレンデ”に乗りたい」と、目を輝かせながら話してくれたのが、いまでも印象に残っている。大切な身を守るだけでなく、ステータスシンボルとしての役割を果たすGクラスは、ある意味スーパースポーツよりも魅力あるクルマだったのだ。

その時点で約30年目というGクラスだったが、40年目を迎えたいまでも孤高の存在であることに変わりはない。

海外ではすでに新型の販売がスタートし、日本にも間もなく新型が上陸することになるが、あらためて最終モデルに乗ってみると、その強いキャラクターに圧倒される。

例えばそのたたずまい。いまどき珍しい直線的なデザインのおかげで、ひと目でそれとわかるGクラスのエクステリア。それでいて、古くさい感じがしないのが不思議なところだ。

2018年でデビューから40年目を迎えた「Gクラス」。新型の導入が間近というタイミングでの試乗となったが、古くさいという印象は皆無だった。
2018年でデビューから40年目を迎えた「Gクラス」。新型の導入が間近というタイミングでの試乗となったが、古くさいという印象は皆無だった。拡大
奥行きのないダッシュボードや助手席の前方に取り付けられたバー(グラブハンドル)などは、「Gクラス」ならではのディテールだ。
奥行きのないダッシュボードや助手席の前方に取り付けられたバー(グラブハンドル)などは、「Gクラス」ならではのディテールだ。拡大
高速道路を行く「Gクラス」。直線基調のデザインは、外観上の個性として際立っている。
高速道路を行く「Gクラス」。直線基調のデザインは、外観上の個性として際立っている。拡大

独自の世界を満喫する

高い位置にある運転席に登り、コックピットを見渡すと、メーターパネルやセンタークラスター、ステアリングホイールなどからは現代的な印象を受けるものの、ドライバーとフロントウィンドウとの距離が近く、ダッシュボードが薄いあたりは、さすがに現代のクルマとの違いを感じずにはいられない。

今回試乗したのは3リッターV6クリーンディーゼルモデルの「G350d」。Gクラスでは一番人気のグレードである。

すっかり乗用車的になった他のSUVとは異なり、アイポイントの高い運転席からは、まわりのセダンやステーションワゴンのルーフが見下ろせるほどだ。角張ったボディー形状とボンネットに配置されたウインカーのおかげで車両感覚は実に把握しやすい。

ドアをガチッと閉め、早速走りだすと、剛性の塊のようなボディーが、しっかりと乗員を包み込んでくれる感覚だ。いかに乗用車的になったとはいえ、クロスカントリー的な動きが色濃く残るGクラスは、乗り心地では他のSUVに及ばないが、本格的クロスカントリービークルとしての性能を秘めていることを考えれば、十分に満足できる仕上がりである。

最大トルクの600Nmを1600rpmから2400rpmで発生する3リッターディーゼルエンジンは、2550kgという重量級のボディーをストレスなく加速させる実力を誇る。はじめのうちはややスローなステアリングに戸惑ったが、しばらくすると、Gクラスならではの個性あふれる感覚が妙に心地良く、あえてフルモデルチェンジしなくともよかったのではないか……などと考えてしまうほどだ。

なんともスローな独特の操舵感をもたらしていたリサーキュレーティングボール式ステアリングは、新型ではラック&ピニオン式に変更される。
なんともスローな独特の操舵感をもたらしていたリサーキュレーティングボール式ステアリングは、新型ではラック&ピニオン式に変更される。拡大
搭載される3リッターV6ディーゼルターボエンジンは、最高出力245ps、最大トルク600Nmを生み出す。JC08モード燃費は10.3km/リッターと公表されている。
搭載される3リッターV6ディーゼルターボエンジンは、最高出力245ps、最大トルク600Nmを生み出す。JC08モード燃費は10.3km/リッターと公表されている。拡大
アイポイントの高い運転席には、文字通りよじ登るように乗り込む。テスト車にはセットオプションの「ラグジュアリーパッケージ」に含まれるレザーシートが装着されていた(標準の表皮はファブリック)。
アイポイントの高い運転席には、文字通りよじ登るように乗り込む。テスト車にはセットオプションの「ラグジュアリーパッケージ」に含まれるレザーシートが装着されていた(標準の表皮はファブリック)。拡大
タイヤサイズは前後とも265/60R18で、テスト車にはブリヂストンのSUV向けプレミアムタイヤ「デューラーH/P 680」が装着されていた。
タイヤサイズは前後とも265/60R18で、テスト車にはブリヂストンのSUV向けプレミアムタイヤ「デューラーH/P 680」が装着されていた。拡大

安心してお薦めできるGLC220d

G350dから“現代の”「GLC 220d」に乗り換えると、「Cクラス」よりはアイポイントが高いとはいえ、運転席からの眺めもコックピットのデザインも乗用車的で、セダンやワゴンから違和感なく乗り換えられる仕上がりになっている。それでいて、キャビンやラゲッジスペースにはワゴン以上の余裕があり、アクティブなライフスタイルをイメージさせるなど、SUVの魅力が詰まっている。

2.2リッター直列4気筒ディーゼルターボと9段オートマチックトランスミッションの組み合わせは低回転から力強くスムーズで、発進から加速に余裕がある。ディーゼルエンジン特有のノイズや振動もうまく抑えられている。おかげで、街中では扱いやすいし、高速では100km/hの回転がわずか1300rpmと低く、ガソリンエンジンよりもむしろ静かに高速巡航ができるほどだ。乗り心地は実にマイルドで、そのぶんSUV特有の揺れが気になる場面もあったが、乗り心地と安定感のバランスは悪くない。

それだけに安心して薦められるGLC220dであるが、その一方で、強烈な個性を持つG350dにどこかひかれてしまうのも事実。すでに新型がデビューしているが、「いまのうちに40年目の最終モデルを買っておくのもいいなぁ」と考える私は、まさにメルセデス・ベンツ日本の思うつぼ。ちなみに、日本で新型Gクラスが発売になっても、しばらくのあいだは従来型も併売されるということなので、「いまのうちに」という方は、早めの決断を!

(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)

「GLC」が日本でデビューしたのは2016年2月のこと。今回テストした「GLC220d 4MATICスポーツ」は、2017年2月に追加導入されたモデルだ。
「GLC」が日本でデビューしたのは2016年2月のこと。今回テストした「GLC220d 4MATICスポーツ」は、2017年2月に追加導入されたモデルだ。拡大
レザーにシルバーパーツ、ピアノブラックでコーディネートされた、ラグジュアリーな雰囲気のインテリア。
レザーにシルバーパーツ、ピアノブラックでコーディネートされた、ラグジュアリーな雰囲気のインテリア。拡大
車名に本革仕様とあるとおり、レザーシートを標準装備する。写真のブラックのほか、ボディーカラーに合わせる形でブラックとレッドのコンビカラーも用意されている。
車名に本革仕様とあるとおり、レザーシートを標準装備する。写真のブラックのほか、ボディーカラーに合わせる形でブラックとレッドのコンビカラーも用意されている。拡大
動力性能については、0-100km/h加速が8.3秒、最高速が209kmと公表されている。JC08モード燃費は16.2km/リッター。
動力性能については、0-100km/h加速が8.3秒、最高速が209kmと公表されている。JC08モード燃費は16.2km/リッター。拡大
メルセデス・ベンツG350d
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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツG350d

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4575×1860×1970mm
ホイールベース:2850mm
車重:2530kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:245ps(180kW)/3600rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1600-2400rpm
タイヤ:(前)265/60R18 109H(後)265/60R18 109H(ブリヂストン・デューラーH/P 680)
燃費:10.3km/リッター(JC08モード)
価格:1080万円/テスト車=1148万5300円
オプション装備:ラグジュアリーパッケージ(47万2000円)/サイドビューカメラキット(9万9900円)/フロアマット<プレミアム>(11万3400円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:4262km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICスポーツ(本革仕様)
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メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICスポーツ(本革仕様)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1890×1645mm
ホイールベース:2875mm
車重:1970kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:170ps(125kW)/3000-4200rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1400-2800rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101Y/(後)235/55R19 101Y(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:758万円/テスト車:828万8440円
オプション装備:メタリックペイント<セレナイトグレー>(8万9000円) ※以下、販売店オプション ランニングボード(12万円)/ブラックドアミラーハウジング(3万0240円)/AMGフロアマットプレミアム(9万円)/LEDロゴプロジェクター(3万円)/リアエンターテインメントシステム<シートバックタイプ>(27万円)/ラゲッジルーム用フルトレイ<ローエッジ>(1万6200円)/ソニックデザインサウンドスウィート(6万3000円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1753km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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