第103回:大型車には大型車の事情がある
2018.09.18 カーマニア人間国宝への道トラックドライバー万歳!
昔のモテないカーマニア仲間(現中年ドリフト愛好者)は、いつのまにか、13tという大型車を転がす運転手になっていた! ということで今回は、トラックドライバーの実態に迫ってみた。
清水(以下 清):9年前は確か、小型トラックに乗ってたよね?
クマ(以下 ク):最初は2t車でした。そのうち4tになって、今は大型です。
清:大型二種って、取るのすごく大変だって聞いたけど。
ク:僕は一種です。トラックは一種でいいんで、合宿で取りました。ラクでしたよ。
清:あ、二種はバスか。その費用って、会社が出してくれるの?
ク:いや、自腹でした。休暇取って勝手に取ったんで。
清:ナゼ!?
ク:やっぱり大型の方がカネがいいですから。月に10万くらい違うかな。
清:そうか~、そうなのか~。大型車ってことは長距離?
ク:僕はそんなに長距離はないです。新潟にたまに行くくらいで、泊まりはないですね。
清:でも、荷物の積み下ろしも、運転手がやるんでしょ。
ク: それはマジ死にます(笑)。13tぶん、全部自分でやらなきゃならないんで。フォークリフト使っていい荷物の時もありますけど。そのためにフォークリフトの免許も取りました。
清:大型の方が給料は良くても、そのぶん荷物の積み下ろし量が劇的に増える。で、それを60過ぎの運転手も全然やってるよね?
ク:やってますよ。僕は体力的にムリになったんで、今はタンクローリーです。
清:そういうのって、希望が通るの!?
大型トラックはデカい方がラク!?
ク:いや、転職したんですよ。たまたまローリー運転手の募集があったんで。ローリーなら荷物の積み下ろしはないですから。ただ、積んでるのが薬品なんで、気は使いますけど。
清:気を使うっていえば、13tなんてデカいの、転がすだけですごく気を使うでしょ!
ク:いや、別に。4tワイドに慣れてれば、13tは1週間で慣れます。4tって、僕らの世代だと普通免許で乗れますけど、標準ボディーは幅が2200mm、ワイドは2490mmなんですよ。
清:2490っていったら、大型トラックやバスと一緒だよね。
ク:だからそれに慣れてれば、大型は長くなるだけなんで。かえってデカい方がラクなくらいです。
清:それ、ひょっとして、スーパーカーの運転が意外とラク、みたいなもん?
ク:ラクなんですか? そっちの方がよっぽど気を使いそうですけど。
清:慣れれば全然ラクだよ! エアダムを打つか打たないか、傾斜見ただけで判断できるようになるし、狭い道でも、スーパーカーだと相手が避けてくれるし。
ク:ふーん。大型もそんな感じですかね。
清:もうひとつ聞きたかったのは、高速道路でのスピードの問題。リミッターが90km/hで効くでしょ。
ク:メーカーによって違いますよ。
清:うわ、乗用車と同じだ。
ク:三菱ふそうは93km/hで効いちゃうけど、UDは96km/hまで行けました。3km/h違うと全然違います。でも今の会社は、高速は80km/hって決まってて、デジタコで記録されてるんで、リミッターも効かせず、ずーっとクルコンで走ってます。
大型車では1km/hの差が大きい
清:それって、3車線の場合、やっぱり真ん中車線を走るの?
ク:いや、僕は左側です。
清:そっか、80くらいなら、それより遅いクルマはあんまりいないかな。
ク:それがけっこういるんですよ。そういうのを、80で抜かなきゃいけないのがツライです。
清:それはキツイ!
ク:しかも、こっちが車線変更して抜きにかかると、なぜかスピード上げるヤツがいるんです。こっちは80以上出せないんで、もう抜くに抜けなくて、クソ! とか思います。
清:それは思うね~。
ク:乗用車乗ってると、大型は右側に出てくんなって思いますけど、大型は大型で、どうしようもない事情があるんですよ。
清:リミッターが効く速度差なのか、1km/hくらいの差で超ゆっくり抜いたりしてるよね。
ク:1km/hの差でも、長距離だと効いてきますから。乗用車にはわりぃなと思いますけど。
清:お互い事情があるってことだね。最後に聞くけどさ、俺もこの年までクルマ好きで生きてきて、余生は運転手もいいかな、みたいな思いがあるんだけど、60過ぎて運転手ってなれる? 積み下ろしのないタンクローリーとか。
ク:正直、難しいでしょうね。まず、雇う側が敬遠しますから。なんかやらかしてくれると、会社も困るんで。
清:こんだけ人手不足でも?
ク:どんだけ人手不足でも、事故よりはマシです。まあ自分の場合、イヤになったら会社辞めても絶対仕事はあるって感じで、安泰だな~とは思いますけど。
清:生涯運転バカで行けそうだね!
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。