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第3回:スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ(前編)

2018.09.12 カーデザイナー明照寺彰の直言
「スズキ・ジムニーXC」
「スズキ・ジムニーXC」拡大

マニアやプロのための本格派オフロード4WD「スズキ・ジムニー」が、フツーの人のココロも強く揺さぶって爆発的人気となっている。その最大の原因がデザインにあることは間違いないが、初対面で激しく引かれつつも、「これは『メルセデスGクラス』の縮小版では?」という思いが頭をかすめた方も、少なくはないだろう。その点を含め、プロは新型ジムニーのデザインをどう見たのか?

2018年7月に、実に20年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した新型「ジムニー/ジムニーシエラ」。こちらはオーバーフェンダーが勇ましい普通車バージョンの「ジムニーシエラJC」。
2018年7月に、実に20年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した新型「ジムニー/ジムニーシエラ」。こちらはオーバーフェンダーが勇ましい普通車バージョンの「ジムニーシエラJC」。拡大
「ジムニーXC」のインストゥルメントパネルまわり。水平基調のダッシュボードはデザイン面での特徴となっているだけでなく、オフロードなどで、車体の傾きを感じ取りやすくするのにも役立つという。
「ジムニーXC」のインストゥルメントパネルまわり。水平基調のダッシュボードはデザイン面での特徴となっているだけでなく、オフロードなどで、車体の傾きを感じ取りやすくするのにも役立つという。拡大
先代にあたる3代目「ジムニー」は、角の取れた、全体的に丸っこい乗用車ライクなスタイリングをしていた。
先代にあたる3代目「ジムニー」は、角の取れた、全体的に丸っこい乗用車ライクなスタイリングをしていた。拡大
ツートンカラーも含めて全13パターン(ジムニーシエラは12パターン)という豊富なカラーバリエーションも、新型の特徴として挙げられる。
ツートンカラーも含めて全13パターン(ジムニーシエラは12パターン)という豊富なカラーバリエーションも、新型の特徴として挙げられる。拡大

“お客さん目線”だからできたデザイン

明照寺彰(以下、明照寺):……ジムニーについては本当に、何をしゃべったらいいか困ってしまいますね。

永福ランプ(以下、永福):それは、どういう意味で?

明照寺:デザイン的に、本当に完成されているからです。

永福:そっちですか!

明照寺:ひとつ前のジムニーって、ちょっと“カーライク”だったんですよ。

永福:カーライク?

明照寺:“乗用車ライク”という意味です。それに対して新型は、原点回帰してる。それがすごい。

永福:素直にそう考えていいんですね?

明照寺:スズキって、お客さん目線というか、お客さんが何を欲しているかをすごく考えている会社で、今回のジムニーもまさに、みんなこれが欲しかったんだと思います。それを、そのものズバリ出してきた。この潔さがすごい。

永福:「これ、Gクラスに似て見えるかも……」といったことも無視して、手加減なしに?

明照寺:そうです。

ジムニーは“チョップドルーフ”

永福:全体のフォルムはもちろんのこと、ルーフの雨どいの形状のせいもあって、ものすごくGクラスっぽく見えますよね。それも、余計なことを考えなければこうなる、と捉えていいんでしょうか?

明照寺:はい。余計なことは考えずに、ピュアにデザインしているだけだと思います。突き抜け切った感じですよ、まさに。

清水:そうなんですね……。まぁこの雨どいも、「ルーフキャリアが付けやすいように機能を優先した」と聞きましたが。

明照寺:そうですか。本当にそうなんだと思いますよ(笑)。たぶんデザイナーも、本当に自分が欲しいものを作っただけなんじゃないでしょうか。これだけやられると、同業者として何も言えないですよ。

永福:まぁそう言わずに、もうちょっとお願いします。

明照寺:あえて言うのであれば、結構サイドビューがスポーティーなんですよね。サイドウィンドウの上下幅が比較的薄いじゃないですか。その分ボディーの土台まわりが厚いんで、箱型だけどスポーティーに見えるんです。

清水:言われてみれば! 頭がちっちゃくて、胴体ががっちりしている、マッチョマンなイメージですね。

明照寺:そう。今だと全く同じようなフォルムのクルマってGクラスぐらいしかないですけど、Gクラスの方がまだキャビン、つまり頭の部分がデカくて、土台部分が薄い。比率として。

永福:並べてみると、そうですね~。

明照寺:だからGクラスはスポーティーな感じはあまりしないけれど、ジムニーはチョップドルーフ的で、スポーティーに見える。そんなところも「すげえなぁ……」っていうのが、偽らざる印象です。

永福:そこまで絶賛ですか!

永福:「新型『ジムニー』って、すごく『Gクラス』に似て見えませんか? 特にオバフェン付きの『シエラ』は!」
明照寺&ほった:「……そうですか?」
永福:「新型『ジムニー』って、すごく『Gクラス』に似て見えませんか? 特にオバフェン付きの『シエラ』は!」
	明照寺&ほった:「……そうですか?」拡大
絶賛物議をかもし中の「ジムニー」の雨どい。機能的な面はもちろん、武骨なクロカンらしさや、クラシカルな雰囲気の演出にも一役買っている。(写真=田村 弥)
絶賛物議をかもし中の「ジムニー」の雨どい。機能的な面はもちろん、武骨なクロカンらしさや、クラシカルな雰囲気の演出にも一役買っている。(写真=田村 弥)拡大
「ジムニーシエラ」のサイドビュー。ボディーの厚みに対してややグラスエリアは薄めで、ミラー付近でドアウィンドウの下端を一段下げて前側方の視界を確保している。(写真=荒川正幸)
「ジムニーシエラ」のサイドビュー。ボディーの厚みに対してややグラスエリアは薄めで、ミラー付近でドアウィンドウの下端を一段下げて前側方の視界を確保している。(写真=荒川正幸)拡大
「メルセデス・ベンツGクラス」のサイドビュー。似たような形状のクルマでありながら、スポーティーな「ジムニー」と比べ、こちらはぐっと落ち着いた印象となっている。
「メルセデス・ベンツGクラス」のサイドビュー。似たような形状のクルマでありながら、スポーティーな「ジムニー」と比べ、こちらはぐっと落ち着いた印象となっている。拡大

細部の作り込みにうなる

明照寺:細かいところを見ていくと、すごく作り込んでいるんですよね。例えばパネルとパネルをつなぐ角の“面取り”。ショルダーラインも、フロントフードの下からフェンダーパネルのふくらみをすーっと後ろまで伸ばしていますけど、ここの分割比率とか角のRなんかが、製品の精緻感や厚み感にすごく寄与している。デザインはすごくシンプルなんだけど、作り手のこだわりがものすごいなと思います。ワイパーの付け根とかもちゃんとデザインされていますし、細かいところまで手が込んでいるなと、本当に感心しました。

清水:“ベビーGクラス”と海外で言われているようですけど、日本人としては、「これはマネじゃない」って言いたい気分があるんです。プロから見てどうですか?

明照寺:マネではないですよ。そもそもジムニーのほうが、出たの早いですし。

ほった:Gクラスは1979年ですね。で、初代ジムニーは1970年。新型によく似たバンの登場も、1972年でGより早いです。

明照寺:ジムニーがここで原点回帰したと主張しても、誰のマイナスにもならないでしょう。

ほった:「ミニGクラスみたいなのを作ろうよ」みたいな雰囲気は、やはりなかったと?

明照寺:(笑)。いやまぁ、多少はあるかもしれないですよ。ああいう武骨なデザインをしてみたいというのは、クルマのデザイナーをやっていると大なり小なりありますから。

今どきのクルマのデザインは、通常は面や線を放物線で作るわけですよ。放物線というのは、直線とかRの線とかいう意味ではなくて、“自由な曲線”という意味なんですけど、とにかくその放物線の集合体でデザインするんです。でもジムニーはほぼほぼ平らで真っすぐ。これまで自分もやったことがないデザインですし、それは他のデザイナーもそうでしょう。そういう点でも、手がけた方はやりがいがあったんじゃないかな。うらやましいですよ、これは。(後編へ続く)

(文=永福ランプ<清水草一>)

車体の角となる部分のRと、ボンネットとフェンダーパネルの“段付き”から伸びるショルダーラインがよく分かる画像。このラインの高さや、面と面との境目となる箇所の処理が、「ジムニー」の外観イメージに大きな影響を与えているという。
車体の角となる部分のRと、ボンネットとフェンダーパネルの“段付き”から伸びるショルダーラインがよく分かる画像。このラインの高さや、面と面との境目となる箇所の処理が、「ジムニー」の外観イメージに大きな影響を与えているという。拡大
ディテールで言えば、ヘッドランプの下、バンパーとの間に施された切り込みにも注目。岩などとの接触を避けるべく左右が切り上げられたバンパー形状に合わせたデザインとなっているのだ。(写真=荒川正幸)
ディテールで言えば、ヘッドランプの下、バンパーとの間に施された切り込みにも注目。岩などとの接触を避けるべく左右が切り上げられたバンパー形状に合わせたデザインとなっているのだ。(写真=荒川正幸)拡大
初代「ジムニー」のデビューは1970年。当初は“ジープ”を思わせるオープントップのみだったが、2年後には耐候性に考慮したバンが登場している。
初代「ジムニー」のデビューは1970年。当初は“ジープ”を思わせるオープントップのみだったが、2年後には耐候性に考慮したバンが登場している。拡大
あくまでも直線基調でデザインされたジムニーは、“放物線”で描かれるデザインがほとんどを占める現代のクルマの中にあって、貴重な存在といえる。
あくまでも直線基調でデザインされたジムニーは、“放物線”で描かれるデザインがほとんどを占める現代のクルマの中にあって、貴重な存在といえる。拡大
明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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