マツダ・アテンザセダン25S Lパッケージ(FF/6AT)/アテンザワゴンXD Lパッケージ(4WD/6AT)
これが最終到達点 2018.07.12 試乗記 マツダの旗艦モデル「アテンザ」が、現行世代では過去最大といわれるほどの大幅改良を受けた。内外装のデザインや仕立てはもちろん、エンジン、ボディー、足まわりと、クルマを構成するあらゆる箇所がブラッシュアップされた最新モデルの出来栄えを確かめる。セダンと内燃機関にこだわる
試乗会場には、マイナーチェンジ前のモデルが用意されていた。新型をテストする前に、まず乗ってほしいのだという。アテンザは2012年のデビューから6年で、4回目の改良になる。最近のマツダは毎年ちょこちょこと細かく手を入れているが、今回は内外装からパワーユニットにまで手を入れた大がかりな変更だ。モデルサイクルを考えれば、おそらく今回が最後のマイナーチェンジだろう。次期型はFRになるとかロータリーエンジンが搭載されるとかのウワサがあるが、もちろんマツダは何も認めていない。
販売数では「CX-5」「CX-3」などのSUVが上回っていても、アテンザはマツダにとって特別な意味を持つモデルだ。日本に限らず世界的にSUVシフトが進み、セダンの開発をやめると表明する自動車メーカーまで現れた。逆風が吹き荒れる中で、マツダはあくまでもセダンを重視する。アテンザは押しも押されもせぬフラッグシップモデルであり、ブランドを先導する存在だと明言するのだ。
セダンはクルマの基本形であり、しっかりと作り込んでいくことで全体のラインナップを底上げすることができる。それがマツダの固い信念らしい。デビューから6年を経たモデルに惜しげもなく最新の技術を注ぎ込み、マツダブランドのトップを走っていることを証明しようとする。
セダンにプライオリティーを置くことと同じぐらいの意気込みで、マツダがアピールするポイントがもうひとつある。内燃機関へのこだわりだ。ディーゼルエンジン搭載モデルは必須であり、技術を進化させていけば地球環境保全に役立つと考えている。欧州の自動車メーカーがディーゼルを諦めてEVに舵を切ろうとしているのとは対象的な姿勢だ。用意されるパワーユニットは従来どおり2リッターと2.5リッターのガソリンエンジンと2.2リッターのディーゼルエンジンの3種類だが、すべてに新技術が盛り込まれている。
コントラストが鮮やかな新色
比較用に乗った旧型は、2.5リッターのガソリンエンジンを搭載したセダン。このクルマがデビューした時は、「SKYACTIV(スカイアクティブ)」テクノロジーと「魂動(こどう)」デザインの組み合わせがセダンにも及んだことに感慨を覚えたものだ。「カペラ」から続くマツダのセダンは、悪くはないけれど人畜無害で月並みというイメージだった。技術とデザインの両面で明らかなアドバンテージを築いたことは、マツダの変化を強烈に印象づけた。
久しぶりに乗るアテンザは、やはり上質なスマートさを備えていた。すっかり見慣れてしまった顔つきは、スポーティーなイメージを漂わせている。室内はしっとりとした味わいの上品な印象だ。走りだしは速度のコントロールがしやすく、ドライバーの要求に素直に応じてくれる。加速時に爆発的なパワーを感じることはないが、十分な速度を自然に供給する。ちょい乗りではあったが、奇をてらうことのない真面目な作りのセダンであることは感じられた。実によくできたクルマである。加速時のエンジン音の質が少々気になったぐらいで、文句をつけるような弱点は見当たらない。
乗り換えたのは、同じ2.5リッターガソリンエンジンを搭載する同じグレードのモデル。外板色も同じソウルレッドかと思ったら、旧型のソウルレッドプレミアムメタリックに対して新型はソウルレッドクリスタルメタリックだった。2代目CX-5から採用された色で、アテンザもようやく新世代のボディーカラーをまとうことになった。
彩度が約2割、深みが約5割増したというのはちょっとよくわからないけれど、強い日差しの下に置くとハイライトの入った部分と影とのコントラストが鮮やかだ。色の違いは並べてみれば簡単にわかることだが、乗った感覚はどうだろう。マツダは微妙で繊細な変更を施してくるので、明確な差がわからないこともある。ちゃんとリポートできるかどうか心配しながら発進すると、幸いなことに差異は明らかだった。
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静粛性向上で上質さがレベルアップ
少し走っただけで、上質さのレベルがアップしていることが感じられる。ただし、劇的な変化ではないので言語化は難しい。わかりやすかったのは、静粛性の向上だ。旧型がうるさかったというわけではないが、音の“手触り”が違う。ざらついた音質がまろやかになったことで、音量が下がったように錯覚したのかもしれない。
静粛性に関しては、「クリアな会話を楽しめる心地よい室内空間を実現すること」を目指したという。そのために採用されたのが、「走行時の残響音を低減」するという方法だ。なかなか理解しにくい表現である。理屈はともかく、快適な静かさが実現されているのは確かだ。単純な遮音ではなく、不快な振動を減らしクルマの動きを滑らかにすることなどを組み合わせた相乗効果が表れているとも考えられる。新型アテンザには、次世代車両構造技術の「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブビークルアーキテクチャー)」の一部が取り入れられているのだ。
もっとはっきり違いがわかるのはシート。ゆったりとしていて、安定感と安心感が得られる。旧型も決して悪い座り心地ではないのだが、フィット感の質が違う。体へのあたりが優しい。タイトではなく柔らかに包み込まれる感覚で、ソファのような心地よさなのにホールド性は向上している。ベンチレーションシステムが採用されたことで、背後の湿気や熱気が吸い出されるのも、暑い時期にうれしい変更点だ。最大の風量にすると、お尻が冷えすぎるほどである。
2.5リッターエンジンには気筒休止システムが加えられたが、作動したことに気づく場面はなかった。負荷の少ないクルージング中などには両端2つの気筒でバルブが止まり、2気筒走行になっているらしい。運転感覚を変えることなく、燃費改善が図られているということだ。
ガソリンエンジンの出力はこれまでと変わらないが、パフォーマンスフィールの改善を目指したという。コンセプトは「Effortless Driving(エフォートレスドライビング)」で、目標としたのは「初心者から熟練ドライバーまで誰もが思い通りに運転でき、助手席や後席の乗員も快適に過ごせる走りを実現すること」。そのために、アクセル操作に応じた加速度の出方をマツダの考える理想の反応に近づけた。具体的には、吸気ポートやピストン、インジェクターの墳口、オイルリングに至るまで細かな形状変更を施し、低回転域のトルク向上が図られている。地味で地道な技術の積み重ねで、わずかでも着実な改良を狙う。簡単に体感できるような変化ではないが、その姿勢がブランドの評価を高めている。
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新素材が高級感を高める内装
ワゴンはディーゼルモデルに乗った。こちらはエンジンのスペックが向上していて、最高出力が従来の175psから190psに、最大トルクが420Nmから450Nmに高められている。数字的には大きな違いがあるが、だからといって暴力的な加速が味わえるというわけではない。アテンザはマツダのフラッグシップであり、大人のためのクルマである。SUVとは違い、ドヤ顔のトルク自慢は必要ないのだ。加速時には勇ましい顔をのぞかせるが、街なかで普通に乗っている分にはガソリンモデルと似たような乗り味である。今回はATモデルだったが、ディーゼル版では引き続きMTも選べる。4WDが用意されているのはディーゼルだけということもあり、やはりアテンザはディーゼルが主力という扱いなのだ。
新デザインのフロントグリルが採用されたこともあり、基本のフォルムはそのままでも外観の印象はかなり変わった。スポーティーさよりも、大人びた落ち着きを強く印象づける。内装では、新素材の「ウルトラスエード ヌー」が素晴らしい質感だった。アルカンターラよりも繊細できめ細やかな手触りで、見た目にも高級感が漂う。試乗車はブラウン内装だったが、ホワイト版だとさらに優美さを増しそうだ。汚したり傷つけたりしそうでちょっと怖いのだが。
先日行われた「トヨタ・クラウン」のプロトタイプ試乗会でも、旧型と乗り比べるプログラムがあった。こちらは骨格も全面的に刷新したフルモデルチェンジだから違いは明らかで、旧型が貧弱に思えてしまった。アテンザの場合は、それほどの差はない。確実に進化しているが、旧型の延長上にある。それでも少しずつ前進していることを実感してほしいというのがマツダの意図だったのだろう。発表前に開催された事前取材会が技術セミナーのような真面目なイベントだったのは、乗る前に情報を与えて理解の助けにするという趣旨だったのかもしれない。親切には感謝しなければならないが、何しろ多岐にわたる改良点を説明されたので、短い試乗ではとてもすべての答え合わせはできなかった。
生真面目な姿勢で誠実に開発が行われたことは疑いようがない。それだけでも価値があるが、うれしいオマケもついてくる。ウワサが本当ならば、最後のFFアテンザとなってしまうのだ。だとすれば、これがマツダの考えるFFのプレミアムセダン・ワゴンの最終到達点である。ファンならば、見逃せないはずだ。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
マツダ・アテンザセダン25S Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4865×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/6000rpm
最大トルク:252Nm(25.7kgfm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W(後)225/45R19 92W(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費:14.8km/リッター(JC08モード)/14.2km/リッター(WLTCモード)
価格:354万2400円/テスト車=374万2200円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(7万5600円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)/ナビゲーション用SDカードPLUS<16GB>(4万8600円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1982km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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マツダ・アテンザワゴンXD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1840×1480mm
ホイールベース:2750mm
車重:1710kg
駆動方式4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/4500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgfm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W(後)225/45R19 92W(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格419万0400円/テスト車=445万5000円
オプション装備:ボディーカラー<マシングレープレミアムメタリック>(5万4000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)/電動スライドガラスサンルーフ<チルトアップ機構付き>(8万6400円)/ナビゲーション用SDカードPLUS<16GB>(4万8600円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2413km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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