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ポルシェ・マカン(4WD/7AT)/マカンS(4WD/7AT)【海外試乗記】

誰にでも分かること 2018.12.19 試乗記 河村 康彦 「ポルシェ・マカン」がデビュー以来初となるマイナーチェンジを受けた。いまやポルシェの販売台数の約4割を占める、収益面での柱となりつつあるコンパクトSUVは、どのような進化を遂げたのだろうか。スペイン・マヨルカ島からの第一報をお届けする。

まずはマカンとマカンSをラインナップ

デザインや快適性、コネクティビティー、そして走行性能を包括的にアップグレード――。そのようにうたわれるのが、2013年末の登場以来、初めての大幅リファインが行われた最新のマカンだ。

日本ではまず、ベースグレードの予約受注からスタートしたこの最新ポルシェで、早速テストドライブに。舞台は地中海に浮かぶスペイン領のマヨルカ島だ。

もっとも、そんな国際試乗会の場に用意されたのは、2リッター直列4気筒のターボ付き直噴エンジンを搭載する前出ベースグレードと、同じくターボ付きの直噴システムを備えた3リッターV型6気筒エンジン搭載の「S」という2タイプのみ。自身が手がけるものはすべてがスポーツカー……とうたうポルシェの作品ながら、シリーズの象徴ともいうべき際立ったハイパフォーマンスが売り物のV型8気筒モデルは、その姿を見ることができなかった。

実は、フォルクスワーゲングループ内での最新の役割分担に基づき、水平対向以外のエンジンで主にポルシェが開発と生産を担当するのは、現時点ではV8ユニットのみ。

ところが、そもそもこの国際試乗会が開催された段階で正式発表済みだった新型マカンはベースグレードのみ。8気筒モデルが未発表なのはおろか、Sのスペックに関しても、まだ報道解禁日が設定されているという状況であったのだ。

実は欧州では、より厳格で計測に多くの手間と時間を要する排ガス測定基準「WLTP」への適合がすでに必須となっていて、かの地では現在、各メーカーとも対応に大わらわ。周辺メーカーに比べれば車種が少ないポルシェとてその影響から逃れることはできず、結果として「今回のマカンはまず、より多くの販売ボリュームが見込めるグレードからローンチした」と、そのように説明されることとなった。

改良型「ポルシェ・マカン」は2018年10月のパリモーターショーでデビュー。その高性能版である「マカンS」は、やや遅れて同年12月11日に発表された。
改良型「ポルシェ・マカン」は2018年10月のパリモーターショーでデビュー。その高性能版である「マカンS」は、やや遅れて同年12月11日に発表された。拡大
今回、テストドライブできたのはベースグレードと「S」の2タイプ。「ターボ」や「GTS」といったさらなる高性能グレードも、遠からず姿を見せることだろう。
今回、テストドライブできたのはベースグレードと「S」の2タイプ。「ターボ」や「GTS」といったさらなる高性能グレードも、遠からず姿を見せることだろう。拡大
フロントまわりでは、開口部の大きくなったフロントバンパーや、他のポルシェ車と共通の、LED 4灯式ヘッドランプが新しい。
フロントまわりでは、開口部の大きくなったフロントバンパーや、他のポルシェ車と共通の、LED 4灯式ヘッドランプが新しい。拡大
リアまわりでは、左右のリアコンビランプを発光式のストリップで結んだデザインが改良型の特徴。ストリップ内には「PORSCHE」ロゴが刻まれている。
リアまわりでは、左右のリアコンビランプを発光式のストリップで結んだデザインが改良型の特徴。ストリップ内には「PORSCHE」ロゴが刻まれている。拡大
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乗り味はなんともスイート!

かくして、“純正ポルシェ”の心臓を搭載した8気筒マカンがまだ用意されていなかったのは残念ではあったものの、そのデビューが「時間の問題」ということは間違いなし。

おいしいごちそうはまたのお楽しみと気を取り直し、あてがわれた「マイアミブルー」なる目の覚めるような新色に彩られたSグレードで、この地にあるまじき大雨の中をスタート。すると走りだして早々に、なんともスイートな走り味の持ち主であることを教えられることとなった。

テスト車は、標準仕様の18インチから3サイズ(!)も大径の21インチシューズを履くと同時に、エアサスペンションやPTV Plus(ポルシェトルクベクタリングプラス)といった、走りに関わるアイテムをオプションにて装着していた。従来型比で14psと20Nm増しの、最高出力354psと最大トルク480Nmを発生する、7段DCTとの組み合わせで搭載されるV6エンジンは、現行「パナメーラ」から採用の始まった最新のユニットだ。

その新しい心臓は、欧州市場向けには微粒子フィルターが装着されるものの、その有無にかかわらず出力は同一となっており、実際にフィルターが装着済みだった今回のテスト車のフィーリングも、低回転域からすこぶるトルクフルかつスムーズ。もちろん、あえて高回転域まで引っ張るようなシーンでも、新たな“後処理装置”が加えられたことを意識させられることはなかった。

ベース仕様が1865kgと発表されているため、エアサスや21インチシューズを装着したテスト車は1.9t級の重量の持ち主と思われる。それでも絶対的な加速能力に文句のつけようがないことは、5.1秒という0-100km/h加速のタイム(スポーツクロノパッケージ装着車の値。非装着車は5.3秒)にも証明されている。

当然“V8サウンド”とは異質であるものの、アクセルペダルを深く踏むほどにゴキゲンな音色を響かせてくれたのは、この個体が「スポーツエグゾーストシステム」をオプション装着していたことと、無関係ではないはずだ。

まずは「マカンS」でテストドライブへ。目の覚めるようなボディーカラーは新色の「マイアミブルー」。
まずは「マカンS」でテストドライブへ。目の覚めるようなボディーカラーは新色の「マイアミブルー」。拡大
「マカンS」のパワーユニットは3リッターV6ターボエンジン。このたびの改良でパワーとトルクが上乗せされ、最高出力354ps、最大トルク480Nmとなった。
「マカンS」のパワーユニットは3リッターV6ターボエンジン。このたびの改良でパワーとトルクが上乗せされ、最高出力354ps、最大トルク480Nmとなった。拡大
10.9インチのタッチスクリーンが目を引くインテリア。エアコンの吹き出し口を縦長から横長にといった、細かな改良も受けている。
10.9インチのタッチスクリーンが目を引くインテリア。エアコンの吹き出し口を縦長から横長にといった、細かな改良も受けている。拡大
テストした「マカンS」には、オプションの21インチのタイヤ&ホイールが装着されていた。タイヤの銘柄は「ピレリPゼロ」。
テストした「マカンS」には、オプションの21インチのタイヤ&ホイールが装着されていた。タイヤの銘柄は「ピレリPゼロ」。拡大

上質な走りの秘密はエアサスに

そんな動力性能以外にも、車両全体に好印象を抱いた要因は、従来型から明確に向上した静粛性の高さを筆頭とする、上質な走りのテイストだった。

その点で大きな役割を担っていると思われるのが、前述したエアサスペンションである。というのも、後に非エアサスのSグレードへと乗り換えると、サスペンションストロークのしなやかさやロードノイズの遮断性などに、決定的とまではいかないまでも、明確な差を感じとることができたからだ。

新しいマカンでは、フロントのスプリングフォークを従来のスチール製からアルミニウム製へと変更したり、スタビライザーの特性を変更したりといった、足まわりのチューニングが報告されている。そんなリファインの効果に加えてエアサスペンションは、オプション装備ではあるものの、さらなるプレミアムな乗り味をもたらす秘密兵器といえそうだ。

その後、エンジンの最高出力が100ps以上ダウンするベースグレードへと乗り換えてみるが、動力性能に大きな不満はなかった。2気筒分のフリクションロスが減るためか、出足の一瞬の軽やかさは、甲乙をつけがたいもの。こちらも0-100km/h加速のタイムは6.5秒(スポーツクロノパッケージ装着車)と、十分な身軽さがある。加速シーンでのサウンドが「4気筒ならでは」のちょっと寂しいものであるのは事実だが、車体が70kgほど軽量ということもあってか、ハンドリングはこちらのほうが軽快という感覚を覚えるものだった。

ちなみに、ベースグレードのテスト車が装着していた走りに関わるオプションは、20インチのシューズに電子制御式の可変減衰力ダンパー「PASM」など。渋滞は皆無であったため、その恩恵を受けることはできなかったが、今回のリファインを機に追加されたステアリング支援機能付きのアダプティブクルーズコントロールシステム「トラフィックジャムアシスト」も、装着オプションリストに記載されていた。

動力性能だけでなく、上質な走りのテイストも味わうことができた「マカンS」。筆者にはオプション装備であるエアサスの影響が大きいように思われた。
動力性能だけでなく、上質な走りのテイストも味わうことができた「マカンS」。筆者にはオプション装備であるエアサスの影響が大きいように思われた。拡大
ボリューム感のあるサポートを備えたフロントシート。本革シートはオプション装備となる。
ボリューム感のあるサポートを備えたフロントシート。本革シートはオプション装備となる。拡大
続いてはベースグレードの「マカン」をテストドライブ。「マカンS」よりも70kgほど軽量なため、ハンドリングがより軽快に思えた。
続いてはベースグレードの「マカン」をテストドライブ。「マカンS」よりも70kgほど軽量なため、ハンドリングがより軽快に思えた。拡大
「マカン」に積まれる2リッター直4ターボエンジンもリファインを受けており、従来型よりも8psと20Nmアップの最高出力245ps、最大トルク370Nmを発生する。
「マカン」に積まれる2リッター直4ターボエンジンもリファインを受けており、従来型よりも8psと20Nmアップの最高出力245ps、最大トルク370Nmを発生する。拡大

センタースクリーンの大型化でいま風に

従来型と最新型との識別ポイントは、まずは左右のテールレンズ間を発光式のストリップで結ぶという、昨今のポルシェが好んで用いる新たなモチーフを採り入れたリアビューだ。3次元の凝った造形が非点灯時にもプレミアム感を強調する、LEDテクノロジーを駆使したグラフィックのヘッドライトも新しい。さらに、例の微粒子フィルターの装着もあって、エンジンルームへの吸気量の要求が増したことに対応する「開口部を拡大させながらも空気抵抗の増加を防いだ」と説明される、フロントバンパー左右端のエアブレードなど、細部にも新要素が加えられている。こうした変更がデビューから5年が経過したマカンに、フレッシュさを加味している。

インテリアでは、これまで2DINサイズの空間にせせこましく埋め込まれていた感が否めなかったダッシュボード内のセンターディスプレイが、10.9インチという、よりワイドで“いま風”のアイテムに改められたことが、新しさを感じさせる最大のポイント。このスクリーンの表示内容は、タイルの操作によってパーソナライズできる。これに対応した、進化を遂げたコネクティビティーは、すでにパナメーラや「カイエン」といった新世代モデルに導入されているものと同等だ。

一方で、前上がりに傾斜したセンターコンソール上に、ずらりとメカニカルスイッチ類を並べるデザインは従来と同様。パナメーラやカイエンはこのあたりもタッチパネル式へと移行しているのだが、「マイナーチェンジのレベルでは手がつけられない」部分ということだろうか。

とはいえ、細かい部分にも数々の手が加えられた最新のマカンは、誰にでも納得の商品力アップという仕上がりだ。

(文=河村康彦/写真=ポルシェ/編集=藤沢 勝)

アダプティブクルーズコントロール(ACC)は以前からオプション設定されていたが、今回の改良を機にステアリング支援機能付きへとアップデートされた。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)は以前からオプション設定されていたが、今回の改良を機にステアリング支援機能付きへとアップデートされた。拡大
LTE通信とWLAN通信によって常時オンラインに接続されており、マップデータなどは常に最新の状態に保たれる。
LTE通信とWLAN通信によって常時オンラインに接続されており、マップデータなどは常に最新の状態に保たれる。拡大
メカニカルなスイッチがずらりと並んだセンターコンソールは従来モデルと同様。
メカニカルなスイッチがずらりと並んだセンターコンソールは従来モデルと同様。拡大
オプションのスポーツクロノパッケージを装着すると、ステアリングホイールが「911」と同タイプのもの(写真)に変更される。
オプションのスポーツクロノパッケージを装着すると、ステアリングホイールが「911」と同タイプのもの(写真)に変更される。拡大
ポルシェ・マカン
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テスト車のデータ

ポルシェ・マカン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4696×1923×1624mm
ホイールベース:2807mm
車重:1795kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:245ps(180kW)/5000-6750rpm
最大トルク:370Nm(35.7kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)265/45R20 104Y/(後)295/40R20 106Y(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:8.1リッター/100km(12.3km/リッター、欧州複合モード)
価格:699万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※車両価格は日本市場でのもの。

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ポルシェ・マカンS
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ポルシェ・マカンS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4696×1923×1624mm
ホイールベース:2807mm
車重:1865kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:354ps(260kW)/5400-6400rpm
最大トルク:480Nm(49.0kgm)/1360-4800rpm
タイヤ:(前)265/40R21 101Y/(後)295/35R21 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:8.9リッター/100km(約11.2km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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