第102回:草の根ドリフト業界にもインバウンドの波
2018.09.11 カーマニア人間国宝への道ドリフト祭りが熱い!
9年ぶりに再会した、モテないカーマニア仲間にしてハチロクマニアの“クマ”は、40代でツレをゲットし、かつドリフトの人になっていた。そのドリフトライフとは。
クマ(以下 ク):ついこの間も、エビスサーキットのドリフト祭りに行ってましたよ。
清水(以下 清):わっ、エビスサーキット、懐かしい! 最近の動向、サッパリ知らないんだけど、相変わらずなの?
ク:相変わらずドリフトの聖地です。
実はかく言う私、15年ほど前にエビスサーキットの“ドリ小屋”なるドリフト特訓合宿に参加した経験がある。あの特訓のおかげで、多少はドリフトができるようになり、その後「360モデナ」や「458イタリア」で定常円旋回をなんとかこなして、フェラーリ乗りとして一つの頂点に達することができた(断言)。ありがとうエビスサーキット。
清:そうなんだ! スゲェな~。で、ドリフト祭りってどんな祭り?
ク:年に3回、32時間1万5000円で、ドリフトし放題っていう祭りです。
清:おみこしとかは出ないの?
ク:ないです。エビスはコースが7つあるんですけど、ドリフト祭りの時はどこでも走り放題なので、とにかくみんなドリフトしまくるんです。最近は外国人も多いですよ。
海外カーマニアの台頭
清:えっ、外国人はドリ車をどうすんの?
ク:エビスの中でスコットランド人がショップをやってて、そこがいったんクルマを売って、クルマが無事なら買い戻す形を取ってるみたいです。外国人の集客も、そこがネット経由でやってるんじゃないかな。なにしろエビスは、世界のドリフトの聖地ですから。
清:ス、スゲエ!
ク:ギャラリー数なら、最近は外国人の方が多くねぇか? って感じですね。
まさか実践ドリフトの世界にまで、インバウンドの波が押し寄せていたとは。このあたりの話、ドリフト業界の人には常識なのでしょうが、カーマニアの世界も細分化が進んでいて、知らないことはまったく知らなくてどうもスイマセン。
清:実はさ、エビスにはもう10年以上行ってないし、カーマニアの高齢化も激しいから、どうなってるんだろって思ってたんだ。
ク:日本人の参加者は減ってるけど、その分外国人が埋めてます。
清:そうなのか~。カーマニアも年取ると、サーキットを走る元気がなくなってきて、それよりなまったカラダを鍛えようかとか思うようになるんだよ。オレはまだ思うだけだけど。
ク:わかります。
清:お金のある人はトライアスロンに走り、庶民は自転車やジョギングに走る。そのほうがクルマより断然お金かかんなくて、達成感もあるでしょ。
ク:ドリフトは飽きないですけどね。僕は年に3回のドリフト祭りの時しかやらないんで、カネもそんなにかかんないです。
清:えっ、そうなんだ! 以前はよく、本庄とか日光にも行ってたよね?
ク:今はエビスだけです。
清:年に一度の祭りに燃えるような感じ? 3回だけど。
ク:そこを目指してクルマ仕上げて、パッと発散する感じですかね。
新たなFR車の登場に期待
清:今はドリフトできるFRの新車がほとんどなくなっちゃったけど、それはみんなどうしてんの?
ク:相変わらず「マークII/チェイサー」系とか、「180SX」が中心です。新しいドリ車としては、ギリギリ「86/BRZ」かな。それがドリフト界最大のネックかもしれません。
清:ドリフトすると、タイヤがすぐなくなるから、カネかかるじゃない。それは?
ク:アジアンタイヤですね。
清:あ、そうか!
ク:僕はずっとケンダ(台湾製)を使ってます。ハチロク用なら4本で1万7000円くらいで買えるんで。
清:なるほど~! で、クマは、あのミサイルでドリフトしてるわけか。エビスはフロントガラスがバリバリに割れてても走れるなんて、ステキだね!(笑)。
ク:エビスではそんなの多いですよ。最近はハチロクは珍しいけど。パワーないし、最近さらに値段上がっちゃったし。
清:それにしても、ハチロクにも全然飽きないんだね。
ク:あれ以外のクルマに興味ないんで。
清:仕事もカメラマンやめてトラック運転手になったし、本当にカーマニアだよね。
ク:運転してるのが気楽なんですよ。
清:今は何t車に乗ってるの。
ク:13tです。
清:えええええ~~~~~~っ! そんなデカイの転がしてるの~~~~~~!
ということで、次回は深刻な人手不足が話題の、トラック運転手の世界についてです。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。