第558回:プレミアムSUV市場を開拓せよ
横浜ゴム「GEOLANDAR X-CV」に感じた手応えは?
2019.02.28
エディターから一言
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横浜ゴムが新たに開発した、中・大型サイズSUV用オンロード向けタイヤ「GEOLANDER(ジオランダー) X-CV」。M+S(マッド&スノー)規格に対応しながら、最高速度270km/hとなる速度記号Wを持つこのニューフェイスを、2019年4月1日の発売を前に、箱根のターンパイクで試した。
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ターゲットはプレミアムSUV
とある自動車メーカーの試算によれば、グローバルで見ると10万ドル(1ドル=110円換算で約1100万円)以上の高級車マーケットの6割以上をSUVが占めているという。つまり、いまやセダンに代わってSUVが高級車の主流であり、ドル箱である。だから各社は趣向を凝らし、スポーティー派、ラグジュアリー派、オフロード派、グランドツーリング派などなど、さまざまなタイプのSUVを開発している。
セダンと比べると、SUVのほうが燃費にしろ操縦安定性にしろ、タイヤに求められる性能は厳しくなるのは当然だろう。重量が重くなり、空気抵抗が増え、重心が高くなる一方で、プレミアムセダンと同等の動力性能が与えられるからだ。しかも技術の進化とともにSUVのパワーもコーナリングスピードも年々上がっているから、タイヤも高性能化を果たさなければ置いていかれる。
というわけで、自動車メーカーに負けじと、タイヤメーカーもさまざまなSUV用タイヤを開発している。横浜ゴムは、ジオランダーX-CVという新しい製品を投入した。ジオランダーはもともと横浜ゴムがグローバルに展開するSUVやピックアップトラック用のブランドである。そのなかでジオランダーX-CVは、モノコック構造でオンロード重視のSUVのために開発されたシリーズだ。
具体的には、同社の同じような位置付けの従来品に比べて、ウエット制動性能を8%、ウエット操縦安定性能を3%向上させたほか、ロードノイズを23%(!)、パターンノイズを2%、転がり抵抗を3%、それぞれ低減したという。ちなみに全サイズが最高速度270km/hに対応するスピードレンジ「W」で、突然の雪にも対応できる「M+S(マッド&スノー)」規格を獲得している。
箱根のターンパイクで開かれた試乗会では、このタイヤが狙うさまざまなタイプのプレミアムSUVが用意されていた。われわれ取材班は、そのうちの「ジャガーFペース」「ボルボXC60」「ジープ・グランドチェロキー」の3台でこのタイヤを試すことができた。
特筆すべき乗り心地のよさ
ジオランダーX-CVを装着したジャガーFペースは、中高速コーナーの連続をフットワークも軽く駆け抜ける。印象的なのはしっかりとした接地感で、タイヤがしっかりと路面をとらえ、コーナリングパワーを生み、車体を前方に押し出していることがステアリングホイールを通じて伝わってくる。まずはジャガーFペースの2リッターガソリンターボエンジン搭載モデルから。Fペースの持ち味は、同社のFRのスポーツカー、「ジャガーFタイプ」と比べても遜色のない、というのは言いすぎであるけれど、ついそう言いたくなるくらい曲がるのが得意なことだ。
このタイヤを開発するにあたっては、しっかり感と耐久性を高めた専用の構造を採用したとのことで、それが奏功しているようだ。ジャガーFペースのSUVらしからぬコーナリング能力をさらに引き立てるジオランダーX-CVは、長所を伸ばすタイプのタイヤだとお見受けした。
続いてボルボXC60の2リッターガソリンターボエンジン搭載モデル。このクルマの特徴は、動力性能、ハンドリング性能、乗り心地、静粛性などが高次元でバランスしていることだ。洗練されている。
もともと出来のよいボルボXC60にジオランダーX-CVを装着すると、やはり高度に洗練されたプレミアムSUVのフィーリングだった。穏やかな乗り心地と、きれいなコーナリングフォームで曲がるハンドリングが両立し、しかも室内は静かだから、ドライバーは「カネ持ちケンカせず」の気持ちでゆったりと運転できる。
この心地よさのうち、どこまでがジオランダーX-CVの手柄になるのかは正直、はっきりしない。ただし、「複数の能力を高度にバランスした洗練された乗り味」という特徴は共通なので、マッチングがいいとは言えるだろう。
自信を持って運転できる
最後にジープ・グランドチェロキー。このクルマの良さは鷹揚(おうよう)さ。ビュンビュン走ってもそこそこついてくるけれど、懐の深い乗り心地と、豊かなトルクに身を委ねて、ゆったりとクルージングするのが似合う。
ジオランダーX-CVを装着したグラチェロの乗り心地は、適温の温泉につかっているように快適だ。快適性を向上させるためにこだわったという非対称トレッドパターンが効果を発揮している。しかもただフワンフワンとしているだけでなく、ジャガーFペースに感じたのと同種の、タイヤのしっかり感も伝わってくる。だから自信を持ってステアリングホイールを握ることができる。
さらに、室内が静かなことにも感心した。グラチェロの美点は鷹揚なところだと書いたけれど、その反面、遮音に関しては詰めが甘いところがあると感じていた。けれどもそれが払拭(ふっしょく)され、この日に先に乗った2台の欧州勢と同じように、きっちりノイズがシャットアウトされている。長所を伸ばしつつ、弱点も補強してくれるタイヤである。
というわけで、ジャガーFペースとジープ・グランドチェロキーに関してはなるほどと納得、ボルボXC60については判断保留。2勝1分けという結果だったけれど、短時間の試乗でこれだけの手応えを伝えてくれる完成度の高さは、大したものだと評価できる。
(文=サトータケシ/写真=花村英典、横浜ゴム/編集=櫻井健一)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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