第5回:不動の人気には理由がある
輸入車チョイ乗りリポート~ドイツ編~(その1)
2019.03.07
JAIA輸入車試乗会2019
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輸入車の祭典「JAIA合同試乗会」の会場から、webCGメンバーが注目のモデルをご紹介! 第5回は、メジャープレミアムブランドがそろうドイツ編(その1)。「アウディA8 55 TFSIクワトロ」「アウディRS 4アバント」そして「ポルシェ718ケイマンGTS」の走りをリポートする。
クルマの理想形
アウディA8 55 TFSIクワトロ……1140万円
A8には普遍的な魅力がある。直線を基調とした無駄のないデザインは、長く乗っても飽きがこない。シャープなプレスラインからも、“イイもの感”が伝わってくる。スポーティーなハンドリングは、ワクワクする運転が楽しめる。
とはいえ、A8はれっきとしたショーファードリブンである。試乗車にはコンフォートパッケージが付き、電動でリクライニングするシートには、枕のように柔らかいヘッドレストまで備わっている。Bang & Olufsenのスピーカーから流れる音楽に耳を傾けていると、自宅のリビングに居るようだ。
ショーファー気分でスタッフを後部座席に乗せ、走りだす。ISGと48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載するので、出だしがとにかくスムーズ。ルームミラーに映るスタッフの顔色をうかがいつつ、アクセルを少々荒く踏み込んでも、何事もなかったかのようにスーっと滑らかに加速する。旧型のV6モデルでは感じた荒々しさもなく、V8の「60 TFSI」では? とスペック表を再度確認したほどだ。
速度が上がっても車内は常に静寂に包まれている。驚くほどガッチリとしたシャシーと、常にフラットな乗り心地をもたらすエアサス。まるでエンジンの無いヨットで、静かな海面を進んでいるかのようだ。このクラスのクルマでよくある、重厚でねっとりとした走り味とは違って、軽快でありながらもフラットな乗り味である。
最近では、メルセデスやBMWのフラッグシップモデルの下位グレードでも4WDが選べる。“四駆の高級セダン”の代名詞でもあったA8の魅力が薄れてしまうのでは、と心配していたが、どうやら取り越し苦労だったようだ。
アウディはモデルチェンジのたびに、てんこ盛りの最新技術をA8に投入する。そして最新のA8は、そのことを乗り手にまったく意識させない、懐の深いクルマに仕上がっていた。誰もがおいしいと思う日本酒の理想形を最新技術でつくり上げる「獺祭」が、いつのんでもうまいように。
(文=webCG 神戸/写真=峰 昌宏)
めちゃくちゃ速い実用車
アウディRS 4アバント……1196万円
運動が得意なやつはちょっと荒っぽくて、勉強ができるやつは上品――。アウディ スポーツの最新モデルは、そうした『ドラえもん』の登場人物的な価値観がもはや時代遅れであるということを、あらためて認識させてくれた。
最高出力450ps、最大トルク600Nmの2.9リッターV6ツインターボエンジンは、スペックどおりの力強さで、吹け上がりに一切の引っ掛かりがない。アクセルペダルを通じて電気モーターを回しているみたいな感覚を覚える。そして普通に走っている限りは、音による主張がまったくないことに驚く。やっぱりモーターみたいだ。ダイナミックモードで回転数を高めにキープしても、「クォォーン」といういい音しか聞こえてこない。
さらに驚くのは、乗り心地がとてもすばらしいということだ。どこまでいっても徹底的にフラット。路面からの入力はすべてフロアの下だけの出来事として処理されており、ドライバーに届くことはない。サスペンションは前後とも新開発の5リンク式とされているが、オイルダンパーでこうしたフィーリングを実現できるものなのだろうか。ダンパーの中には低反発マット、もしくはコンニャクが入っていると考えるのが自然だ。
それでいながら、ステアリングを切れば切った分だけ最小限の姿勢変化とともにきっちりと曲がる。「よーし!」と腕まくりをして乗り込んだドライバーなどは、ややもすれば“つまらない”と感じるかもしれない。実は筆者は、過去に取材した現行型「RS 3セダン」でこれと同じ体験をしたことがある。最新のRSシリーズは冷徹に速い。
この新型RS 4アバントの速さは、楽しむためのものではないだろう。最高速は280km/h(リミッター作動)と発表されているが、280km離れた地点間を“本当に”1時間で移動する必要がある人に向けられたものだ。音と振動を徹底的に排除しているのは移動してすぐに大事な商談に臨むためで、ワゴンボディーは商品見本をたくさん運ぶため。すべて実用性能と考えると、納得のRS 4アバントである。制限速度は守りましょう。
(文=webCG 藤沢/写真=峰 昌宏)
記憶から消せない
ポルシェ718ケイマンGTS……999万円
2018年の夏、「718ボクスターGTS」に試乗し大いに感銘を受けた。「意のままに操る」とは、きっとこれをいうに違いないと思わせてくれたシャシー方面はもちろんのこと、最高出力365psの2.5リッター水平対向ターボエンジンも、その数値以上にパワフル。4.4mを切る4385mmの全長と1800mmの全幅を持つ適度なボディーサイズに加え、アシとパワーの良好なバランスはまったくもって申し分ない。
半年ぶりに718系のステアリングを握り、唐突に夏の暑い日に乗ったボクスターの感覚がよみがえってきた。仕事柄、毎月多くのモデルに触れ、その都度濃いめのクルマの印象で記憶が上書きされるので、実はこうして半年前の思い出がすんなり出てくることはさほど多くない。つまりそれだけ印象深い試乗だったということである。
今回718ケイマンGTSの試乗では、そこで味わった魅力を再確認した。エンジンのパワーが1馬力たりともロスすることなく路面に伝わるかのような加速感。路面に吸い付くと表現したいタイヤの感覚。どんなスピードでコーナーに入っても曲がっていけそうな万能感あふれるスタビリティー。同時に、このクルマを「自分でコントロールできる」と思わせてくれる、ドライバーとのフィット感が実に心地よい。
ちょっとベタ褒めのような気もするが、そう思って「他の人はどんな評価をしているんだろう?」とwebCG内の記事を検索してみた(正直少し心配になった)。すると、われらがレーシングドライバー谷口信輝さんの試乗記がヒット。なにせ記事では──「欲しい! これ、すごくいいですよね。バツグンにいい!」と畳みかけてきたのは、長年続けてきたこの連載でも異例中の異例というべき出来事だった──とリポートされておりまして、「ですよねっ!」と、思わずニンマリ。
ということで、ぜひ一度、皆さんもそのリポートをご覧いただきたいと思います。あ、でも谷口さんの記事はwebCGの有料コンテンツになっていますので、せっかくなのでこの機会に会員登録を……って、なんか宣伝みたいになってすみません。
(文=webCG 櫻井/写真=田村 弥)

神戸 良行
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