ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(4WD)
より上質に 力強く 2019.01.21 試乗記 およそ2年のインターバルを経て、2018年8月に日本市場に復帰したホンダのミドルクラスSUV「CR-V」。4WDの実力を試すべく、スタッドレスタイヤを履いたハイブリッド車を借り出したものの、試乗ではむしろパワートレインの上質感に感銘を受けることとなった。ハイブリッドは完全に別物
CR-Vには一度乗っていたから慣れたもの。特に何も考えずに乗り込んですぐに発進させようとしたら、動かせない。シフトセレクターがないのだ。よく見たら、インパネの中央に「D」と記されたボタンがある。押してみるとDレンジが選択され、無事に動きだした。
乗ったことがあるのは1.5リッター直噴ターボエンジン仕様で、今回は2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を搭載した4WDモデルである。新しいCR-Vの中で最も注目されていた組み合わせだ。正直なところターボモデルでは少しばかり物足りなさを感じていたので、ハイブリッド車に乗ってみたいと思っていた。
シフトセレクターで驚いたのは序の口で、本当の違いは別の部分にある。ターボモデルは発進がもどかしく、アクセルを踏み込んでもエンジン音が高まるばかりでなかなか加速しなかった。街なかを走る分には特に問題がなくても、高速道路や山道では力不足を感じてしまう。大きなコンソールボックスなどがアメリカンなおおらかさを感じさせるのに、走りはその印象とはほど遠い。動力性能はずいぶん慎ましやかで、見た目とのギャップがある。
ハイブリッドは別物だった。発進では主にモーターが駆動を担当するので、がさつな騒音が湧き上がることなく力強い加速が続く。ターボの最高出力が190psなのに対し、ハイブリッドはエンジンの145psにモーターが184ps。最大トルクは240Nmに対して175Nm+315Nmである。スペックで見ても大違いだが、感覚的にはもっと差があった。モーターのサポートは頼りがいがある。
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スキーの足ならお任せあれ
むやみにエンジン回転を上げなくてもいいので、上質な走りを楽しめる。しっとりとした運転感覚は、ひとクラス上と言ってもいいほどだ。ただし、乗り心地に関してはそれほど違いがなかった。不整路面ではそれなりの衝撃が伝わってきて、振動も抑えきれていない。弁護するならば、スタッドレスタイヤを履いていたことを割り引く必要があるだろう。目的地は山の上の雪道だったのだ。
降雪量は多くなかったが、シャーベット路や圧雪路を少し走ることができた。いずれも余裕でクリアし、不安感を覚えるような目には遭っていない。本格的な雪道のことはわからないが、スキー場に出かけるぐらいなら十分に対応できる走破性能を持っているようである。
というわけでターボモデルよりもはるかに好印象を持ったわけだが、残念に思った点もある。この試乗では大人数で移動しなければならなかったので、少々手狭だったのだ。ハイブリッドモデルには、ターボモデルに用意されている3列シートの設定がない。前回は3列目が体育座りになってしまうとか文句を言ったけれど、7人乗りならもっと楽だったのは確かである。わがままで勝手な意見であるのは重々承知だが、ハイブリッドの3列シートがあれば一番いいのに、と思ってしまった。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸、花村英典/編集=堀田剛資)
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【スペック】
全長×全幅×全高=4605×1855×1690mm/ホイールベース=2660mm/車重=1700kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ(145ps/6200rpm、175Nm/4000rpm)/モーター=交流同期電動機(184ps/5000-6000rpm、315Nm/0-2000rpm)/燃費=25.0km/リッター(JC08モード)/価格=436万1040円

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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