ランボルギーニ・ウラカンEVO(4WD/7AT)
模範的で革新的 2019.02.12 試乗記 5.2リッターV10エンジンを搭載した「ランボルギーニ・ウラカン」が、より走りを高めた「ウラカンEVO」に進化。高性能モデル「ペルフォルマンテ」譲りの心臓を得た“ベビー・ランボ”の走りを、バーレーンのインターナショナル・サーキットからリポートする。いまだに人気が衰えない
台数ベースでは対前年比で51%増と販売絶好調のランボルギーニにあって、最も売れた銘柄はなにか。てっきり「ウルス」効果だろうと思いきや、そのデリバリーは2018年下半期からで、半年分しか数字は乗っていない。
では、2018年に最も売れたランボルギーニは? といえばウラカンだ。2014年のデビューから4年がたってもなお、対前年比5%の販売増となった原動力は、ハイパフォーマンスグレード「ペルフォルマンテ」を追加したことにあるだろう。現在、ウラカンにはこのペルフォルマンテを頂点に、スタンダードの「LP610-4」、あえてMR(2WD)のドライビングを楽しませる「LP580-2」と、3つのラインナップが用意されている。
この中で、原点であり中核でもあるLP610-4が初となるビッグマイナーチェンジを受けた。そのアップデートぶりがいかに大幅なものであるかは、ランボルギーニ自らがウラカン“EVO”と唱える辺りからも察することができるだろう。
ウラカンEVOの機能的進化点は、大きく3つに分けられる。うち、最も直接的なポイントとなるのはエンジンのアップデートだ。平たくいえばチタンインテークバルブやハイマウントのスーパースボーツエキゾーストなど、ペルフォルマンテ用のスペックがそのまま反映された5.2リッターのV10直噴ユニットは、前型比で30ps高い640psを8000rpmで発生。最大トルクも600Nmの大台に乗せている。実はこのパワーが若干ながら前型よりも低回転で得られている辺りも、最新のチューニングの功(こう)といえるだろう。このエンジンに組み合わせられるドライブトレインは多板クラッチ式センターデフを持つ電子制御4WD、トランスミッションは7段DCTと、この辺りの構成は従来と同様だ。
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シャシーやエアロデバイスにみる改良点
ウラカンEVOではシャシーまわりにもペルフォルマンテの知見を生かしつつ、四輪操舵機構(4WS)を加えるなど新たなハンドリングへのアプローチがみてとれる。ただし、リアステア角は最大で同相1度、逆相0.5度と控えめに設定されており、極端な挙動是正を狙ったものではないことは明らかだ。ちなみにサスペンションまわりはコイルとダンパーのレートはペルフォルマンテと異なるものの、スタビライザーとタイヤは同じ。ブレンボ製のカーボンセラミックブレーキは標準装備となる。
ウラカンEVOとペルフォルマンテとの最大の違いは「エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ」=「ALA」、平たくいえばアクティブエアロダイナミクスシステムの有無にあるといえるだろう。ウラカンEVOではそれが省略されるものの、空気の流れを存分に生かした設計となっていることに変わりはない。フロントバンパー形状はフロア下への効率的な通風や両端のカナード効果、ホイールハウス内の空気排出効果などを考慮した形状に変更。リア側にもハイマウントエキゾーストパイプ下の大型ディフューザーや、走行風を上下に分けることで生まれる流速差で排熱効率を高めるポップアップ型のリアスポイラーなどを備えている。ちなみに、ウラカンEVOのエンジンクーリング性能は、前型比で16%向上。そしてダウンフォース量は実に7倍に向上しているという。
ドライバーの意思を“先読み”する電子制御
ALAに代わって……というわけではないだろうが、ウラカンEVOならではの装備として用意されるのが、「ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ」=「LDVI」だ。これは、ウラカンの標準車でも4WDの駆動配分などでトライされていたフィードフォワードの概念を拡張したもので、最新のセンサーテクノロジーで得られる各種車両状態情報をもとに、ドライバーの運転意思を20ミリ秒単位で先読みし、ボディーコントロールを予測制御する。例えばドライブモードセレクターの「ANIMA」が最もエンターテインメント性に富んだ「スポーツ」モードの際、ヨーの推移や舵角、操舵速度、スロットル開度や速度などからドライバーが急速なオーバーステア状態を望んでいると判断すれば、ESCの介入をギリギリまで遅らせるとともにブレーキベクタリングを軸足側に配して旋回姿勢を作りやすくするなど、間髪入れずに期待される車体挙動へと導くという。
インテリアでは、メーターやダッシュボードまわりの意匠、スタート&ストップやパワーウィンドウなどを操作するメカニカルスイッチ類には変更はないものの、センターコンソールに縦型に配される8.4インチのマルチタッチスクリーンシステムを採用。各種設定項目やインフォテインメントの多様化に直感的な操作ロジックで応えるほか、トリムラインにはカーボンテクノロジーで他社をリードするランボルギーニが独自に開発した、カーボンファイバーの風合いを生かしつつレザーよりも65%の軽量化を果たしたという「カーボンスキン」も加わっている。
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スポーツカーとして模範的な挙動
LDVIの効能を徹底的に味わってもらいたいという計らいもあってか、ウラカンEVOの試乗はクローズドコースに限られた。ゆえに、乗り心地や低回転域のマナーなどはあくまで取り付け路の移動などを使って確認するに限られたが、足まわりの動きは低負荷の状態でもスムーズで、路面の凹凸や段差などに強いショックを伴うことはなかった。コース内では路肩にたまった小石やゴムカスなどを巻き上げるも侵入音は少なく、風切音もよく整理されているなど、総合的な快適性は前型比であれ対ペルフォルマンテであれ、確実に向上しているようだ。心なしかエンジン&トランスミッションのメカノイズ、リンケージショックなども減少しているように思えたが、この点はペルフォルマンテも相当洗練されている。
ドライブモードを最も穏やかな「ストラーダ」として乗る限り、ウラカンEVOは極めて模範的な4WDの挙動を示す。車格や寸法を鑑みれば直進時のスタビリティーは極めて高く、コーナーでクルマを追い込んでいくと奇麗にアンダーステア傾向が強まり、最後の最後までMR的にトリッキーな挙動はうかがわせない。その動的資質はランボルギーニにして模範的なスポーツカーのそれといっても過言ではないだろう。
LDVIがかなえる革新的な走り
逆にドライブモードを最も攻撃的なコルサに設定しても、実はこの資質に大きな変化はない。限界域ではESCの介入が徹底的に遅くなるため、旋回性能や旋回速度を引き出すにはがぜんテクニックを要することになるが、スピンに至るまでのマージンをギリギリまで使い尽くすことで超絶なサーキットラップを重ねることができる……という。ニュルブルクリンク北コースのタイムは未計測というが、ペルフォルマンテの6分52秒という激烈ぶりから推するに、7分10秒くらいのところにウラカンEVOがいても何らおかしくはない。
そして最もLDVIの効果が発揮されるのが、リアスライドを積極的に許容するスポーツモードだ。思い切ったパワーオンを試しても、前輪側の駆動配分やブレーキベクタリングを巧みに制御しつつ、カウンター姿勢のまま前へ前へとクルマを引っ張っていく。破綻の恐怖が軽減され、身をほぐされたドライバーは、切ればグリグリ曲がるステアリングと踏めばパワーがあふれるアクセルとをコントロールする楽しみに集中できるという算段だ。もちろん過信禁物の自己責任という前提においてだが、「とても640psのミドシップとは思えない」という安直な物言いをついしてしまうほど、スポーツモードにおけるウラカンEVOのダイナミクスは革新的なものである。そして、この新しさを絶滅危惧種の内燃機関で走らせるという情緒も、クルマ好きにとっては得難い経験だと思う。
(文=渡辺敏史/写真=ランボルギーニ/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンEVO
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1933×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1422kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:640ps(470kW)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6750rpm
タイヤ:(前)245/30R20/(後)305/30R20(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター
価格:2984万3274円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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