BMW X2 xDrive20i MスポーツX(4WD/8AT)
見た目はオッケー! 2018.07.26 試乗記 BMWのニューモデル「X2」に試乗。メーカーが「スポーツ・アクティビティー・クーペ(SAC)」と呼ぶスタイリッシュなSUVに、“駆けぬける歓び”は備わっているのか!? 「BMW 320d」を足にする清水草一がチェックした。ついに出たハンサム系コンパクトBMW
BMWのコンパクトモデルのスタイリングに、どうにも不満を感じていた。
「1シリーズ」は初代から猛烈に不格好だったし、初代「X1」もいまひとつ質感が足りなかった。それぞれ第2世代に移行しても、どこかわざとカッコ悪くしているように感じてしまう。BMWというブランドだけで、なんとかなってしまっているのは確かですが。
「2シリーズ」の「クーペ」は、保守派のカーマニアにはそれなりに好評だが、それでも「3シリーズ」や「4シリーズ」と見比べると、大きく落ちる。2シリーズの「アクティブツアラー/グランツアラー」にいたっては、まるでカピバラ。
BMWって、こんなにもコンパクトカーのスタイリングが苦手だったのか? サイズ的には、昔の3シリーズより大きいんだから、「E30」みたいなシンプルで美しい造形にしてくれればそれでいいのに。
現在、現行型の320dに乗る私には、個人的な野心がある。いつかもう少し小さくて、取り回しがラクなBMWに乗り換えたいというものだ。できればFFのディーゼルに。
BMWのFFモデルは、いまやFRよりも走りがいい(断言)。それでエンジンがディーゼルなら言うことない。「BMWはFRの直6に限る」なんて時代は遠くになりにけり。BMWはFFベースの直4ディーゼルに限る。
ただし、カッコよくないと困る。やっぱりクルマは見た目が第一。なにしろBMWだし。
現状、「FFベースの直4ディーゼル」だと、「118d」や「218dアクティブツアラー」「X1 xDrive18d」などが候補になるが、どれもカッコがストライクゾーン外だ。結局ルックス的に欲しくなるのは、3シリーズや4シリーズで、SUV(BMWはSAVとかSACと呼ぶらしいけど無視)なら「X4」くらい。ダウンサイジング化の夢は遠かった。
が、ついにというかようやくというか、有力候補が現れた。X2です。
ファミリーカーでもいけるはず!?
顔はパッと見、2シリーズ アクティブツアラーに似ているが、全体のフォルムはかなり違う。
最大の違いは、グリーンハウス(上屋部分)の絞り込みだ。キャビン上部をぐっと凝縮することで、頭が小さくて肩幅の広い、BMWらしいスポーティーなフォルムになっている。これはカピバラじゃない、イノシシだ!
それでいて居住性も十分。そりゃアクティブツアラーやX1などのファミリーカー軍団には劣るけど、後席のヘッドクリアランスは意外なほど余裕がある。えっ、こんなに? というくらい。
BMWは、X2のルーフラインについて、「従来のクーペスタイルに固執することなく、BMW Xモデルらしい強固な印象を残すやや武骨な形状」とアナウンスしている。意味がよくわからないが、要は後方に向けてあんまりラウンドしてません、ということだろう。
確かにX4や「X6」に比べると、ルーフラインの後方への傾斜はなだらかだ。代わりに左右を強めに絞り込んで、スポーティー感を表現している。
後席に座った場合、左右の圧迫感はなきにしもあらずだけれど、頭がつかえる感じはないし、ラゲッジもあまり犠牲になっていない。仮にファミリーカーとして使っても、これくらいの広さがあれば絶対になんとかなる。なにしろ5ドアなんだから! わが家では昔、3ドアの「ランチア・イプシロン」(初代)や、オープンカーの「プジョー306カブリオレ」をファミリーカーに使ってましたが、大丈夫でした。家が狭けりゃ狭いなりになんとかなるものです。いわんやX2をや。
そういうわけで、X2には個人的にかなり食いついているのですが、試乗したのは、今回導入された中で一番高価な「xDrive20i MスポーツX」。4気筒2リッターガソリンターボ(192ps)の4WDでした。
ディーゼルはラインナップされず
当初導入されるX2は、すべてガソリンターボモデルで、20iの他には、3気筒1.5リッターターボ(140ps)を積む「sDrive18i」があり、そちらはFFのみ(20iは4WDのみ)。それぞれのエンジンに、スタンダードモデルとMスポーツXモデルがあるという、シンプルな構成になっています。
つまり、当面私が望んでいるディーゼルモデルはない。兄貴分のX4もガソリンモデルのみ。BMWの偶数モデルはディーゼルが導入されない可能性が高いようだ。でも本国にはバリバリ存在しているので、ひょっとしたらという期待はある。
とにかく、xDrive20i MスポーツXに試乗いたしましょう。
車両本体価格は515万円で、オプションの20インチタイヤ&ホイールが装着されておりました。20インチだもんなぁ。私が乗ってた「フェラーリ458イタリア」でも、ノーマルは19インチで、20インチはオプションだったんですが。
確かに大径ホイールは見た目がカッコいいし、走りもスポーティーになるけれど、このホイールサイズ拡大競争、いったいどこまで行くんだろう。ホイールがデカくなるほど乗り心地はキツくなり、タイヤ価格もバカ高くなるので、いい加減にしてほしいです。ちなみに私の320dは17インチ。それで十分だし、見た目も走りもバランスは大変いいと思っております。
そんな懸念を抱きつつ走りだすと、足まわりは意外なほどしなやかだった。20インチだけに多少突き上げはくるけれど、「固い!」という感じではない。近年のBMWのサスは本当にステキになった。こんなホイール履いて、Mスポーツサスペンションで、ランフラットでこの乗り心地。「レクサスLS」は爪のあかを煎じて飲んでくれ。これで17インチのスタンダードサスなら、腰があるのにマシュマロのようにフワフワと、超気持ちいいんじゃないか? そっちが本来のX2じゃないかと想像する。
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思いのままに走れる
しかし、ワインディングロードを走る場合に限っては、このMスポーツサスペンションと20インチが生きてくる。ステアリングのレスポンスは実に気持ちよくダイレクトで、まさに思いのままという感じで走ってくれる。FRのBMWだと、どこかリアがツルッと行きそうな感覚があるが、FFやFFベースの4WDには、それがまったくない。ノーズがぐいぐいとインに入って、リアはビクともしない。
この思い通りに曲がってくれる感覚が私は大好きで、サーキットを攻めたりしない限り、FRモデルより上だと確信している。
ちなみにBMWのxDrive(4WD)は、ステアリングの角度やホイールの回転速度などの車両データから、オーバーステアやアンダーステアなどの兆候を察知し、瞬時に前後アクスルへの駆動トルクを可変配分する。ドリフトを楽しむとかは全然ムリですけど、日常ユース+αには、文句のつけようのない走りなのだ。
エンジンは、いつものアレです。下からトルクがあって痛快です。トップエンドではストレート6みたいな快感はないけれど、まったく文句ないです。
ただ、いまや同排気量のディーゼルと比べると、最高出力ですらほぼ互角(最大トルクは大差でディーゼル)なのも事実。燃料代の安さでは、言うまでもなく断然ディーゼルが上だ。やっぱりBMWは、FFベースのディーゼルがベストじゃないだろうか。320dでも、これまで平均でリッター17km走ってますから。X2にもぜひディーゼルをお願いします。
(文=清水草一/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW X2 xDrive20i MスポーツX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4375×1825×1535mm
ホイールベース:2670mm
車重:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1350-4600rpm
タイヤ:(前)225/40R20 94Y/(後)225/40R20 94Y(ピレリPゼロ)※ランフラットタイヤ
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:515万円/テスト車=585万3000円
オプション装備:ボディーカラー<ガルバニックゴールド>(9万4000円)/グリッドクロスアンソラジット(0円)/セレクトパッケージ<電動パノラマガラスサンルーフ+ラゲッジコンパーメントネット+HiFiスピーカー>(18万6000円)/アドバンスドアクティブセーフティーパッケージ<BMWヘッドアップディスプレイ>(18万1000円)/20インチMライトアロイホイールダブルスポーク スタイリング717M(11万4000円)/電動フロントシート<運転席&助手席>(12万8000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1282km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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