第3回:どいつもこいつも走りが楽しい!!
輸入車チョイ乗りリポート~イタリア編~
2019.02.28
JAIA輸入車試乗会2019

輸入車の祭典「JAIA合同試乗会」の会場から、webCGメンバーが注目のモデルをご紹介! 第3回は、ファッションもグルメも、そしてクルマづくりも文化といえそうなイタリア編。「アバルト695Cリヴァーレ」「フィアット・パンダ4×4フォレスト」そして「ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー」の走りをリポートする。
海と陸のコラボ
アバルト695Cリヴァーレ……422万円
695Cリヴァーレ、なかなか良いあんばいに仕上がっている。今までのコラボレーションの相手はマセラティだったりフェラーリだったりと、誰が聞いても分かりやすいものだったが、今回はひと味違う。相手は「リーヴァ」なのである。
リーヴァとは聞き慣れない名前だが、イタリアでは有名なラグジュアリーボートを製造するメーカー。自動車ブランドではない。そのリーヴァが製造した、最新鋭のフライブリッジボート「56リヴァーレ」からインスピレーションを受けてデザインされたのが今回の限定車だ。
初めて目にする695Cリヴァーレは、リーヴァブルー/グレーのツートンカラーのボディーに、アクアマリンのアクセントラインが印象的。各部にはクロームパーツがあしらわれ、ベースモデルの「アバルト595」とは明らかに違うことが一目で分かる。あからさまではなく、どこか上品で優雅な雰囲気をまとっている。
最高出力180psの1.4リッターターボエンジンは、「595コンペティツィオーネ」に準ずるもので、スポーツモードで走らせると、迫力のあるエキゾーストノートとともに、20Nm増したトルクを生かしてグイグイと加速するが、ノーマルモードで乗っている分には扱いやすくジェントルそのもの。「腰高な見た目の印象とは裏腹に、安定した姿勢でいくらでも曲がっていく感覚」も健在である。
595コンペティツィオーネは、サイドサポートの大きなスポーツシートが付き、“屋根開き”が選べず、どちらかというとかなりスポーツ性能に振った印象が強い。それとは対照的に、この695Cリヴァーレは、キャンバストップを開け太陽に照らされたマホガニーのインパネを眺めながら、ネイビーのレザーシートに身をゆだねていると、まるで優雅にクルージングしている気分に浸れる。中身は高性能だけど、見た目は上品。この絶妙なバランスが、BMWで言うところのMではなくアルピナを選ぶような人にはかなり刺さるのではないだろうか。
(文=webCG 神戸/写真=峰 昌宏)
ちいさな万能車
フィアット・パンダ4×4フォレスト……251万6400円
どこにでも出掛けられる気軽さと、工夫して操る楽しさとを両立させた、類いまれなる傑作。それがパンダ4×4だ。
少し大げさに聞こえるかもしれないが、同モデルを社有車として5年余りを共にした、いまの率直な気持ちである。
0.9リッターの2気筒ターボエンジンに6段MTを組み合わせた、軽プラスαのサイズの4WD車。こんなクルマは、世界中探してもなかなかない。
どこか懐かしい雰囲気も持つ“ツインエア”エンジンは、「ブ~ン」と軽快な音を発しながら、ターボ過給の豊かなトルクで1130kgの軽量ボディーを加速させる。6段MTはシフトフィールも上々で、変速比4.100という超ローギアードの1速から高速巡航もスムーズにこなす6速トップまで、実に考えられたギア比になっている。
そして、日常で遭遇するような悪路などまったく問題にしない、四駆のシステム。雪道や泥道など、特別な低ミュー路ではELD(電子式ディファレンシャルロック)の備えが心強い。
きまぐれで(?)アイドリングストップをサボったり(センサー異常で、交換により完治)、後退時にリアブレーキのあたりから異音がしたり(調整で一時音が消えたが、再発)と、細かな瑕疵(かし)はあるけれど、所有することで得られる喜びはその何倍にもなる。
運転が好きで、ちいさなクルマが好きで、MTが苦にならなくて、クルマに“威張り”を求めないヒトにとってこのパンダ4×4は、「スズキ・ジムニー」と並ぶ、有力な選択肢のひとつだと思う。
(文=webCG こんどー/写真=峰 昌宏)
お祭り野郎と見せかけて……
ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー……3846万2614円
今回のJAIA輸入車試乗会で、一番頭を抱えたのがこのクルマだった。端的に言って、事前に想像していたのと随分違うクルマだった。
戦闘機の操縦かんにあるトリガーを彷彿(ほうふつ)とさせる、赤いセーフティーカバー付きのイグニッションスイッチ。やはり飛行機のスロットルレバーを思わせる「R」レンジのセレクター。借り受け時には、「シフトパドル右引きでDレンジ」というお約束を忘れていて軽くパニックに陥り、西湘バイパスでは一瞬だけドライブモードを「SPORT」に入れ、あまりの爆音にすぐやめた。他のクルマには見られないような独自の作法に、ぶっ飛んだ内外装デザイン、爆音のエキゾーストと、このクルマは基本的にお祭り野郎だ。
ところが実は、それは世を忍ぶ仮の姿。仮面の下は非常に理知的なのである。視界の取り方がいいのか、隅を把握しやすいボディー形状をしているのか、こんなペッタンコのクルマなのに運転していてストレスがない。狭い場所で切り返しを試みてもハンドルに違和感はないし、乗り心地も上々。トランスミッションはデュアルクラッチ式なので、変速マナーはシングルクラッチ式の「アヴェンタドール」系とは雲泥の差だ。最初は戸惑ったステアリング上のウインカースイッチも、慣れればレバー式よりむしろ操作しやすく感じられた。なんというか、総じて非常に洗練されているのだ。もうちょっと臭みがあってもというか、“味濃いめ”でもいいのにとすら思った。
このように、クルマとしての基本部分は非常に考えつくされているのに、その上に乗っかっている部分があざといぐらいぶっ飛んでいるのだ。アストンがハレとケを使い分けるクルマだとしたら、最新のベビーランボは、ハレとケが混在しているクルマという印象だった。
ちなみに、今回試乗したのは高性能版のペルフォルマンテだが、愚昧な記者には素のウラカンとの違いは分からなかった。その場で乗り比べたわけじゃないし、法定速度70km/hの道を小30分はいずり回っただけである。これであれこれ分かる人は、それこそ超能力者だと思う。
(文=webCG ほった/写真=田村 弥)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。