第10回:トヨタ・カローラ スポーツ(後編)
2018.10.31 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
実用性を犠牲にしている割にはスポーティーに見えない? トヨタ最新のCセグメントハッチバック車「カローラ スポーツ」のスタイリングに見る“ふに落ちないポイント”を、現役のカーデザイナー明照寺彰が語る。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
352リッターの荷室に物申す
明照寺彰(以下、明照寺):同じスポーティー路線でも、「マツダ・アクセラスポーツ」はシルエットやスタンスを第一に考えているのに対して、カローラ スポーツは、ちょっとデザインをやり過ぎてる感があります。
永福ランプ(以下、永福):頑張りすぎ?
明照寺:そのせいで、一番重要なところがちょっと崩れてしまっている。
永福:私の感覚だと、アクセラはとてもカッコいい。でも実際に使ってみると、やや“カッコ優先”すぎるって感じます。全幅が広いのに、大きな荷物はあんまり積めない。自分がこういうハッチバックを買うとしたら、もっと効率のいいパッケージが欲しい。一方、カローラ スポーツは、アクセラほどスタイリッシュには感じないんだけど、実際にはやっぱり実用性が犠牲になってる。
明照寺:ひょっとしたら荷室はアクセラよりさらに狭いんじゃないですか。リアの上部をすごく絞っているので。
ほった:カタログだと、一応アクセラが364リッターで、カローラ スポーツが352リッターですね。
永福:「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は?
ほった:380リッターです。
永福:実際の積載性は、この数字よりさらに差があると思うな。これってトノカバーより下の部分の容量(※)だもんね。天井まですりきり一杯積んだら、もっと違うでしょう。テールゲートの傾斜角度が違うから。
※カタログなどに掲載される荷室容量は、ドイツのVDA方式やDIN方式で計測される。ISOによって定められた、容積1リッター(長さ200mm、幅100mm、高さ50mm)のテストボックスを何個積めるかで容量を量る方法で、ワゴンやハッチバックなどの場合は、トノカバーの高さを上限として計測が行われる。
同じ“ロボットアニメ顔”だけど……
明照寺:個人的には、広くできるのにわざわざデザインのために狭くしちゃうことには“ネガティブ”です。荷室は広いほうがいいに決まってる。特にハッチバックのような実用車の場合は。アクセラのデザインはすごくきれいですけど、じゃあ買うかというと、私も「そうでもないかな」って気がします。
ほった:ましてや、カローラ スポーツはもっとイカンわけですか。
永福:私は、今のゴルフのパッケージングでもずいぶん不満だったんですよ。以前のゴルフと比べて、こんな幅広く平べったくして。ところがカローラ スポーツは、完全にそこに後追いをかけてる。しかも、実用性でさらに劣ってる。
もうひとつ文句をつけると、素人はどうしたってフロントの「キーンルック」に目が行きます。キーンルックにもいろいろありますけど、カローラ スポーツの顔は「マークX」あたりと同類で、どうにも子供っぽく見えるんです。これはロボットアニメなんじゃないか、マジンガーZなんじゃないかって。ロボットアニメをくさすつもりは全然ないんですけど。
ほった:永福さんの好きな「C-HR」も“ロボットアニメ”ですよね?
永福:いや、あれはいいんだよ。あれは大好き。
ほった:そうなんですか?
永福:あれは攻殻機動隊だもん。同じアニメでも、マジンガーZとは違う。
ほった:弓さやかより草薙素子が好きなんですね。
永福:弓さやかなんて知らない。草薙素子は大好き!
明照寺:C-HRといえば、このクルマもパッケージをすごく犠牲にしてますよね。特にリアシート。もう真っ暗じゃないかっていうくらい暗い。
永福:確かに、後席に座ってみたら真っ暗闇でした(笑)。サイドウィンドウは狭いし。
明照寺:(外観写真を指さしつつ)そもそもリアセクションをこうも絞って、サイドウィンドウもこれくらいしかないので、後席は暗いところに閉じ込められているような空間になるんですよ。まあ、「それでもスポーティーを目指す!」ということなのでしょうから、全然いいんですけど。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
やるなら徹底してほしい
永福:それでも、私はC-HRなら許します! 私はどうしてもディテールが気になるので。カローラ スポーツを愛車にする自分は、まったく想像できない。……結局、パッケージじゃなくてカオの好き嫌いでモノを言ってますけど。すいません。
明照寺:それは全然いいと思いますよ。カローラ スポーツに話を戻すと、他のトヨタ車より、全体としてはシンプルじゃないですか。
永福:ヘッドライトやテールランプの「鎌」は気になりませんか?
明照寺:まぁ、顔まわりの評価は難しいですね。ただ全体としてはキュッとしていて、そんなに暑苦しく主張していない点は、すごく好感が持てます。
永福:見た目も走りもスポーティーにしたいっていう気持ちはめちゃめちゃ分かる。実際走っても、仕上がりはとてもいい。でもデザイン面では、その気持ちがちょっと空回りしている、という感じでしょうか。
明照寺:そうですね。悪くはないんですけど……。C-HRと同じで、これだけリアピラーを傾けて絞ってる、実用性を犠牲にしているってことは、相当スポーティーなセンを狙ってるはずなんですよ。だったらリアのバンパーまわりはできるだけ軽く見せたいはずなのに、逆に重くしている。スポーツに振りたい気持ちがあるのだったら、もっと徹底してほしかったですね。
永福:いろいろ犠牲にした割にはスポーティーに見えないですからね。ユーザーからすると。
明照寺:そういうことです。このデザインのふに落ちない点は、そこですね。
(文=永福ランプ<清水草一>)

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
-
第41回:ジャガーIペース(後編) 2019.7.17 他のどんなクルマにも似ていないデザインで登場した、ジャガー初の電気自動車「Iペース」。このモデルが提案する“新しいクルマのカタチ”は、EV時代のメインストリームとなりうるのか? 明照寺彰と永福ランプ、webCGほったが激論を交わす。
-
第40回:ジャガーIペース(前編) 2019.7.10 ジャガーからブランド初の100%電気自動車(EV)「Iペース」が登場。SUVのようにも、ハッチバックのようにも見える400psの快速EV。そのデザインに込められた意図とは? EVデザインのトレンドを踏まえつつ、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第39回:アウディA6 2019.7.3 アウディ伝統のEセグメントモデル「A6」が、5代目にモデルチェンジ。新世代のシャシーやパワートレインの採用など、その“中身”が話題を呼んでいる新型だが、“外見”=デザインの出来栄えはどうなのか? 現役のカーデザイナー明照寺彰が斬る。
-
第38回:三菱eKクロス(後編) 2019.6.26 この“顔”はスポーツカーにもよく似合う!? SUV風のデザインが目を引く、三菱の新しい軽乗用車「eKクロス」。迫力満点のフロントマスク「ダイナミックシールド」の特徴とアドバンテージを、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第37回:三菱eKクロス(前編) 2019.6.19 三菱最新のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」の採用により、当代きっての“ド迫力マスク”を手に入れた「三菱eKクロス」。そのデザインのキモに、兄弟車「日産デイズ」や同門のミニバン「三菱デリカD:5」との比較を通して迫る。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。











































