第6回:先進性に加え幅広い選択肢も魅力
輸入車チョイ乗りリポート~ドイツ編~(その2)
2019.03.09
JAIA輸入車試乗会2019
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輸入車の祭典「JAIA合同試乗会」の会場から、webCGメンバーが注目のモデルをご紹介! 最終回となる第6回は、メジャー系がまだまだ続くドイツ編(その2)。「BMW X2 sDrive18i MスポーツX」「メルセデス・ベンツA180スタイル」「フォルクスワーゲンe-ゴルフ プレミアム」そして「ザ・ビートル デザインマイスター」の走りをリポートする。
カッコいいほうが偉いんだ!
BMW X2 sDrive18i MスポーツX……484万円
2018年の夏に日本上陸直後のBMW X2を取材したところ、その出来栄えがとてもよく感じられた。ただし、テストしたのはトップグレードの「xDrive20i MスポーツX」(当時。その後にディーゼルの「xDrive18d MスポーツX」とMパフォーマンスモデルの「M35i」が追加された)。販売面での主力となる、よりベーシックなモデルに乗ってみたいと考えていたのだった。
詳しい方には無用の説明かもしれないが、sDrive18i MスポーツXは最高出力140ps/最大トルク220Nmの1.5リッター直3ターボエンジンを搭載したFF車である。ちなみに以前に取材したxDrive20i MスポーツXは同192ps/同280Nmの2リッター直4ターボエンジンを搭載した4WD車であり、MスポーツXというのはバンパーやホイールまわりなどの樹脂パーツがフローズングレーのコントラストカラーに変更されるだけでなく、よりハードなスポーツサスペンションも備わる豪華仕様で、標準仕様の「sDrive18i」も用意されている。
BMWグループ内で広く用いられている1.5リッター3気筒ユニットは「ボボボ」という実用車然としたサウンドにちょっと拍子抜けするものの、車重1500kgのボディーを動かすには十分以上だ。スポーツサスペンションによるキビキビとした動きが、エンジンスペック以上にスポーティーに感じられる要因かもしれない。ステアリングを切れば、ほとんどロールを伴わずにクイッと曲がる。ちなみにハードといっても、ドシンバタンといった類いの乗り心地ではなく、入力があるとコツンコツンと感じる程度のもので、理解したうえで乗れば実に楽しい。
X2は価格設定が面白い。一番ベーシックなsDrive18i(439万円)からsDrive18i MスポーツX(484万円)へのステップアップを試みた場合の差額は45万円となる。しかし、さらに1.5リッターターボから2リッターターボに、すなわちxDrive20i MスポーツX(518万円)にステップアップするためのお代は34万円となっている。ちなみに日本上陸当初は「xDrive20i」という、2リッターターボ搭載車ながらMスポーツX非装着グレードもラインナップされていて(現在はカタログ落ち)、こちらは473万円だった。長々と書き連ねて何が言いたいのかというと、X2ではよりパワフルになることよりも、よりカッコよくなるためにお金がかかるのである。ブランドの既存の価値観にとらわれないということを声高にうたいながらデビューしたX2の性格が、このあたりにも表れているように思う。
(文=webCG 藤沢/写真=田村 弥)
期待値が高すぎて
メルセデス・ベンツA180スタイル……369万円
今回の試乗会で一番楽しみにしていたのがAクラス。スポーティーかつ強靱(きょうじん)さを強調した先代に比べ、新型のエクステリアは、いい意味で脱力系。こなれ感もあって、エレガントさも増している。一方インテリアは、横長のディスプレイが未来的で、ワクワクが止まらない。
走りはというと、発進時からデキスギ感たっぷりで、即ノックアウトされてしまった。ステアリングはキレッキレなのに、せかすような動きはまったくない。足まわりはとてもしなやかで軽快さも増している。可憐(かれん)に自在に滑るような身のこなしに、気分はすっかり氷上のプリンセス・浅田真央だ。
では、メルセデス車で初めて搭載されたという対話型インフォテインメントシステム「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー エクスペリエンス)」の実力は?
「ハイ! メルセデス」と問うと、即座に「何を行いますか?」と女性の音声で返ってきた。「近くのレストランを探して」と指示すると、近隣のファミレスなど3件がヒット、音声案内とともに、ディスプレイにも表示された。スゴイ。
ところが、ラジオの選局やJR主要駅への目的地設定を行ったところ、ラジオでは4回も指示を繰り返したし、駅にいたっては何度お願いしても設定してもらえなかった。残念!
メルセデスによれば、「人口知能による学習機能で、特定のユーザーに適応する個別対応能力を備える」とのこと。オーナーになれば、ディープラーニングにより、使いやすく進化するということかもしれない。が、ドライバー交代が頻繁に行われる30分足らずのチョイ乗りでは、その高い能力を確かめることはできなかった、ということか。
今回の試乗では、期待値まで到達していたとはいえないが、クルマと人間との対話を実現したという進化には目を見張るものがある。しかも、その最新技術がエントリーモデルのAクラスに搭載されているというのも画期的だ。“最善か無か”というスローガンは今でも生きているのだ。
そうだ、次に試乗する時には、こうたずねてみよう。
「ハイ! メルセデス、私をオーナーにしてくれる?」
(文=スーザン史子/写真=峰 昌宏)
ゴルフの良さはそのままに
フォルクスワーゲンe-ゴルフ プレミアム……534万9000円
どうにもシックリこない「プジョー308SW」のi-Cockpit(iコックピット)も、30分ぐらいで慣れるし、これはこれでアリ? と思い込もうとしたというのが、前回までのおハナシ(第2回:輸入車チョイ乗りリポート~フランス編~の続きです)。ところが、次の試乗車であるe-ゴルフに乗ったとたん、「やっぱりiコックピットはナシ。絶対無理」と振り出しに戻る。
シートに座ったとたんピタリとくるポジションに感心し、好ましいメーターのデザインと視認性に納得。走り出せば視界の良さと四隅のつかみやすさに舌を巻く。やはりクルマはこうでないと。少なくとも自分自身の体を使って動かすものは、機械のほうが人に合わせてくれなければコントロール性が低下する。「人間がクルマに合わせればいいんだよ」と笑えたのはUIの概念などなかった1980年代のフェラーリまで。よくもまあ、あんなドラポジでサーキットを走っていたものだと、それはまた別の意味で感心するが。
ともかくクルマはドラポジが適正でないと、運転の面白みが半減するどころか、運転自体がストレスになる。手前勝手な持論だが大きくは間違っていないだろう。翻って、パワートレインが電動化されたe-ゴルフであっても、ゴルフの良いところはそのままだったのだ(当たり前だが)。
最高出力136ps、最大トルク290Nmを発生するパワートレインは、何度乗ってもインパクト大だ。モーター駆動によるゼロ発進から味わえる最大トルクは、800psのスーパーカーでもかなわない。重心が低くゴーカート感覚のハンドリングも独特で、しかし乗り心地をスポイルしないのはこのクルマの美点だ。
けれど、スマホの電池残量が減るだけで、不安というかなんだか嫌な気持ちになってしまう狭量な自分にとって、電気100%で動くクルマは、いかに「航続距離が40%アップしました!」と宣伝されても(それは別のクルマか)、なかなか選べるものではない。
ただ、「ウチのブースは全車電動化モデルです」という“2019ジュネーブ春の電化祭り状態”を見るにつけ(今年のジュネーブモーターショーです)、いちいち毛嫌いしている場合ではないかも、と別の意味で不安に。EV専用モデルは、専用だけに洗練されているのだろうが、独創的すぎても困る。ガラケーからスマホにステップアップしてきたように、電化初心者にはガソリン車ベースのEVから始めて体を慣れさせるほうが……と新型登場も秒読み段階の今、e-ゴルフのカタログを眺めつつ思ったりするのである。
(文=webCG 櫻井/写真=田村 弥)
カブトムシは永遠に
ザ・ビートル デザインマイスター……303万円
かつての名車を現代流に解釈し直し、新たに登場させたリバイバルモデルの代表選手といえるのが、「MINI」とこのビートルであろう。MINIは全世界に専売ディーラー網を展開し、順調にラインナップ拡大を図っている。
対するビートルはといえば、このモデルが最後に。輸入元のフォルクスワーゲン グループ ジャパンは、2019年での販売終了を明言している。爆発的にヒットしたとはお世辞にも言えないが、ファンのハートをガッチリつかんだからこそ、2代目が誕生したのだろう。残念ではあるが、往年の名車リバイバル企画はどうやら“ワーゲンバス”こと「タイプ2」をモチーフとした電気自動車「I.D.BUZZ」に受け継がれるようだ。
復活したビートルの先代モデル、正しくは「ニュービートル」といい、ベースとなったのは「ゴルフ4」だった。ボディーデザインは「いまビートルをデザインするとこうなる」と思わせる仕上がりだったが、デザイン優先のあまり運転席に座るとフロントウィンドウがはるか前方にあるというとんでも設計で、まったくしっくりこなかった記憶がある。
今回試乗した2代目となるこちらは「ゴルフ6」がベース。その変な居住空間は結構マシになり、走りも含めて「このカタチがお好きならどうぞ」と言えるレベルになっている。ただ、本当はゴルフではなく今どきのMQBベースで作り、「ポロ」サイズにまとめれば「もっとそれっぽくなるんじゃないの?」と思わずにいられない。オリジナルの「ビートル」は、今見るとびっくりするほど小さいのだ。
かつては合理的だったカタチも、21世紀の今ではノスタルジーでしかない。だが、どこか心引かれるデザインであることも事実。編集部随一のフォルクスワーゲンファンに言わせれば「ビートルも電気自動車として復活するかもしれませんよ」とのこと。たしかにその可能性は否定できないが、果たして? 電気でもいいので、デザインはもちろんのことオリジナルのパッケージを思い起こさせるような、思わず“カブトムシ”と呼びたくなる本気のビートルが見てみたい。
(文=webCG 櫻井/写真=峰 昌宏))
