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第25回:トヨタ・スープラ

2019.02.27 カーデザイナー明照寺彰の直言
トヨタ・スープラ
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いよいよ実車がお披露目された新型「トヨタ・スープラ」。ショートホイールベース×もりもりマッチョなデザインは、現役の自動車デザイナー明照寺彰の目にどう映ったのか? 発売&公道デビュー前に、そのファーストインプレッションを聞いた。

2019年の東京オートサロンに出展された新型「トヨタ・スープラ」。カムフラージュのない姿がお披露目されたのは、この直後の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)でのことだった。
2019年の東京オートサロンに出展された新型「トヨタ・スープラ」。カムフラージュのない姿がお披露目されたのは、この直後の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)でのことだった。拡大
トヨタが2014年の北米国際自動車ショーで発表したコンセプトカー「FT-1」。直6エンジンを搭載したFRスポーツカーのデザインスタディーだった。
トヨタが2014年の北米国際自動車ショーで発表したコンセプトカー「FT-1」。直6エンジンを搭載したFRスポーツカーのデザインスタディーだった。拡大
コンセプトカー「トヨタFT-1」のサイドビュー。低いフロントノーズと、フロントフェンダーの上の“厚み”に注目。
コンセプトカー「トヨタFT-1」のサイドビュー。低いフロントノーズと、フロントフェンダーの上の“厚み”に注目。拡大
新型「スープラ」のサイドビュー。ボディーサイズの都合もあってか、全体的に凝縮感が増している点と、ボテッと厚みのあるフロントまわりが「FT-1」とは大きく異なる。
新型「スープラ」のサイドビュー。ボディーサイズの都合もあってか、全体的に凝縮感が増している点と、ボテッと厚みのあるフロントまわりが「FT-1」とは大きく異なる。拡大

コンセプトカーのイメージそのままに

ほった:えー。今回と次回は、ステージ上ではお披露目されたけどまだ発売はされてないクルマ、トヨタ・スープラと「マツダ3」について、今言える範囲で印象をうかがいたいと思います。まずは新型スープラですね。

永福ランプ(以下、永福):明照寺さん、スープラの実物、見られました?

明照寺彰(以下、明照寺):ええ、見ました。と言っても、オートサロンでカムフラージュのついたものを見ただけなので、細かいところは判断が付きづらいんですが、その現物と写真を見た限りでは、2014年のコンセプトカーを、ディテールまで含めて忠実に再現してるのかなあと。

ほった:確かに、そのままという感じですね。

明照寺:「コンセプトカーの評価が高かったので、量産もこのままで」というケースはありますが、やっぱり量産のパッケージに入れるというのは、すごく大変な作業なんですよ。

永福:ほぼそのままの形で量産に持ち込んだのはエライ! ということですね。

明照寺:あえてコンセプトカーと量産型との違いを探すと、写真でみる限り、フロントタイヤ上のこのボリューム感です。コンセプトカーはスッと、タイヤに対して上が軽いんですけど、量産型はそこが鈍重に見えます。

永福:量産型のほうがボテッと厚い。

明照寺:このあたりはメカ的な都合とか、衝突安全とか歩行者保護関係の兼ね合いが難しいところではあります。ただ、デザイナーとしてはここをできるだけ薄く見せたいんです。スープラはスポーツカーですから、なおさら薄く軽く見せたいはずなんですけど……。

永福:重く見えますねぇ。

ナンバープレートはどこに付けるの?

明照寺:普通は、デザインの工夫でなんとか薄く見える策を考えるんですが、このクルマの使命は「とにかくコンセプトカーそのままにつくれ!」ということで、手が打てなかったのかもしれません。でも全体的には、マッチョな感じもありつつ、それだけじゃない先進感もある。特にこのクルマは北米向けが主なので、その点ではいいデザインじゃないかなと思います。

ほった:確かに、あっちウケするデザインかもしれませんね。

明照寺:前型のスープラの面影も、リアまわりに残ってるかな、という感じがします。ただ、F1的なノーズのデザインは“いまさら感”がありますね。

ほった:トヨタがF1やめてからずいぶんたちますしねえ。

明照寺:2000年代初頭から、メルセデスの「SLRマクラーレン」やフェラーリの「エンツォ・フェラーリ」がF1的なノーズを取り入れてましたよね。一時期はやったモチーフではありますけど、このクルマ(スープラ)はなかなか市販化にこぎつけられなかったので、このあたりのデザインにタイムラグを感じます。

永福:これだと、長方形のナンバープレートを付けるのがキツイでしょう。

ほった:アメリカって、フロントのナンバープレートは必須でしたっけ?

明照寺:地域によって違うんですけど、昔に比べると付いてる率が高い気がします。

ほった:ウチの子(ダッジ・バイパー)も、もともとは前のナンバープレートはなかったらしいんですよ。北米だと、当時は付ける義務がなかったとかで。

永福:今は、えーと、全米50州のうち、31州は前後に付けないとダメらしい。

ほった:じゃあスープラも、「北米向けだからこの顔にした」というわけではないですね。

明照寺:そうでしょう。

ほった:じゃ、Calty(キャルティ、米カリフォルニアにあるトヨタのデザインスタジオ)のデザイナーさんがうっかりしたということですかね(笑)?

新型「スープラ」を斜め後ろから見たところ。この角度からも、フロントフェンダーの上の厚みがよくわかる。
新型「スープラ」を斜め後ろから見たところ。この角度からも、フロントフェンダーの上の厚みがよくわかる。拡大
一昔前のF1に見られた、ハイマウントノーズをほうふつとさせる新型「スープラ」のフロントまわり。(写真=荒川正幸)
一昔前のF1に見られた、ハイマウントノーズをほうふつとさせる新型「スープラ」のフロントまわり。(写真=荒川正幸)拡大
F1マシンのフロントノーズをモチーフにしたデザインは、2000年代のメルセデス・ベンツやフェラーリのスーパーカーなどに見られた。
F1マシンのフロントノーズをモチーフにしたデザインは、2000年代のメルセデス・ベンツやフェラーリのスーパーカーなどに見られた。拡大
新型「スープラ」が主戦場ととらえているアメリカでも、過半数の州がフロントへのナンバープレートの装着を義務付けている。
新型「スープラ」が主戦場ととらえているアメリカでも、過半数の州がフロントへのナンバープレートの装着を義務付けている。拡大
明照寺:「これ、どこにナンバー付けるつもりだったんでしょう?
ほった:「Caltyのデザイナーが忘れてたのかもしれませんね」
(写真=荒川正幸)
明照寺:「これ、どこにナンバー付けるつもりだったんでしょう?
	ほった:「Caltyのデザイナーが忘れてたのかもしれませんね」
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小さなボディーで存在感を示すことの弊害

永福:私は実物を袖ヶ浦(千葉の袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で見まして、第一印象はとにかく「カッコ悪いなぁ」でした。全体がおまんじゅうみたいにポッコリしてる。ホイールベースも短いじゃないですか。なんかバランスが取れてないなぁと思ったんですが。

明照寺:前のスープラも、どっちかっていうとこういうタイプじゃないですか。だから、それをより強調させようということなんでしょうね。ただカッコ悪く見えたとしたら、その大きな要因は、前輪の上の部分の“ぽっこり感”にあると思います。

永福:だから車高が高く見えてしまうのかな。なんというか、ダブルチーズバーガーみたいな(一同笑)。

ほった:ビッグマックじゃないですか。

永福:どっちでもいいけど、とにかく大味な感じだよね。ケチャップたっぷりな。

ほった:自分には、フロントとリアのオーバーハングがやたらと長く見えましたね。ホイールベースは「86」より短いわけですから。

永福:どんだけ短いの?

ほった:86が2570mmで、スープラは2470mmです。ちょうど10cm短いんです。で、全長は86が4240mm、スープラは4380mm。86よりも14cmも長い。

永福:完全に前後オーバーハングで盛ってるわけだね。

明照寺:そうですね。基本的にはコンパクトなクルマなので、それでアメリカ市場で存在感を出したいというところがあるので。

ほった:このパッケージで、アメリカのマッチョなクルマに負けない存在感を出すために、盛って盛ってこのデザインにしたという感じですかね?

明照寺:そうだろうと思います。

袖ヶ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗会にて、ピットに展示されていた新型「スープラ」。(写真=荒川正幸)
袖ヶ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗会にて、ピットに展示されていた新型「スープラ」。(写真=荒川正幸)拡大
1993年から2002年まで販売されていた、A80こと先代「スープラ」(左)と、世界初公開されたばかりの新型「スープラ」(右)。(写真=荒川正幸)
1993年から2002年まで販売されていた、A80こと先代「スープラ」(左)と、世界初公開されたばかりの新型「スープラ」(右)。(写真=荒川正幸)拡大
同じFRの駆動レイアウトを持つ「トヨタ86」。新型「スープラ」はこのクルマより10cmホイールベースが短く、14cm全長が長い。つまり、スープラの方が24cmも前後のオーバーハングが長い計算になる。
同じFRの駆動レイアウトを持つ「トヨタ86」。新型「スープラ」はこのクルマより10cmホイールベースが短く、14cm全長が長い。つまり、スープラの方が24cmも前後のオーバーハングが長い計算になる。拡大
ライバルの一台となるだろう「フォード・マスタング」。
明照寺:アメリカじゃ、小さなボディーでこういうクルマと張り合わなきゃいけないわけですから。
永福:そりゃステロイドの1本も打ちたくなりますわ。
 
ライバルの一台となるだろう「フォード・マスタング」。
	明照寺:アメリカじゃ、小さなボディーでこういうクルマと張り合わなきゃいけないわけですから。
	永福:そりゃステロイドの1本も打ちたくなりますわ。
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スポーツカーをつくるってだけでエライ!

永福:兄弟車の「BMW Z4」はどうなんでしょう。

明照寺:写真で見る限り、Z4のほうがむしろガッカリしました。旧型に比べて全長は長くなっているのに、ホイールベースが短くて、前後オーバーハングが長いじゃないですか。そこはスープラと同じですけど、それで顔のデカさとか寸詰まり感が出てしまっている。

永福:俊敏でゼイタクな2シータースポーツカーという狙いが、どっちもうまくかみ合ってないんですかね。

明照寺:ホイールベースを短くして運動性を向上させるパッケージは、BMWとトヨタとの協議で決めたんでしょうけど、どちらもデザイン的にオーバーハングを軽く見せようという意思があまり感じられません。Z4に比べると、スープラはまだいいんじゃないでしょうか。

ほった:アメリカンなのが好きな人には、スープラ、悪くないと思いますよ。

永福:ほった君の愛車に比べたら薄味だしね(笑)。

明照寺:もう一点挙げると、全体のボリューム感に対してタイヤが小さく感じます。もうちょっと大径のタイヤを履くことが前提だったのかな。

永福:なにせ体がモリモリなので。

明照寺:とまあ、今回もいろいろ言ってしまいましたが、このご時勢にスポーツカーを出してくれるっていうのは評価したいですよね。なかなか商売にならないんですから。

永福:そこはトヨタの社会貢献精神でしょう!

ほった:ホンダの「NSX」と同じオチですね。

(文=永福ランプ<清水草一>)

「スープラ」と主要コンポーネンツを共有するBMWの「Z4」。2470mmというホイールベースはスープラと全く一緒だ。
「スープラ」と主要コンポーネンツを共有するBMWの「Z4」。2470mmというホイールベースはスープラと全く一緒だ。拡大
明照寺:「ボディーのボリュームを考えると、もう少し大きなタイヤを履かせるつもりだったのかもしれませんね」
永福:「前も後ろも、フェンダーまわりはモリモリですもんね」
(写真=荒川正幸)
明照寺:「ボディーのボリュームを考えると、もう少し大きなタイヤを履かせるつもりだったのかもしれませんね」
	永福:「前も後ろも、フェンダーまわりはモリモリですもんね」
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新型「スープラ」の抑揚の大きさは尋常(じんじょう)ではなく、ボディー側面ではリアフェンダーのふくらみと形状をつなげるため、ドアの後方にパネルが1枚追加されている。(写真=荒川正幸)
新型「スープラ」の抑揚の大きさは尋常(じんじょう)ではなく、ボディー側面ではリアフェンダーのふくらみと形状をつなげるため、ドアの後方にパネルが1枚追加されている。(写真=荒川正幸)拡大
 
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明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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